マンガを実写化した映画は上映時間が決まっているため、忠実に作っても原作にあったはずの展開の省略は避けられません。登場するはずだったキャラクターの存在そのものがなくなることはもちろんですが、見せ場がなくなり、原作ほど活躍が見られないことが残念な人も多いのではないでしょうか。



実写映画『キングダム』シリーズで山田裕貴が演じた万極のキャラクタービジュアル (C)原泰久/集英社 (C)2023映画「キングダム」製作委員会

【画像】え…っ? 夏菜の『銀魂』さっちゃん完璧!こちらがもっと見たい「再現度高い実写キャラ」です(6 枚)

シリーズ続編さえ作られれば、もっと活躍が観られるはず?

 人気の長編マンガの実写映画化が発表されると、原作ファンの間では「キリが良いのは◯巻だからそこまでかな」「このエピソードが好きなんだけど、結構ストーリー進まないと厳しいから無理かも」と、どこまでのストーリーが実写化されるのかにも注目が集まる傾向にあります。

 たしかにヒットによってシリーズ化されたとしても、1作品の上映時間は長くてもだいたい120分から140分ほどで3時間を超えることは少ないため、一部のエピソードがカットされる、順番が不自然にならない程度に展開が入れ替えられるといった改変が入るケースも多いです。

 そして、そういった実写化によるストーリーの変更やキリの良いところでのシリーズ完結により、原作ではまだまだ活躍するシーンがあるものの、出番が少なかったキャラもいます。はまり役と評判だったものの、トータルでの出番が短いと残念に思えてしまうものです。

『キングダム』シリーズの万極(演:山田裕貴)

 人気マンガ『キングダム』(作:原泰久)の実写映画は2019年にシリーズ1作目『キングダム』が公開されて以降、シリーズ全ての興行収入が50億円を超えるヒットを記録しています。

 2024年に公開された4作目『キングダム 大将軍の帰還』では、「シリーズ最終章」と銘打っているだけあって、「大団円」を迎えたと感じさせるほどのラストが描かれていました。とはいえ、実写映画では既刊72巻の原作の16巻の内容までしか描かれておらず、「スケールが大きいから簡単に続けられないのは分かるけど……」「まだまだあそこやってほしい」と、シリーズが続くことを願うファンも少なくありません。

 そして、再現度が高いキャラクターの活躍があまり描かれないまま終わることにも、もったいないという声が多数出ています。たとえば、シリーズ3作目『運命の炎』から登場した、秦国へ侵攻してくる趙国の将軍「万極(まんごく)は、山田裕貴さんがビジュアルはもちろん話し方や表情もしっかりと再現し、大きな注目を集めていました。

 万極は秦軍によって40万もの趙軍の捕虜が殺害された「長平の戦い」の生き残りであり、秦国の民を根絶やしにしようとするほど、強い恨みを抱いているキャラクターです。山田さんは長い白髪と鋭い目、途切れ途切れの話し方という万極の特徴をリアルに再現し、映画を観たファンからも「まがまがしさがすごくて劇場のスクリーンで観るとより怖かった」「立ってるだけでも雰囲気が万極過ぎる」「目のひんむき方完璧」と、絶賛されていました。

 ただ、万極は映画ではそこまで登場シーンは多くなく、原作を読んでいない観客からも残念という声も見られます。万極が再登場して本格的に戦うのは、原作の25巻以降で描かれる屈指の人気エピソード「合従軍編」で、続編の制作が叶えばさらなる活躍が観られそうです。わざわざ売れっ子の山田さんのスケジュールを抑えて万極役をオファーしているからには、主人公「信(演:山崎賢人)」との対決を見たいと思ってしまいます。

『銀魂』シリーズの猿飛あやめ(演:夏菜)

 人気SF時代劇ギャグマンガ『銀魂』(作:空知英秋)の実写映画は、「坂田銀時」役の小栗旬さん、「志村新八」役の菅田将暉さん、「神楽」役の橋本環奈さんをはじめ、豪華過ぎるキャストによるビジュアルの再現度や原作さながらのハイテンションなギャグが好評で、「実写化の成功例」の代表として挙げられることも少なくありません。

 実写映画は2作目となる『銀魂2 掟は破るためにこそある』まで制作されており、2から新たに登場した新キャストのなかでは、元幕府お抱えのエリートくの一で、紫色のロングヘアと赤フレームのメガネ、くの一の衣装が特徴的な「猿飛あやめ(通称:さっちゃん)」を演じた夏菜さんのビジュアルが、そっくりだと話題を呼んでいました。

 夏菜さんが映画公開前に「こんな格好で銀魂2に出ております」と映画本編で披露する赤いボンテージ姿をInstagramに掲載しただけで、「マンガそのまま」「想像以上にさっちゃん」と大絶賛の声が多数寄せられています。

 しかし、夏菜さん版のさっちゃんは映画の序盤のキャバクラのシーンに出てきただけで、それを残念に思うファンも多いようです。夏菜さんはこの役でInstagramのフォロワーも大幅に増えたそうで、映画公開時のイベント取材で出演後の周囲からの反応に喜びを見せつつ、「『3』(続編)を作っていただきたい。『3』で戦いたいです!」と、続編制作を熱望していました。銀時のストーカーポジションの変態キャラですが、1流のくのいちとして高い戦闘力を誇るさっちゃんのアクションを、実写版で観られる日は来るのでしょうか。

『東京喰種』シリーズの月山習(演:松田翔太)

 2017年、2019年に実写映画のシリーズ2作品が公開された『東京喰種』(作:石田スイ)は、原作の持つダークな雰囲気を大きく損なわずに実写化した作品として、原作ファンからも納得の声が多く出ています。

 1作目は人を食べることでしか生きられない喰種(グール)を討伐する組織「CCG」と、不慮の事故で半喰種となってしまった主人公「金木研(演:窪田正孝)」との戦いを描き、シリーズ2作目となる『東京喰種 トーキョーグール【S】』では、喰種として人間を殺して食べることを楽しんですらいる喰種「月山習(演:松田翔太)」が、強敵として金木の前に立ちはだかります。

「生きるためには人間を食べなければいけない」という葛藤を抱く金木とは異なり、人間を食べることをためらうどころか生き甲斐にすらしている月山は、容姿端麗で何事もそつなくこなすハイスペックなキャラクターです。そして、「食材」として執着している金木の血がついたハンカチの匂いを嗅いで興奮する変態で、原作でも強烈な印象を読者に与えました。

 そんな月山を演じた全力で嬉々として演じた松田さんには、「誰が演じるのか不安だったけど、これは神キャスト」「たしかに月山は変人だけど、色気もあるキャラだから納得」という反応が相次いでいます。また、彼は後に金木の強力な味方として活躍するため、「再現度が高かっただけにここで終わりなのはもったいないからもっと出てほしい」という声もありました。

 実写2作目のクライマックスでは、続編を示唆するようなキャストも登場しているため、さらなる月山の活躍が観られるのか、期待したいところです。

※山崎賢人の「崎」は「たつさき」