バックパックの仕組み
バックパックの構造や部位の名称、機能や使い方について知っていれば、バックパックを選ぶ際にいろいろなモデルの比較検討もしやすい。ショップに見に行くときも店員さんの説明がよくわかる。まずはバックパックの仕組みを理解しておこう。サンプルモデルとなるのはOSPREY(オスプレイ)のSolden32(ソールデン32)だ。
先述したようにバックカントリーに特化した機能を十分に備えながら、驚きの軽さ。薄くてフィット感も抜群、高い滑走パフォーマンスを求める滑り手に強く支持されてきた、OSPREYのロングセラーモデルだ。
OSPREY|Solden 32
容量:32ℓ
サイズ(高さ×幅×奥行):54 / 31 / 28cm
重量:1,150g
メインbluesign®認証210D高強度ナイロンシャドーボックス、PFASフリーDWRアクセントbluesign®認証リサイクル210Dナイロンドビー、PFASフリーDWRボトムbluesign®認証リサイクル210Dナイロンドビー、PFASフリーDWR
Color:ブラック・アーティザンイエロー(全2色)
¥26,400
◆OSPREY公式HP/https://www.lostarrow.co.jp/store/e/eLP-2406C/
メインコンパートメント
※ここからはSolden32 の’23ー24季モデルを使っての説明となります
荷物を収めるためのメインとなるスペース。荷室・気室などといわれる。必要な装備がごちゃ混ぜにならずに、使いやすいようにスッキリと収納できるかは重要なポイント。BCユースでは、雪まみれになるシールや濡れたグローブを、本体とは分けて別の場所に収められる2室構造が便利だ。容量サイズの大きなものは内部に仕切りが設けられ、ボトムコンパートメントとの2気室構造にアレンジできる仕様のものが多い。
ちなみに1 DAYツアーに必要な装備を詰めてみるとこんな感じ。32ℓは1 DAYツアーにはピッタリの容量のようだ。
バック(背面)パネル
バックパネルとは背負ったときに背中に接する面。バックパネルは、どのようなものかによって荷重の分散やバランスに影響を与えるため、バックパックにおいて非常に重要な役割を果たす。使用している素材や創りによって、硬さや軽さ、通気性・クッション性などさまざまで、背負った際のフィーリングも異なってくる。このSOLDEN32では体に馴染み、雪や氷がつきにくい素材「EVAフォーム」を採用している。
山での長時間にわたり行動することを考えれば、背負っていても疲れにくく、快適であることが必要。荷重をうまく分散してくれることによる安定感やバランスの良さ、通気性・クッション性を備えた快適にはこだわりたい。
また、BCでは、上の写真のようにバックパネルにジッパーがついていて、メインコンパートメントへのアクセスが背面からできるタイプは、スピーディーに荷物が取り出せる点で圧倒的に使い勝手がよい。
フロントパネル+フロントポケット
フロントパネルはバックパックの正面部分。大きなフロントポケットが付いているものが少なくない。雪山で使うことを想定したバックパックには、フロントにショベルやプローブなどアバランチギアを収納できる専用ポケットがついているものも多い。SOLDEN32は「Jジップフロントパネル」という名称で、J型のジッパーですぐにアバランチポケットにアクセスできる。
雨蓋(トップリッド)
メインコンパートメントの開閉部を雨風から守るためのカバー。収納スペース・ポケットを備えているものが多い。雨蓋についているポケットは行動中すぐに取り出したい小物を入れるのに便利。雪山では、このトップポケットにゴーグルやサングラス、グローブの予備やタオルなどを入れる人が多いだろう。なるべく大きく、入り口のジッパーも広いものが使いやすい。
ウエストベルトポケット
ウエストベルトにポケットを備えているバックパックが多い。この位置にある小さなポケットは、バックパックを下ろしたり、いちいち立ち止まったりすることなく、ジッパーを開ければすぐに出し入れできるのが利点。特にすぐ取り出す可能性が高いアイテムを入れておくのに最適。携帯電話やGPS、カメラ、日焼け止め、リップクリームやちょっとした行動食など入れるのに便利だ。
ウエストベルト+ギアループ
このSOLDEN32には写真のように片側のウエストベルトにはギアループがついている。カラビナやコンパス、時計をつけたりできる。
ショルダーハーネス・チェストストラップ
バックパックを背負うための肩紐がショルダーハーネス。リュック全体を肩から背中に安定させる役割を果たす。左右のショルダーハーネスの幅を調節するためのベルトがチェストストラップ。リュックの荷重でショルダーハーネスが体の外側に開くのを防ぎ、リュックと身体とフィットさせる役割を果たす。滑走時には、このチェストストラップいかんで安定感が変わるため、役割は特に重要だ。
