昭和40年代は大変な特撮ブームで、数多くの特撮映画や特撮ドラマが制作されました。フジテレビ系で放映された『魔神バンダー』は1クール、全13話で終了したこともあり、大人気だったとは言い難いのですが、子供心に印象に残る作品でした。今もソフト化されずに「幻の番組」となっている『魔神バンダー』を振り返ります。



『魔神バンダー』の放送開始を伝える、雑誌「冒険王」1967年4月号(秋田書店)

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ソフト化されていない「幻の番組」

 みなさんは、特撮ドラマ『魔神バンダー』をご存知ですか? 1969年1月~3月にフジテレビ系で全13話が放映された、巨大ロボットものです。制作は「NMCプロ」。東映が制作した『ジャイアントロボ』(1967年~68年)、円谷プロ制作の『ジャンボーグA』(1973年)などの巨大ロボットものに比べると、知名度はぐんと下がりますが、妙に印象に残る作品でした。

 オープニング曲「魔神バンダーの歌」のパワフルな歌唱、バンダーの造形のユニークさは、子供たちが親しみを覚えるものでした。再放送などで視聴した人もいるのではないでしょうか。

 しかし、残念ながら『魔神バンダー』は、これまで一度もソフト化されていません。一部のエピソードがネット上にアップされているものの、「幻の番組」となっている状態です。歴史のなかに埋もれがちな、そんな特撮ヒーローを、掘り起こしてみたいと思います。

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究極の選択を迫られるパロン彗星の王子

 主人公は、地球にやってきたパロン彗星の王子(角本秀夫)です。銀色のフードを被り、いかにも1960年代ふうの宇宙人らしいファッションです。王子には同じくパロン彗星から来た、護衛役のX1号(平松慎吾)がついています。金髪のおじさんです。高い文明を持つ一方、手先がカニのハサミのようになっているのが、パロン彗星人の特徴です。

 そんなパロン王子の命令に忠実に従うのが守護神「バンダー」です。普段は丸い目をしたかわいい顔ですが、怒ると顔がいったん胴体に引っ込み、鬼のような形相の赤い顔がニョッキリと現れます。怒った顔のバンダーは、王子以外には誰にも止めることができません。

 王子、X1号、バンダーは、パロン彗星から持ち出された宇宙エネルギー物質「オラン」を探しに、地球を訪れたのでした。オランを探しながら、王子たちはゴーダー一味ら地球の悪党たちと戦います。

 いかにも低予算な雰囲気を漂わせていた『魔神バンダー』ですが、印象に強く残っているのが最終回です。王子たちが探していたオランは、とある雑木林であっさりと見つかります。なんじゃそりゃ、と言いたくなるようなご都合主義な最終回ですが、そのおかげで王子たち一行は、無事にパロン彗星に帰ることができるのでした。

 いざ、王子たちがバンダーとともに地球を去る間際に、大事件が勃発します。某国で実験中だった核ミサイルが誘導装置の故障で、極東へ向かって飛んでいるという臨時ニュースが報じられたのです。地球では「怪物」呼ばわりもされた王子は、悩みます。知らん顔してパロン彗星に戻るか、バンダーの力を使って核ミサイルを止めるか。究極の選択です。

 バンダーの出撃を要請した立花博士(湊俊一)とのやりとりから、バンダーはただのロボットではなく、生命体であることも分かります。



雑誌「冒険王」に連載された、井上智氏によるマンガ『魔神バンダー』を収録した、「魔神バンダー 完全版」2巻(マンガショップ)