1990年代のタイトー製シューティングゲームは、かなりの高確率で「人類・地球滅亡エンド」を繰り返していました。たとえラスボスを倒しても、その間に地球が壊滅! 滅びに命を燃やしていた数々のゲームを振り返ります。



グッドエンディング=地球滅亡は画期的すぎる。Nintendo Switch『アーケードアーカイブス メタルブラック』(ハムスター)より

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どちらがバッドエンドか分からない! 『メタルブラック』の衝撃

 カッコいいメカに乗った主人公が目の前の敵に勝ったからといって、地球が救われるとは限りません。

 それはたとえばシューティングゲーム、たった1機のスーパー戦闘機やロボットが何百機の敵を蹴散らし、デカいラスボスを倒したとしても、戦争は広い範囲にわたって繰り広げられており、ゲーム内に描かれるのはあくまでも「局地戦」です。とはいえそのようにラスボスを倒せば、ほとんどのゲームはハッピーエンドで終わり、人類や地球を救うなどして物語を締めくくります。

 そうしたふつう一般のゲームがやらない「滅亡エンド」を、かなりの割合でやっていたのが1990年代のタイトー製アーケードゲームです。あの会社では「地球滅亡ボーナスが支払われるのか?」と疑われるほどの率で、地球や人類を滅ぼしてきました。

 文字通り軽いジャブ程度で滅ぼしたのが、パンチングゲームの『ソニックブラストマン』(1990年)です。パンチングパッドを3発殴り、その威力の合計が必要なスコアを上回ればクリアとなるゲームで、難易度別(必要なパンチ力の高さ)に5つのステージがあります。

 もっともイージーなのは「女性を襲う暴漢を3発殴ってKO」で、一番難度の高いのが「地球に迫る隕石を3発殴って砕け」というものです。いきなり隕石が目の前に現れ、失敗すれば人類は滅亡です。史上最速(ゲーム開始から滅ぶまで、という意味で)の地球滅ぼしゲーではないでしょうか。

 タイトーが地球を滅ぼした初期作として名高いのが、横スクロールシューティング(以下、STG)の『メタルブラック』(1991年)でしょう。早くも2面から「月からもうひとつの月」が現れ、その殻を破って中ボスが登場という演出に度肝を抜かれました。主要スタッフである仙波隆綱さんは『逆襲のシャア』のメカ作監を務めたこともあり、さすがの演出ですね。

 さて最終ステージでは、巨大な蛇のようなラスボスにダメージを与えるたび、背景が恐竜の化石や道具を持った原人、工場地帯や猫など人類の歴史をたどるように変化していきます。そしてトドメを刺すと、地球が真っぷたつに割れてしまいました。

 逆にステージ途中でゲームオーバーになったり、ボスを倒しきれず残機を全て失ったりすると、主人公の死により奮起した味方の2万機におよぶ「ブラックフライ(主役メカと同型機)」が飛び立ち、空を埋め尽くす光景が……どちらがバッドエンドか分かりません。



ロックオンレーザーによるまとめ破壊やスコア稼ぎ、ゲーム展開とBGMがシンクロする爽快感でハイになったゲーマーたちを曇らせた「エクストラモード」のエンディングは語り草。『レイストームHD』(SQUARE ENIX)

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アーケード版で滅ぼさなかったので、移植版では滅ぼした『レイストーム』

 その数年後、縦スクロールSTG『レイフォース』(1994年)が滅亡ゲームの灯火を受け継ぎました。「複数の敵をロックオンレーザーでまとめて倒すと高得点」というゲームシステムが共通する2作も後に続き、「レイ」シリーズ3部作と呼ばれる記念すべき第1作です。

 そもそも人類に叛旗(はんき)を翻した人工知能「Con-Human」は、母星(「地球」とは表記せず)を乗っ取って改造しており、人類の抹殺を図っています。母星を壊さないと人類が滅ぶため、母星を救うという選択肢が初めからなくて詰んでいます。

 ラスボスを倒した後、虚空には惑星だったもののカケラが漂い、主役戦闘機「X-LAY」のディスプレイはヒビだらけの画面に「任務達成」を表示してからフッツリと途切れます。ともあれ人類は救われた、悲しいながらも後味の良いエンディングです。

 レイシリーズ第2作の『レイストーム』(1996年)は、地球人類が恒星間飛行を実現し、植民惑星を持った遠い未来が舞台です。地球に対して急進的殖民惑星諸国「セシリア連合」が反乱を起こし、地球破壊を宣告したため、地球側も反撃を開始するというストーリーであり、今度は人類VS人類の戦いとなっています。

 原作のアーケード版は、セシリア連合の中枢である「ユグドラシル」を破壊し、地球はフツーに救われました。が、初代PlayStation向けの移植版で追加されたオリジナル要素「エクストラモード」では、セシリア住民がほぼ全滅するのは変わらないまま、地球も生き残ったセシリアの艦隊により星くずにされ、主役機のR-GRAYも帰る場所を失ってしまいます。

 開発スタッフは、アーケード版で地球を破壊しなかったことが心残りだったのか、移植版では念入りに滅ぼしたようです。

 このように、何度も地球を滅ぼしてきたタイトーに正面から対抗できるゲームタイトルは、バンダイナムコゲームス(当時)のニンテンドーDS用ゲーム『みずいろブラッド』(2007年発売)でしょうか。

『太鼓の達人』と同じデザイナー(横尾有希子さん)によるかわいらしいキャラが学園ラブコメを繰り広げるお話であり、ミニゲーム集です。漢字の読み取りやしりとり等の文字入力系、駆けっこや『太鼓の達人』風のタッチアクションゲームなど、笑い時々即死で友達や家族ともワイワイ楽しめます。

 主人公の「みずいろちゃん」は真っぷたつにされたり、穴だらけにされたりしますが、ロボットなので安心です。おかあさんはひとつ眼のバケモノながら、主婦業とパートをこなしつつ、みずいろちゃんを優しく育てています。

 最終ステージでは、みずいろちゃんたちは「UIMS」=人類の敵だったことが明らかになります。実は『エースコンバット3』や『ギャラクシアン』と地続きの世界であり、「みずいろちゃん」たち機械生命体は、地球を人類から奪っていたのでした。

 みずいろちゃんたちは地球を取り戻そうとする人類軍の「UGSF」艦隊を、傷だらけになりながらも撃退します。が、その5年後には104万隻以上のUGSF艦隊が派遣され、みずいろちゃんはUIMSの旗艦ごと轟沈し、地球は人類の手に奪い返されることになりました(公式ブログより)。いやあ人類も地球も滅びなくて良かったですね……とは喜びにくいですよ!

『アーケードアーカイブス メタルブラック』:(C)TAITO CORPORATION 1991 ALL RIGHTS RESERVED. Arcade Archives Series Produced by HAMSTER Co.
『レイストームHD』:(C)TAITO CORP. 1996,2020 ALL RIGHTS RESERVED.