アックスホルダー
アックスを装着するためのホルダーがついている。その上からサイドコンプレッションストラップをかければ、より確かな固定に。
インナーポケット
バックパックの内側にも山での使い勝手を考えたポケットやアタッチメント類が数多く取り付けられている。バックパネルの裏側に備えられたポケットにはキーチェーンなどがつけられるストラップが内蔵されている。
インターナルポケット
メインコンパートメントの横の部分にはトランシーバー用のポケットが備えられている。ジッパーを開ければすぐ取り出せる位置にある。グローブをつけたままでも出し入れが可能で便利だ。
ヘルメットホルダー
BC滑走には必携のヘルメットの収納はフロントの上部(写真左)にメッシュのホルダーが内蔵されていて、それを取り出して(写真右)ヘルメットを入れて、バックパックの上部に乗せる、またはフロントパネルにアタッチするかの2パターンが可能。スキー・スノーボードかに合わせて使い分ける。
スキー&スノーボードキャリーシステム
スキーやスノーボードのバックパックへの装着の仕方もバックパックによって異なる。「ダイアゴナル」か「Aフレーム」の2パターンがあるが、SOLDEN32でのアタッチメントの方法は、コチラの説明動画で見てみよう。
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バックパックの選び方のポイント
バックパックを選ぶ際に重要な視点を考えてみよう。
❶どのようなBCツアーをしたいのか目的に合わせたタイプを選ぶ
自分がどのようなバックカントリーツアーを行いたいのかゲレンデアクセスのハイクがあまりないツアーなのか、何時間くらいの行程で、どれくらい登行があるのか、1 DAYツアーか、宿泊を伴うロングツアーか、クライミングを含めた本格的なアルパインツアーか? それによって必要な装備も異なり、それを収納できる容量が見えてくる
❷自分が重視したい要素は何か
容量の次にバックパックに求める要素はどのようなことか? 滑りを重視したいから、何より体とのフィット感がほしいという人や、登行が長いから少しでも軽いほうがいい、など自分の追求ポイントを明確にするといいだろ
❸どのような機能や性能が必要なのか・また不要なものはないか
バックパックの使い勝手を良くするための機能は様々にあるが、欲しい機能が足りないのも困るが、不要な機能が過分にあるのもかえって煩わしいもの。自分のニーズにマッチした機能や性能を備えているかをチェックしよう。よく挙げられるポイントに、以下のようなものがある。
・メインコンパートメントへのアクセスがしやすく、中のものが取り出しやすいか
・濡れたものが混ざらなくてよいように、メインと別のコンパートメントがある2室構造かどうか
・アバランチギアへのアクセスがしやすいか
・スキーやスノーボードのアタッチメント機能がどのようなものか(ダイアゴナル・Aフレーム)
・フィット感を得るための背面高調節機能が備わっているか
・ショルダーベルト、ウェストベルト、ハーネスのアジャストメント機能は確実か
・ジッパーやバックルがグローブをつけたままでも使いやすいか
・ゴーグルや工具や小物入れなどのポケットが必要十分にあるか
・ヘルメットホルダーが登行時に気にならないか
・頑丈な素材で耐久性は高いか、長持ちするものか
・吹雪や雨に長時間さらされても防水性は信頼できるか
❹ 自分の身体にフィットするサイズを選ぶ
自分に合ったバックパック選ぶ際に絶対に譲れないことは、何よりも自分の身体にフィットしているかどうかだ。背面高調節機能やショルダーハーネスやウエストベルトなどのアジャストメント機能はフル活用した上で、背負ったときに感覚的にしっくりと馴染む、一体感のようなものを感じることができるか。
雪山で数時間、登ったり滑ったりすることは、身体に想像以上の負荷を与える。もしも身体に合っていないバックパックを背負って行動していれば、肩や腰、下半身などに痛みや疲れが出てくるもの。するとせっかくの滑りも十分に楽しめなくなってしまう。
自分の身体に合うかどうかを知るには、ショップで実際に背負ってみるのが一番だ。スキーや登山のプロショップにはBCの知識や経験に長けたスタッフもいる。相談に乗ってもらいながら、いろいろなバックパックを試してみるといい。
STEEPでのこんな記事も参考にしてみてはどうか。
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撮影協力:株式会社ロストアロー