起業家・森数美保さん、“やりたい”ことがなかった私が行き着いた“ありたい”姿を叶えるキャリア

キャリアにおいて、やりたいことがない。でも今の会社にずっといたいかというと、そうではない。そんなふうにキャリアにおける「will」がない人は、仕事とどのように向き合えばよいのでしょうか。本記事では、自身もこれまで「やりたいこと」はなかったという、株式会社Your Patronum(ユアパトローナム)代表取締役の森数さんにインタビュー。前編では、やりたいことがない中でこれまでどのようにキャリアを歩んできたのかについて聞きました。

さまざまな職業に触れられる転職エージェントからキャリアをスタート

——2024年に起業した森数さんですが、意外にもこれまでのキャリアで「やりたいこと(will)」はとくになかったそうですね。新卒のときはどのように就職先を選んだのですか?

大学時代は地元の大阪に住んでいて、転勤がない仕事がいいなと思っていたので、最初は大阪で準キー局のテレビ局を受けたんです。しかし結局、新卒で入社したのは転職エージェントでした。自分は何がしたいのかがわからなかったので、たくさんの職業に触れられる仕事に就こうと考えました。

でも入ってみると仕事がしんどくて。1年目で早くも辞めたいと思ったときに、ラジオ局などに応募したこともあったのですが書類すら通らず、もう自分はどこへも行けないし、やりたいこともないし、これからどうするんだろう……と思っていました。そこから2年目に入ると少しずつ仕事が楽しくなってきましたが、自分はこれがやりたいとか、上の役職を目指したいとか、そういった気持ちはありませんでした。

——結婚と第1子の出産を経験されたのが、この1社目に在籍してるときだったんですよね。

そうですね。結婚するときに名古屋に引っ越すことになって「会社を辞められる!」と思ったのですが、名古屋に支店があるじゃないか!と言われて、退職ではなく異動することになってしまったんです(笑)。昭和のサラリーマン的な発想で「異動させてもらったなら2年は妊娠したらいけないな」と思っていました。

その後、第1子を妊娠したときは「子どもが生まれたら両立は難しいし、もう戻りたくないな」と思っていたのですが、そのときのメンバーから「森数さんの居場所はここだから、絶対に帰ってきてほしい」と言われて。新卒のマネージャーで産休を取得したのは私が初めてだったので、これで戻らなかったら「子どもができたらこの会社で働き続けるのは無理なんだな」とか「マネージャーってしんどそうだな」と後輩に思わせてしまうかもしれない……と考えて復帰しましたね。「出産後もバリバリキャリアを積んでいくぞ!」という思いではなく、義務感だったのが本音です。

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結婚と出産を経ても“戦っていけるキャリア”に舵を切った

——そこから第2子を妊娠中に、1社目を辞めたんですよね。

第2子の妊娠がわかってしばらくして退職しました。8月に出産して、翌年4月に子どもを保育園に入れるのと同時に、また働こうとタイミングは決めていました。だけど、すでに退職してしまっている上に、とくにやりたいこともない。おまけに子どももいる。

転職活動をする上で非常に不利な状況になったときに、今後戦っていけるキャリアに振り切ろうと決めたんです。また、やりたいことはなかったけれど「働くことは自分にとって意外と大切なことだったんだな」と気づいたのもそのときでした。

前職では転職エージェントとして「HR業界の人」というキャリアにはなれたので、キャリア戦略上、そこから潰しが利くキャリアとなると採用かなと考え、2社目は人事として入社しました。1社目は今でこそ大企業ですが、当時はベンチャーの規模感だったので、次で大企業も経験しておこうという戦略的な転職でしたね。

その後、第1子が小学校に上がる手前のタイミングで3社目に転職しています。3社目はスタートアップだったので、なんでもやらせてもらえる点が魅力的でした。戦える武器を増やす中で、もしかしたら「これだ」というものが見つかるかもしれないという期待感を持って入社しましたね。