ゴミを出すだけでもお金がかかってしまうのか……。東京23区で家庭ゴミの有料化が検討されていることが話題となり、大きな議論が起きている。
「実質増税」「息吸ってるだけでも……」
家庭ゴミの有料化は、先日一部ニュースサイトで報道されたことでネット上で大きな話題となったが、実は以前から検討は行われてきた。
環境省の公式サイトに掲載されている「一般廃棄物処理有料化の手引き」によると、2020年10月26日、第203回臨時国会の所信表明演説において、菅義偉首相(当時)が、2050年までに脱炭素社会実現を目指すことを宣言。
さらに2021年4月の第45回地球温暖化対策推進本部において、2050年目標と整合的で野心的な目標として、2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指し、さらに、50%の高みに向けて挑戦をする旨を表明した。これらを受けて、23区でも家庭ゴミ有料化が検討され始めたようだ。
もし有料化となれば、廃棄物の排出抑制や再生利用等による資源循環の推進が期待されるという。しかしこの案を受けて、ネット上では〈ただ有料化にするだけならポイ捨てで溢れるやろなあ〉〈有料化って実質増税されてるだけだろ。住民税取ってるのにゴミ有料化でまた税金とるのか?〉〈ゴミ処理費用も含めて住民税も上げてきたのでは?〉〈今度は空気税とか言いだして、息吸ってるだけで税金とるようになってもおかしくない〉といった反対意見が多くあがってしまった。
今までは無料だったものをいきなり有料にするとのことで、なかなか区民からの理解は得られないようだ。
いったい、どのような過程を経て今後、家庭ゴミ有料化の政策を進めていくのか。東京都環境局に問い合わせ、今回の報道に関する真偽を聞いた。
「家庭ゴミの有料化は確かに、都と市町村の共同検討会という場で、 検討のテーマの1つとしてあがっている状況です。ただ、一部ニュースで報じられている東京湾の最終処分場が50年後にいっぱいになるというのは少し違っていまして、正しくは“50年以上”経過すると、いっぱいになる“可能性がある”ということです。
また、ゴミ問題の政策に関しましては、東京都が直接行っていくことではなく、各市町村が主体で行っていくことになっております」(東京都環境局資源循環推進部・一般廃棄物対策課の担当者)
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ゴミ有料化を20年前から行なっている多摩地域
ゴミ処理の責任はそれぞれの市町村にあり、具体的に政策を打ち出すのもそれぞれの自治体。都はあくまで、技術的援助やアドバイス、支援をするという立場であるという。
そのため、もし23区で家庭ゴミ有料化になったとしても、値段を決めるのは各区であり、料金が23区で一律になるのかも現時点では不明。ただ、有料化する際は、23区すべてで同時にスタートするという方針ではあるそうだ。
一方で、ゴミ問題の先進地域と呼ばれる東京の多摩地域では、すでに家庭ゴミ有料化の取り組みを行っている。その中の一つ、八王子市の資源循環部・ごみ減量対策課の担当者に話を聞くと、20年前に家庭ゴミ有料化をして以来、確かな効果が得られていると返答があった。
「有料化をはじめたのは2004年からです。八王子市では有料化と合わせて、ゴミを個別回収する取り組みもスタートしました。きっかけは今回の23区と同じで、最終処分場がひっ迫し、危機感があったからです。政策実施後は、可燃ゴミ・不燃ゴミは有料ですが、資源ゴミは無料なのもあって、市民の方々がしっかりと分別してくれるようになりました。ゴミに対する意識がどんどんあがっていると感じます」(八王子市、資源循環部・ごみ減量対策の担当者、以下同)
政策実施前の2003年と、20年後の2023年を比べると、総ゴミ量は20万7000トンから、14万3000トンにまで削減。また、有料のゴミ袋を使って各家庭が出している可燃ゴミと不燃ゴミに限定すると、12万9000トンから、8万800トンにまで減少。おおむね、37%の削減につながったそうだ。
ただ、ゴミの有料化をめぐっては、23区の住民から反発する声があがっているように、当初は八王子市でも市民から抵抗を示す声が出ていたようだ。
「最初は、ゴミ有料化をすることで不法投棄が増えるのではないか、実質的な税金の二重取りではないのか? といった意見をいただきました。しかし不法投棄に関しましては、最初こそ少しありましたが、監視カメラをつけたりして対策を強化していましたので、その後はすぐに収まり、大きな問題にはなりませんでした。また税金の二重取りとのご指摘に関しましても、ゴミ削減に向けての費用とさせていただき、税収を増やす意図での有料化ではございません」