「SLから勢いよく出るのは煙?蒸気?」シンプルな構造をイメージしがちだがその仕組みはかなり複雑!“蒸気機関車のいろは”をイチから解説の画像一覧

石炭をくべることでスピードアップ! そんなシンプルな構造をイメージしがちな蒸気機関車。ところが蒸気機関車が動く仕組みは、かなり複雑。そこでなるべく簡単に、その仕組みを解説する。

蒸気機関車の仕組みをイチから解説

教えてくれたのは!

東武鉄道 車両部車両企画課 課長補佐/百目鬼 康典さん

車両一筋40年以上のキャリアを持つ。東武鉄道のSL復活運転には当初から担当。乗り鉄・撮り鉄・模型鉄など突出した鉄オタクではなく、広く薄く興味を持ち、吞み鉄に憧れている。一番印象深い鉄道エピソードは東武鉄道にSLが復活し、それに携われたこと。

SLいろはの「い」勢いよく排出されるのは煙?それとも蒸気?

蒸気機関車が動く仕組みを簡単に解説すると次のようになります。まず石炭を燃やすことによって高温の燃焼ガスが発生します。この燃焼ガスが煙管を通るときにボイラーの水を温めて蒸気を作ります。

さらに過熱管を通るあいだに燃焼ガスで蒸気を過熱し、高温高圧になった過熱蒸気をシリンダーに送り込みます。シリンダー内で過熱蒸気がピストンを前後動させ、その力をロッドが介し、動輪を動かします。煙突から勢いよく出ているのは、石炭を燃やした煙とシリンダーで使い終わった蒸気です。

SLいろはの「ろ」ロゴのようなあのナンバーは?

蒸気機関車はシリンダーのピストンの前後動を、主連棒を介して主動輪をまわし、主動輪につながった連結棒によりほかの動輪をまわします。この動輪が2つだとB、3つだとC、4つだとDという記号が与えられます。

続いて機関車の種類を表す2桁の数字は形式。10〜49までが機関車に石炭庫と水タンクを搭載しているタンク式機関車。50から99までが機関車とは別に、石炭庫と水タンクを炭水車として連結しているテンダー式機関車となります。その後に続くのが製造番号。ロゴではなく意味を持つ、形式称号なのです。

SLいろはの「は」走る距離や速度などでも蒸気機関車の仕様は異なる?

蒸気機関車は石炭だけで走るのではなく、水も大量消費します。たとえば東武鉄道のC11大樹はタンク式機関車で、石炭3トンに対して水7トンを積載していますが、水の消費量は多く、条件によりますが運行できる距離は70km程度です。もっと長い距離を運行するには石炭も水も多く必要です。

そこで機関車とは別に、炭水車という石炭と水を積んだ車両を連結したテンダー式機関車の登場となります。速度を早くするには大きな動輪、貨物列車のように力が必要な場合は小さな動輪で運行します。

編集・文/野上真一(SIESTA PLANET) 写真協力/東武鉄道