カントリー歌手で俳優としても活躍したクリス・クリストファーソンが死去した。88歳だった。

ショービジネスの世界を引退して3年が経った9月28日、ハワイ・マウイ島の自宅で亡くなったことを遺族がインスタグラムで発表している。

「私たちの夫、父、祖父であるクリス・クリストファーソンが9月28日土曜日に自宅で静かに息を引き取りました」
「私たち全員が、彼との時間をとても幸せに思っています。虹を見たら、彼が皆さんを見下ろし微笑んでいると思ってください」

妻リサ、8人の子供、7人の孫がいるクリスだが、声明には遺族の署名と共に、「プライバシーの配慮を守ってくださるようお願いします」と締められている。

クリスの訃報に1976年の映画「スター誕生」で共演し、劇中で主題曲「エバーグリーン(スター誕生の愛のテーマ)」を共に歌ったバーブラ・ストライサンドはインスタグラムで追悼。

「クリスがLAのトルバドール・クラブで演奏しているのを初めて見た時、特別な人だと思いました。裸足でギターをかき鳴らす姿は私が温めていて最終的に『スター誕生』となる脚本にぴったりだと感じたのです」
「可能な限り彼を支えたクリスの妻にお悔やみの言葉を申し上げます」

一方、カントリー界からドリー・バートンはこう悲しみの言葉を寄せている。

「何という損失でしょう。偉大な作曲家、偉大な俳優、素晴らしい友人でした。いつまでも愛しています。ドリー」

1936年にテキサス州で生まれたクリスは、カリフォルニアの学校で文学を学び、オックスフォード大学に留学、イギリスで初めて音楽の道に入り、クリス・カーソン名義で曲をレコーディングした。しかし曲がリリースされることはなく、大学卒業後アメリカ軍に入隊、1965年に退役しテネシー州ナッシュビルに移住し音楽のスターダムの夢を追い続ける。

コロンビア・レコーディング・スタジオで清掃員として働きながら他アーティストに曲を提供するも、ソロアーティストとしては鳴かず飛ばずだったクリスだが、ジョニー・キャッシュの自宅にヘリコプターを飛ばしテープを聴いてもらったことで注目され、ファーストアルバムをレコーディングするきっかけとなった。

クリスの曲は一時交際もしていたジャニス・ジョップリンのほか、サミー・スミス、エルヴィス・プレスリー、グラディス・ナイト、マライア・キャリーらにカバーされている。

さらに演技の世界にも進出したクリスは、1971年に「ラスト・ムービー」でデニス・ホッパーと共演し、1974年にマーティン・スコセッシ監督の「アリスの恋」に出演、1976年の「スター誕生」でハリウッドでの地位も確固たるものに、1978年の「コンボイ」は日本でもヒットした。最後の映画出演はイーサン・ホークが監督した2018年作「ブレイズ」となっている。

18枚のスタジオアルバムを発表し2021年に引退したクリス。3度結婚し、最後の妻リサ・マイヤーズとの間に5人の子供をもうけた。