『機動戦士ガンダム』後半から登場したGファイターは、いくつもの形態になることができる優秀なサポートメカです。しかし、そのギミックがオモチャ的と思われて敬遠された時期もありました。



劇中ではおもにスレッガーとセイラが搭乗していた。「MG 1/100 Gファイター(ガンダムVer.2.0用 V作戦モデル)」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

【画像】「あっ! ケンタウロスだッ!」こちらアムロが考案したという「ガンダムMAモード」です

宇宙世紀に合体・変形というギミックを加えたGファイター

 TVアニメ『機動戦士ガンダム』後半から登場した「地球連邦軍」の重戦闘機「Gファイター」は、「RX-78 ガンダム」と組み合わせることでさまざまな運用ができるというのが最大の特徴です。その破格ともいえる性能について振り返ってみましょう。

 Gファイターは「Gメカ」や「Gパーツ」とも呼ばれることがあります。これはGファイターが、いくつもある形態のひとつだからでしょうか。この、運用に合わせて各形態にチェンジできる点が、Gファイターの長所であります。

 もっとも使用頻度の高い形態が、Gファイターとガンダムのすべてのパーツを使った「Gアーマー」でしょうか。その運用中、左右2枚のガンダムシールドを重ねるジョイントを導入したことで、ガンダム単体での防御力もアップしたと考えられます。この形態で目的地へ向かい、到着後にGファイターとガンダムに分離するのが通常の運用方法でした。

 Gパーツ前部とガンダムAパーツ(上半身)、それに「コア・ファイター」を使った陸戦用重戦車形態が「Gブル」です。MS(モビルスーツ)を一撃で撃破できる二連装大型ビーム砲を持つことから、通常の戦車よりも高い火力を誇り、さらにバーニアを使った滞空能力も持つという破格の性能がポイントでした。

 もっともこの形態では、Gパーツ後部とガンダムBパーツ(下半身)が運用不可であり、パイロットもふたり必要なことからコストパフォーマンスはよくありません。それゆえにコア・ファイターを省いた「Gブルイージー」の方が優秀でした。

 このGブルイージーで使わない、Gパーツ後部とガンダムBパーツにコア・ファイターを使用した戦闘機形態が「Gスカイ」となります。そのため、このGスカイとGブルイージーでGアーマーとなり、その後にGファイターとガンダムに分離することが可能でした。

 Gスカイにもパーツを省略したイージータイプがあります。Gパーツ後部とコア・ファイターだけで形成される「Gスカイイージー」で、この形態の長所はガンダムが別に運用できる点にありました。そのため、地上ではガンダムを乗せて空中戦をすることも可能です。

 これらがGパーツ本来の使い方でした。しかし、さらに付け加えるべき形態に、ガンダムにGパーツ後部だけをドッキングさせた「ガンダムMA(モビルアーマー)モード」というスタイルがあります。「ガンダム・スカイ」「ケンタウロスガンダム」と呼称することもありました。

 ジオン公国軍のMAの高速性能に対抗しようと、パイロットの「アムロ・レイ」が考案した形態ですが、思ったほどの効果はなかったようで一度の使用にとどまっています。おそらく本来、想定されていた運用ではないため機体バランスが悪くなり、かえって機動力が低下したのではないでしょうか。

 これらのGパーツによってガンダムの運用方法は広がることになります。物語後半ではGファイターのパイロットとなった「セイラ・マス」「スレッガー・ロウ」のテクニックと相まって、MSと互角以上という戦果も挙げていました。

 そのように優秀な機体であるGファイターですが、歴史の闇の中に葬り去られかけたことをご存じでしょうか。



Gファイターとガンダムの組み合わせいろいろ。「1/250 G-アーマー+RX-78 ガンダム」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

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Gファイターの残したいくつかの功績

 Gファイターが歴史の闇へ消えかけた原因とは、TV版『機動戦士ガンダム』を再編集した劇場版に登場しなかったからです。もっとも編集のミスで『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』に2か所ほど登場していました。

 そしてGファイターの代わりとして『機動戦士ガンダムII 哀・戦士編』から登場したのが「FF-X7-Bst コア・ブースター」です。完全な入れ替わりの形で、パイロットもセイラとスレッガーでした。

 このコア・ブースターとの差し替えは一説によると、劇場版では作風をよりリアルにするためだったそうです。つまりGファイターの運用法が、リアルには見えなかったからなのでしょう。もともとGファイターは玩具会社からの指示で登場することになったメカでした。それゆえにガンダムとのプレイバリューを考え、劇中のような形になったわけです。

 その後、続編となる『機動戦士Zガンダム』開始時、ストーリーは劇場版三部作からつながったものと公表されました。これによって劇場版三部作が正史扱いとなり、Gファイターの存在は抹消されたに近いものとなります。

 ところが、その続編となる『機動戦士ガンダムZZ』の主人公機「MSZ-010 ZZガンダム」の存在がふたたびGファイターに光を当てました。なぜならZZガンダムはGファイターのシステムを取り入れたMSだったからです。

 もともとGファイターに限らず、TV版の設定は消えたものではありません。とはいえ、当時の感覚では、今でいうマルチバースという概念はなく、複数の異なる設定のどちらが正しいのか白黒つけるべきであって……という風潮にありました。

 これが今では、公式にもGファイターとコア・ブースターは同時に存在していたという設定になり、さらにコア・ブースターはGスカイを参考に開発されたという後付け設定がなされています。

 実はこのGファイターが、のちに影響を与えたことがいくつかありました。そのひとつが戦闘機の上にロボットが乗って空中戦をするという演出です。それ以前にも皆無というわけではありませんが、このスタイルを定番化させたのはガンダムとGファイターでしょう。

 さらに、ロボットアニメ中盤でのパワーアップ展開は、ほかの作品でも見られたものの、新型メカが登場し、それがオモチャ化するという展開はそれほど多くありませんでした。このパターンを定番化させたのがGファイターだったわけです。

 いわゆるガンダムと同梱された「DXセット」は好評で、当時のクリスマス商戦では高評価を受けていました。この好評ゆえにスポンサーである「クローバー」は、後番組となる『無敵ロボ トライダーG7』『最強ロボ ダイオージャ』でも同様に、中盤以降にプレイバリューのあるオモチャを販売しています。

 この「1年間のロボットアニメ中盤で新型メカを出す」というパターンは、さらに後続番組である『戦闘メカ ザブングル』以降で「2号ロボ」という概念を生む土台となりました。富野由悠季監督の「2号ロボ登場後の1号ロボのパイロットはヒロイン」という定番の展開も、その元祖がセイラだと考えると納得できるでしょう。

 これがさらに飛躍すると、スポンサーは変わるものの同時間枠で放送された「勇者シリーズ」でよく見られる、1号ロボと2号ロボの合体形態、通称「グレート合体」の始祖も、Gアーマーだと考えられるかもしれません。かなりのこじつけでしょうか。

 一度は日陰の道を歩かされたGファイターが、こうして振り返ってみると多くの功績を残したといえるかもしれません。筆者的には単純にカッコよく思えて、昔から好きなメカのひとつです。