感度
Z200では感度表示にISOとdB(ゲイン)のどちらかが選択できる。従来からのビデオカメラユーザーであればdB表示の方が馴染みがあるだろうし、ミラーレス一眼カメラやシネマカメラからのユーザーであればISO表示の方が使い易いだろう。
筆者は所謂ビデオカメラ系のユーザーだが、Z200ではISO表示の方が使い勝手が良いと感じた。
そもそもの感度に関してだが、Z200を基準感度のISO 250/0dBで使用すると、暗いカメラだと感じる。屋外では全く問題ないが、一般家庭の天井照明だけのような環境だと明るさが足りない。そのため、感度を上げて撮影することになるが、筆者はZ200での屋内撮影ではISO 800を常用感度に設定している。ちなみにISO 800をdB表示で表すと、大体10dBとなる。これはビデオカメラユーザーからすると結構ゲインアップした設定に感じるだろう。
しかし、Z200は新設計の1インチCMOSセンサーを搭載し回路設計も見直されているため、10dBであってもノイズが気になることはなかった。しかし、10dBと意識するとなんとなく精神衛生上よくないので、私はISO表示で使っているのだ。
ちなみに私の場合は、ISO/GAINスイッチにはL:250=0dB/M:800≒10dB/H:1600≒17dBといった感度設定を割り当てている(撮影内容によって変更あり)。
ISO 800であれば、ノイズ感を気にすることなく収録できる。ISO 1000~1250あたりから増感し始めたかな?というのが見え始め、ISO 1600~2000ぐらいまでは、画質的にもOKな範囲だと思う。
Z200のISO⇔dBの対応表を自作してみたので、以下に提示する。
Z200のdB表示は1dB単位で設定できるが、対応表ではわかりやすく3dB単位で記している。
これは公式のものではないが、実際の挙動から見て間違いないと思われる。なお、ISO/GAINスイッチへの割り当て設定は、ISO表示かdB表示かで割り当て内容も変わってしまうので、まずはISOかdBかを決めてからスイッチの内容を設定した方が良いだろう。
一点面白いのは、マイナスゲイン(-3dB)に相当するISO値(165ぐらい?)が用意されていないことだ。これはソニーからも「正解」という返事をもらっている。なぜ用意されていないのかは不明だが、減感設定を使いたい場合はdB表示を選択してから割り当てる必要がある。
なお、この表の関係性はガンマ設定をSDR(B.T709)にしている時のものだ。HLGやS-Log3での収録の場合は、基準感度か変わるためISO⇔dBの関係も変更される。
HLGやS-Log3に設定した場合、基準感度はISO 1600と少し高めだ。そのため、被写体によってはノイズを感じやすい。
私がZ200を初めて手にして撮影したのが花火だったのだが、その際、日頃B.T709しか使わないような私が色気を出してHLGで撮影した。まだZ200の特性もわかっていなかった時期だったため、ISO 1600スタートのHLG設定で「高感度も余裕があるのかな?」と思って、ISO 3200ぐらいで撮影してみると結果はかなりノイジーな映像となってしまった。
ある程度は編集ソフトのノイズリダクションを使って軽減できるだろうが、画像処理が前提のS-Log3などのフッテージだと、このノイズの多さは編集耐性に影響を与えそうで、課題になるだろう。
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まとめ
ソニーZ200は今後のソニーハンドヘルド機の基本仕様やデザインを示す、始祖的な役割をもつモデルだと私は感じている。
ひとつはすでに記した液晶モニターの展開・収納のデザイン。いままでは上部ハンドル前方に横たわるように液晶モニターは収納されていた。このデザインはソニーHVR-Z1J/HDR-FX1が初めて採用したデザインで、以降同社はもちろん他社のハンドヘルド機でも採用された続けたグランドデザインだ。そのデザインにソニー自らがメスを入れてきたのだ。
そして、物議を醸している「2連リング」。オートフォーカスの成熟や新しいユーザー層を意識した操作系の簡素化など、これからのソニーの戦略が見て取れる設計だ。しかし、今後全てのソニーハンドヘルド機が2連リングになるとは思えない。
上位機種であるZ280の後継機などは引き続きハイエンドユーザーをターゲットにした3連リングを踏襲すると思われる。そして他社は2連リングはユーザーニーズを取りこぼすと考え、少なくとも上位機種は3連リングを採用し続けるだろう。
一方で、2連リングをアサイナブルデバイスとして、フォーカス/ズーム/アイリスを割り当てられるような考え方は、このクラスのモデルとしては珍しい。リングやダイアル類に可変パラメーターを柔軟に割り当てられるモデルが増えていくのかも知れない。
より幅広い層をターゲットにするならば、アイリスだけではなく「明るさダイアル」として、アイリス/ISO/NDを複合してコントロールできるリングにしても良いかもしれない。
ディレクターが使う場合などは、特にISOやNDフィルターを使いこなせない。ゴールデンタイムのテレビ番組を見ていても、ディレクター一人でカメラ構えて取材したんだろうな…という映像は、アイリスだけで限界まで絞り込んで、小絞りボケが起きたボケボケの映像が平気でオンエアで流れている。ここにバリアブルNDフィルターが連動したり、ISOが連動すれば、ディレクターなどのカメラが専門でないユーザーでも適切な露出設定の映像が撮りやすくなるだろう。
さらにズームリングに関しては、現在のキヤノン方向式に加えて、ニコン方向式を設定できる様にしても良いだろう。特にEマウントレンズを使っているαユーザーを取り込んで行きたいのならば、それはユーザーフレンドリーな設定になる。
デジでニコン方向式が採用されれば、恐らくソニーCCD-VX1(1992年)以来のハンドヘルド機への実装になるのではないだろうか?
また細かいことだが「ショルダーストラップ取付金具」の位置が前方はハンドルグリップ「右側」、後方はハンドルグリップ「左側」に変更になったことを高く評価している。
従来機の「取付金具」の位置は、前方はハンドルグリップ「左側」、後方は本体後部「右側」という位置だった。これは他社のハンドヘルド機も同様だ。
恐らくこのデザインに固定されたのはソニーDCR-VX1000(1995年)からだと思われる。
しかし、現在のハンドヘルド機ではその金具の位置では支障があると感じていた。現行のハンドヘルド機の多くで、ハンドル前部上面に多くのボタンやスイッチがレイアウトされているからだ。そして、撮影時にショルダーストラップをカメラの右側面に除けると、ベルト部分がそれらのボタン・スイッチに被ってしまうという問題があったのだ。
この問題に対しては、私も以前より他社メーカーに改善を要望していたのだが、まさかソニーが先陣切って対応してくるとは思っていなかった。
しかし、残念ながらZ200の取付金具の配置は満点ではない。後方金具がハンドル後部のシュー金具と並んで配置されており、そのシューにアクセサリー機器を取り付けるとベルトが干渉してしまう。なぜこのレイアウトをソニーが良しとしてしまったのかわからないが、もう少し実際の運用をイメージした設計にしてほしかった。
ちなみに、この問題の回避策としては、写真用品の「デュアルシュー」を使うことで、シューの位置を右側に逃がす方法がある。副次的にカメラを構えた時にワイヤレス受信機の顔への圧迫感が軽減されるなどというメリットもある。
いろいろと賛否はあるにせよ、従来機とは違ったアプローチを各所に盛り込んだZ200は、新しいユーザー層の獲得も視野にリデザインされたハンドヘルドビデオカメラであると言える。
そして、既存ユーザーもこのZ200の新しい試みに対応するだけの「思考のアップデート」が求められるターニングポイントに今、立っているのかも知れない。