「相棒はイグアナ――異色の婚活物語で描きたかったこと」『イグアナの花園』上畠菜緒インタビュー

「婚活」を書いて見えた、人とのつながり方

――「結婚とは何か」は上畠さん自身の問いでもあったと思いますが、その答えは見つかりましたか。

上畠 考え始めたころから変わらないのは、結婚は子どもを作りたい人にはメリットのある制度なんだなということ。結婚せずに子どもを作ることももちろん可能ですが、結婚していたほうが何かとサポートなどを受けやすいですよね。
 一方、子どもを望まなくても結婚したいという人もいるわけで。心のつながりとか、相手との関係性を名のある確固たるものにしたい、という理由もあるのかなと、この小説を書いているうちに思いました。あとは、一緒に住んでいる人がいる場合、「結婚している」と答えられると説明が一気に楽になるということもあるかな、と。

――ご自身の結婚願望に変化はありましたか。

上畠 美苑をあれだけ婚活に向かわせておきながらなんですが(笑)、一緒にいたい人ができたら一緒にいればいいし、一緒にいたくなくなれば離れればいい、という気持ちは変わらなくて。人になんと言われようとも気にならない性格なので、誰かとの関係を「社会に認められたい」という願望もないんですよね。

――この作品は婚活を描きながらも、いわゆる恋愛シーンはあまりなく、「やっぱ結婚っていいよね」と勧めるものでもないところが、現代的ですてきでした。

上畠 ありがとうございます。小説の受け取り方は各々だと思いますが、人とのつながり方も、家族の在り方も、それぞれであっていいという思いを込めて書きました。美苑が婚活の果てに何を掴むのか、楽しんでいただけたら嬉しいです。

「小説すばる」2024年10月号転載