ルノーが2025年限りでのF1パワーユニット開発終了を正式発表。メルセデスのカスタマーチーム化が濃厚

 フランスの自動車メーカーであるルノーが、2026年の新規則導入を前にF1におけるパワーユニット(PU)製造を終了することを明らかにした。

 現在ルノーはアルピーヌのブランドでF1に参戦しており、PUの製造も行なっている。しかしながらアルピーヌがメルセデスとカスタマーPU契約を結ぶのではという話は、長らく噂として流れていた。そして今回、ついに正式に発表された形だ。

 声明によると、パリ近郊のヴィリー-シャティヨンにあるF1エンジンファクトリーは、将来のルノー/アルピーヌブランドの市販車において最先端技術を投入するためのエンジニアリングセンターに生まれ変わるとのことだ。

 ルノーはこれで2026年向けのPU開発を断念したこととなるが、来年2025年シーズンまでは、引き続き現行のターボ・ハイブリッドエンジンの供給に向けて努力を続けるという。声明には「ヴィリーにおけるF1関係の活動は、新エンジンの開発を除いて2025年シーズン終了まで継続される」と綴られている。

 今後同施設はハイパーテック・アルピーヌ・センターとして、アルピーヌのスーパーカー開発や、将来に向けたバッテリー技術、電気モーター技術の研究開発などが行なわれることになる。またアルピーヌのWEC(世界耐久選手権)プログラムやカスタマープロジェクト、そしてフォーミュラEやラリーレイドのパートナーブランドとしての取り組みなど、モータースポーツ活動への貢献も引き続き行なわれる。

 そしてアルピーヌは、F1のPUプロジェクトを白紙にする一方で、グランプリの動向を注視していくとしている。

 声明にはこう綴られている。

「ヴィリー-シャティヨンの従業員代表との協議と対話の結果、アルピーヌはF1の動向を監視する部門の設立を決定した」

「この部門は、従業員のF1に関する知識と技術を維持し、ハイパーテック・アルピーヌのさまざまなプロジェクトにおいて技術革新の最前線に立ち続けることを目的としている」

 またアルピーヌは、ヴィリーの現スタッフ全員の雇用が今後も保証されると主張している。

 アルピーヌのフィリップ・クリーフCEOは、こう語る。

「ハイパーテック・アルピーヌ・センターはアルピーヌの開発戦略、ひいてはアルピーヌ・グループのイノベーション戦略にとって重要なものだ」

「これはヴィリー-シャティヨンの歴史におけるターニングポイントであり、アルピーヌの“イノベーション・ガレージ”としての地位を強化しつつ、グループの野心的な未来において、技術の継承と未来に向けた希少なスキルの確保を保証するものだ」

「我々のレースにおけるDNAは、ブランドの礎であり続ける。特にハイパーテック・アルピーヌが存在することで、前例のない産業および自動車プロジェクトを推進し続けるだろう」

ヴィリー側の抗議

 ルノーがF1のエンジンプロジェクトを断念するという決定は、ヴィリーの従業員からの反発があった後に下されたものだ。

 ヴィリーで働くスタッフたちは、アルピーヌがエンジンプログラムに資金を投じずカスタマーチームとなることはコストカットに繋がるとはいえ、正当なものではないとして、この動きに抗議した。

 ただ、今年初めにルノーのルカ・デ・メオCEOと新アドバイザーのフラビオ・ブリアトーレがアルピーヌのF1計画を見直す中で、メルセデスのエンジンを長期的に使用することが望ましい道であるという結論が固まっていった。

 この決断がもたらすものは金銭的メリットだけではない。アルピーヌはメルセデスと契約することで競争力のあるPUを手にすることができ、現在抱えるエンジンパワーの不足という問題を解決できる。

 アルピーヌのチーム代表であるオリバー・オークスは最近、2026年に向けたプロジェクトを継続させたいというヴィリー側の考えに理解を示した一方で、デ・メオCEOには考慮すべき要素が多くあるのだとして、こう説明していた。

「あらゆる要素が絡んでくるが、結局のところ、最高のエンジンを搭載したいということだろう。それについて今ルカが検討している」

 なお、メルセデスとの話し合いは継続中であり、両社の将来のパートナーシップについては正式に発表されていない。