30年前に発表された忘れられた報告
優れた研究にはしばしば、面白い裏話があるものです。
実は今回の多細胞真核生物が16億3500万年前に誕生したとする研究は、今から30年以上前になる1989年の発見に基づいていたのです。
ただこの報告は記載されていた資料の画像が悪く、アクセスしずらい科学雑誌で発表されたため、ほとんど着目されることなく埋もれていました。
ですが1989年の研究成果を覚えていた研究者たちは2015年に問題の地層を再訪問して採取を行いました。
結果、279個の微化石を発見し、1個を除いて全てが「Qingshania magnifica」であることを発見。
さらなる分析を続け、今回の発表へと至りました。
埋もれていた論文が、埋もれていた生物の発見に繋がったという事実は、今後の調査において有意義な前例となるでしょう。
参考文献
1.6-billion-year-old fossils push back origin of multicellular life by tens of millions of years
https://www.livescience.com/planet-earth/fossils/complex-life-arose-earlier-than-we-thought-16-billion-year-old-fossils-reveal
元論文
1.63-billion-year-old multicellular eukaryotes from the Chuanlinggou Formation in North China
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adk3208
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。
大学で研究生活を送ること10年と少し。
小説家としての活動履歴あり。
専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。
日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。
夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。