〈兵庫・斎藤知事が失職、出直し選へ〉出馬を決断した理由は見知らぬ高校生からの手紙?「自分は県政を担える」とまるで政見放送のような自信満々の会見に県職員は報復の恐怖

自民、立憲、維新がたてる候補者は… 

斎藤氏が出直し知事選への出馬を決めたのは、県議会最大勢力の自民党と立憲民主党系の県民連合が別々に候補者を立て、三つ巴の戦いになれば勝機が生まれると判断したためとみられる。

「県民連合は尼崎市の稲村和美前市長への働きかけを続けてきて、前向きな感触を得ているようです。

稲村氏は県議を務めた後、2010年に市長選に無所属で出馬し、女性としては史上最年少の38歳で当選し計3期、市長を務めています。

手堅い市政運営で自民党との関係も良好に保っていたので、県民連合は自民党も相乗りできる候補者だと期待しています」(兵庫県議)

複数の政界関係者によると、元明石市長の泉房穂氏も稲村氏擁立へ積極的に動いている。

「泉さんはテレビやSNSで県政の問題を批判し続け、知事の座を狙っているとの見方もありましたが、それはありません。

家族が政界再進出に反対しており、泉さん自身は候補者として前に出ることはなく稲村知事誕生を後押ししているようです」(県職員)

県民連合は自民党に稲村氏への相乗りを期待する。だが自民党内では稲村氏ではリベラル色が強いとして難色を示す向きが強いという。

「自民党は副知事経験者や県幹部の女性、県出身の霞が関官僚やOBの擁立を模索してきましたが、いまだに候補者が固まっていません。

しかし稲村さんに乗ることには賛成できないという声は強く、難しいのではないでしょうか」と県議会関係者は話す。

県議会第2勢力の維新も県選出の参院議員を立てる動きを見せているが、懐疑論も強い。

野党系の県議は「斎藤知事は維新と自民党の一部が推して当選しましたが、知事就任直後から自民党とはコミュニケーションを取ろうとせず、“維新の知事”でした。

今回も維新は最後まで知事をかばいましたが、逆風が強まったので不信任の動きに同調しました。しかし維新は知事の応援勢力だと世間は見ており、候補者を立てても勝ち目は大きくないでしょう。

負ければ、関西で続く連敗に、今回の知事選が加わり目立ちます」と冷ややかだ。

こうした候補者擁立の動きを、胃が痛くなる思いで見守っているのが県職員たちだと、ある県OBは話す。

「百条委が実施した約9700人の県職員全員を対象にしたアンケートには69%もの職員が回答し、中間報告の時点でその4割弱が知事のパワハラを見聞きしたと答えました。匿名でなく実名で答えた職員も多いです。

こうした人たちは文字通り職を賭けて斎藤知事の問題を告発しています。斎藤氏が万一返り咲いたら、Aさんが受けたような徹底的な報復を受けることになると誰もが思っています」

百条委の調査と不信任決議に追い込まれながらも、反撃に打って出た斎藤知事。最後の闘いとなる知事選の号砲が鳴った。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班