7度のF1世界チャンピオンであるルイス・ハミルトンは、10代の頃に学校でイジメを受けたことをキッカケに、F1キャリアを通じてうつ病と戦ってきたことを明かした。そしてレースでのプレッシャーや自身の感情をどう処理してきたのか、自身のメンタルヘルスについて率直に語った。
「20代の頃、本当に辛い時期があった。僕は人生を通してメンタルヘルスと戦ってきたんだ」
Sunday Times紙にハミルトンはそう語った。
「うつ病になったこともある。13歳くらいの幼い頃からね。レースでのプレッシャーと学校での苦悩が原因だったと思う。イジメもあった。僕には話し相手が誰もいなかったんだ」
メンタルヘルスの問題に対してカウンセリングを受けたことがあるかと訊かれたハミルトンは「何年か前にひとりの女性に話を聞いたことがあるけど、あまり役に立たなかった」と説明し、今は話し相手を「見つけたい」と思っていると明かした。
グレナダ系の父とイギリス・バーミンガム出身の母を持つハミルトンは、肌の色の違いによって差別的な扱いを受けた過去をこう語った。
「どこにも逃げ場がなかった。学校でも公園でも、街を歩いていてもね。僕にはそれが理解できなかったし、両親はそれについて何も言っていなかった。彼らは何が起こっているのかを説明してくれなかったんだ」
「父はただ『落ち着いて、我慢して、何も言わずに、コース上で彼らをやっつけろ。それがお前にできる全てだ』と言っていた」
COVID-19が世界的に大流行している際には、ハミルトンは朝5時に起きて瞑想し、それから走りに行くという生活リズムを送るように。また、スマホや会話を禁止して沈黙の日々を過ごす“サイレント・リトリート”に参加したり、ゲーリー・チャップマンの『5つの愛の言葉』などの本にも目を向けたりと、自身のメンタルヘルスに向き合った。
「最初は心を落ち着けるのに苦労した」とハミルトンは言う。
「でも、自分自身や自分の内なる感情に触れ、自分に何ができるかを理解する上で本当に素晴らしい方法なんだ」
ハミルトンはまた、自身の感情を理解することに関してはかなり「洗練された」とも説明した。
「両親から受け継いだモノを学び、そのパターンに気づき、状況にどう対応し、どうすれば変えられるかを理解するんだ」とハミルトンは言う。
「だから、過去に僕を怒らせたことでも、今は怒らない。僕はかなり洗練されたよ」
なおハミルトンは2024年シーズン開幕を前に、来季からフェラーリへ移籍することを決断したが、それを現在所属するメルセデスのチーム代表トト・ウルフに伝える際、緊張は最高潮に達していたという。
「契約書にサインした瞬間から、感情のジェットコースターみたいだった……自分のボスに伝えるのは恐ろしかったよ」とハミルトンは言う。
「でも本当にワクワクしている。子どもの頃、ミハエル(シューマッハー)を見ていたのを覚えているからね」
「どのドライバーもあの(フェラーリの)マシンを見て、『赤いコックピットに座ったらどんな感じなんだろう?』と思うんだ」