「燃え尽き症候群」になりやすい人や職業とは?どんな症状が現れる? / Credit: canva

「大きなプロジェクトをやり遂げた後、急に仕事へのやる気がなくなってしまった」

「職場に行っても集中力が続かず、簡単なミスばかりしてしまう」

「人と話すのも面倒だし、何かと疲れやすくなった」

これらに当てはまる人は燃え尽き症候群(Burnout Syndrome)にかかっている可能性があります。

今の社会は周囲との競争を激しく煽り、働き手に多くの成果を求めるため、その責任に押しつぶされて、燃え尽き症候群になってしまう人が少なくありません。

これは当人の健康を損ねるのみならず、会社にとっても優秀な人材を失う点で見過ごせない問題です。

では、燃え尽き症候群になりやすい人やその初期サイン、あるいは具体的な症状や治療プロセスはどのようなものなのでしょうか?

目次

燃え尽き症候群になりやすい人や職業とは?初期サインや具体的な症状はどんなもの?燃え尽き症候群を防ぐために

燃え尽き症候群になりやすい人や職業とは?

燃え尽き症候群とは、それまで高いモチベーションを持って取り組んでいた仕事に対し、急にやる気や熱意を失ってしまう状態です。

さらにそうした気分の落ち込みに伴って、様々な心身の不調を引き起こしてしまいます。

燃え尽き症候群は、仕事のストレスに対する心身の反応であり、責任を背負いすぎたり、努力に見合った結果や報酬が得られなかったり、長期にわたって過度な負担を受け続けることが引き金となります。

特に燃え尽き症候群になりやすい人の特徴は、責任感が強くて仕事熱心、まじめで頑張りすぎ、過度に完璧主義などで、これに対して理不尽な要求を押し付けてくる職場や、周囲に相談できる相手がいない環境が合わさると発症の危険度が上昇します。


真面目で使命感が強い人ほど、燃え尽き症候群になりやすい / Credit: canva

また燃え尽き症候群になりやすい職種としては、介護職や福祉職、医師や看護師、教員や警察官、ホテル業やケースワーカーなど、対面での顧客サービスや人助けをする仕事が多いといわれています。

こうした職業では、強い責任感が求められるとともに、一つの問題を解決しても次から次へと別の問題が舞い込んでくるため、長期にわたって強いストレスにさらされやすく、ゴールの見えない状況に精魂尽き果ててしまいやすいのです。

これと同じことは何も職場だけではなく、家事や育児、介護に迫られる家庭内でも起こりえます。

しかし燃え尽き症候群の恐ろしい点は、なかなか発症前に問題に気付けないことです。

燃え尽き症候群を起こす人は、先にも延べた通り仕事にやりがいを感じており、熱心に取り組んでいる場合が多いため、発症は前はむしろ他の人よりも意欲的で元気があります。

そのため本人を含め何も問題を抱えていないように見えるのです。

ところがあるとき突然、灰になってしまったようになんの気力も湧かなくなってしまうのです。

では、燃え尽き症候群の前段階に見られる初期サインや、燃え尽き症候群に陥った後に起こる具体的な症状について見てみましょう。

(広告の後にも続きます)

初期サインや具体的な症状はどんなもの?


燃え尽き症候群の初期兆候とは? / Credit: canva

燃え尽き症候群を発症する前段階には、主に3つの初期サインがあらわれます。

1つ目は「情緒的消耗感」です。

これは体の疲労感とは別に、心が消耗して疲れ果ててしまったと感じる状態を指します。

専門的には「仕事を通じて、情緒的に力を出し尽くし、消耗してしまった状態」と定義されており、ストレスによる単なる疲労感というよりも、感情的なエネルギー源が擦り切れてしまうことが根幹にあります。

こうなると今まで感じていた仕事へのやりがいが薄れ、あまり喜びを感じられなくなり、人との対面も億劫になり始めます。

2つ目は「脱人格化」です。

これは仕事仲間や顧客に対して、感情のこもっていない機械的で非人間的な対応をしてしまう状態を指します。

脱人格化は上の情緒的消耗感の結果として引き起こされる行動で、他人との情緒的なコミュニケーションが煩わしくなり、公私において人と距離を置きたくなります。

以前と異なり、人とのやりとりが急に事務的になってきたと感じる場合は、脱人格化が起きている可能性が高いでしょう。

3つ目は「個人的達成感の低下」です。

このように情緒的消耗感、脱人格化が続くと、必然的に仕事へのやる気が低下し、生産性が落ちてしまいます。

そうなると起きるのが、個人的達成感の低下です。

仕事へのモチベーションがなくなり、今までの熱意や目標を見失って、「自分なんてダメな存在だ」と自己否定の感情が強くなってしまいます。

こうした初期サインをセルフチェックできるリストがこちらです。

17項目は「情緒的消耗感(E)」「脱人格化(D)」「個人的達成感(PA)」のいずれかの尺度を示し、それぞれについて1(全くない)〜5(いつもある)の5段階で評価します。

自分にどれだけ初期兆候が出ているか、参考程度にチェックしてみてください。


日本版バーンアウト尺度 / Credit: 労働政策研究・研修機構「バーンアウト(燃え尽き症候群)」(PDF)

燃え尽き症候群の症状とは?

こうした3つの初期サインの末に、燃え尽き症候群を発症します。

具体的な症状としては、以下のものが挙げられます。

1.疲労感:精神的および身体的に現れる重度のエネルギー喪失です。

体が疲れやすい、常にだるさが抜けない、仕事が終わってもリラックスできないなどがあります。

2.情緒障害:感情のコントロールが公私にわたり困難になる状態です。

仕事中のイライラが止まらなかったり、注意されると急に逆ギレするようになったり、周囲にきつく接したり、涙もろくなるなど、感情の起伏が激しくなります。

3.認知障害:記憶力、注意力、集中力を含む認知能力に問題が生じる状態です。

簡単な作業でもミスが増えたり、物忘れが多くなったり、注意散漫や集中力の不安定さを特徴とします。

4.心理的苦痛:慢性的な気分の落ち込みや不安症状が起きたり、騒音や人混みに敏感になって心理的な苦痛を感じます。

またこれに伴って「夜は眠れず、朝は起きれない」といった睡眠障害を発症することもあります。

5.身体の不調:心理的な苦痛を原因として、頭痛や腹痛、腰痛、筋肉痛が起きることもあります。

歩くと呼吸が苦しくなったり、風邪をひきやすくなることも特徴です。

6.抑うつ症状:燃え尽き症候群が悪化すると、うつ病に近い症状を発症します。

何事にも喜びを感じられず、自分自身に失望したり、無力感を感じるなど、自己否定の感情が強くなります。

こうした症状は、そのまま放置してしまうと何年間も持続する恐れがあり、早期の発見と治療が必要です。

では、燃え尽き症候群の治療とはどのようなプロセスを経るのでしょうか?