“イップス”の直し方とは?トップ男子プロが解説

“イップス”は「自分はならない」と思っていませんか?決して他人事ではなく、ゴルファーなら誰でもかかる。しかもゴルフを一生懸命やるほどかかりやすいんです!

なぜイップスにかかるのか、どんな症状が現れ、どうやって克服するのか。それを事前に知ることが、イップス予防の最善策になります。

進化や変化に積極的にトライする

クラブを変えることでイップスの不快さを改善。

イップスで生まれるゾワっとした不快さは、夜眠れないほどに。特性の違うクラブを使うとその不快さが消えた。

今も試行錯誤するアプローチイップス

2000年のセカンドQTからはじまった私のイップスは、パッティングで手が動かなくなってヘッドが出なくなる。この症状は、2011年に長尺パターを使うまで続きましたが、やがてドライバーにもイップス症状が出るようになり、それがアイアンにまで派生。これらも技術的な対策で、ある程度解決することができました。

パッティング、ドライバー、アイアンと続いて、最後にきたのがアプローチのイップスです。さまざまな対策を講じていますが、アプローチだけはいまだに解決策を見いだせていません。

もともとアプローチはかなり得意なほうで、いくらでもスピンをかけて、グリーン上に止めることができて、私のプレーを助けてくれていました。それが、切り返しから手がスムーズに下りてこなくなり、ヘッドを無理やりに落とそうとするとダフリやチャックリなどのミスが起こるようになったのです。

これまでのイップスの経験を元に試行錯誤をしていますが、根本的な対処は見つかっていないのが実際のところです。

クラブとイップスとの微妙な関係性

私のドライバーイップスはヘッド体積が400ccを大きく超えはじめた時代から起こりました。大型化によって、ドライバーの特性が大きく変わったことで、イップスを誘発させたと感じています。

同じようにアプローチのイップスは、2010年の”溝規制”の影響が大きいと思います。それまでの角溝では、強いスピンをかけて止められていたものが、十分なスピンがかけられなくなり、私にとってはボールコントロールも難しくなりました。

このように道具をきっかけにイップスが起きてしまう可能性は、アマチュアゴルファーにもあり得るでしょう。特性の違うクラブを使うことで、今までと違うフィーリングに体が反応してエラーが起きたり、それに合わせようとすることで、これまでのメカニズムを壊してしまったりするのだと思います。

一方で、クラブを変えて今までと違う打ち方にすることで、イップスを改善することもできます。私の場合は、長尺パターを使ったり、打球が高く上がりやすく、つかまりのよいドライバーに変えることでイップスは軽減しました。

アプローチの場合は、最近は転がし専用のクラブであるチッパーを試しています。パターと同じストロークで打って、ランが多めの球で寄せる。この打ち方だと、少なくともイップスの症状は出ないのでいい対策になりそうです。

メンタル面からのイップス対策

私のアプローチイップスは、出ないときはまったく出ないのですが、緊張が生じると起こりやすくなるようです。打つ前にゾワゾワっと嫌な感覚が出るので、そうなるともうウエッジでは打たないようにしています。ユーティリティやチッパーで転がしたりパターを使うなど、つまりイップスが出ない打ち方で対処するのです。

これまでの経験を思い返すと、自分に期待していないときはイップスは出ない。大雨や風などの悪天候の日は、いいスコアを出そうと思わないためか、症状が出ることがありません。

メンタル面がイップスのきっかけになるのであれば、普段からの生活も大切だと思います。自律神経のバランスが整うように、睡眠や食事に気を配る。具体的にいうと、毎日決まった時間に起きる、寝る。暴飲暴食をしないなど、いい生活のリズムと健康を心がけることもイップス防止になるでしょう。

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イップスへの対策Lesson

[症状]ボール位置を右にしすぎると刺さりやすい

ボールを右に置きすぎると、リーディングエッジが地面に刺さりやすい。これを恐れてインパクトがゆるんでしまうとイップスもミスも出てしまう。

[対策]パターのストロークでチッパーを打つ

転がし専用クラブであるチッパーを使い、パターと同じグリップとストロークで打つと、もっとも恐れているイップスの症状は出なくなった。

解説=市原建彦

●いちはら・たつひこ/1978年生まれ、神奈川県出身。06年「アサヒ緑健よみうり」でツアー初優勝。現在はレッスン活動とともに、ミニトーナメント「FJツアー」を主宰。ツアー参戦中の2000年ごろイップスの兆候が現れたという。

構成=コヤマカズヒロ
写真=相田克己
協力=ゴルフラボ