東京国立近代美術館「ハニワと土偶の近代」展が凄いぞ! 俺たちの文化は、こんなにも彼らの影響を受けていたのか…

2024年10月1日から12月22日まで、東京国立近代美術館で素晴らしく尖った展示が行われる。その名も「ハニワと土偶の近代」。

えっ、16日から東京国立博物館でも国宝指定50周年記念 特別展「はにわ」が始まるぞ? 被ってないか……!? と思ったあなたは鋭い。

展示の名前だけ見ると、一方はハニワと土偶。もう一方はハニワ。違いは土偶の有無だけに思える可能性を否定できない。しかし両者はけっこう違うのだ。近代美術館の方は、だいぶ凝った切り口でハニワと土偶に迫るぞ!!

・表と裏

東京国立近代美術館と東京国立博物館。2つの施設で行われる、テーマも期間も近しいそれぞれの展示。これは実際に近代美術館の方の表現なのだが、国立博物館の展示を「表」とすれば、近代美術館は「裏」のようなものだという。

本展示の案内を頂いた時、何か面白そうな気配を感じ取ったのだが、その直感は正しかった……! オープンに先駆けて行われた内覧会に参加してきたのだが、本当にこの展示でしか見られない独自の切り口で、素晴らしいものだったぞ!!

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・視点

この「ハニワと土偶の近代」展なのだが、”見に行く前に” 注視すべきはハニワでも土偶でもなく、「近代」の部分であると感じた。ただ純粋にハニワを見て学びたい方は、まず東京国立博物館の特別展「はにわ」をご覧になるべきだろう。

対する東京国立近代美術館の「ハニワと土偶の近代」展は、それらの扱いが近代の日本においてどのようなものであったか……また、近代の文化に対し、どのような影響を及ぼしているのか……といった側面について、理解を深めることができる展示となっている。

ハニワと土偶というのは、端的に言えば古代の遺物。考古学者などが研究対象にしているものというイメージが強いのではなかろうか。私自身は、この展示を見るまではそう思っていた。

しかし、それだけがハニワや土偶の持つ側面ではないと教えてくれるのが、この展示。1940年頃にハニワの “美しさ” が注視され、各種記念メダルや絵葉書の題材に。

戦後には美術的な価値を見出した岡本太郎やイサム・ノグチらにより、ちょっとしたブームが起きた。

特撮や漫画、アニメといったサブカルチャーの分野でも、独特の外見がキャラクターのデザインなどに導入され、身近なものとなっている。

展示品の多くは本物のハニワや土偶(つまり、どこかから出土した古代のものの意)ではなく、本物に影響を受けて製作された近代の芸術作品や、それぞれの時代におけるハニワ・土偶の社会的な扱いを知ることのできる品々となっている。

この展示に本物のハニワは2体、土偶は0体しかない。しかし展示品は絵画や彫刻、映像作品、写真、文献資料など多岐にわたり、見応えは圧倒的! 

そうか、ハニワも土偶も、本物は遠い過去の遺物。しかしその遺伝子は現在も俺たちの周囲に浸透していたのか……! こうして私はすっかり啓蒙され、新しい視点を得た。

これは美術館でできる最も素晴らしい体験のうちの1つだ。面白い切り口に、充実度の高い展示物。お勧めだ!!