〈ディズニーを抜いて世界3位に〉「人気アニメとのコラボ」だけではない…USJが人気急増となった「3つの転換点」

アメリカのテーマエンターテインメント協会(TEA)が発表した2023年の世界のテーマパークの来園客数データによると、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンが世界3位になったという。その背景には、小学生のUSJ人気急増が関係している。テーマパーク経営に詳しい明治大学経営学部兼任講師・中島恵氏に話を聞いた。

USJの来場客数、2年連続世界3位に!

テーマエンターテインメント協会(TEA)とアメリカのコンサルティング会社AECOMが実施した調査によると、世界のテーマパーク来場者数ランキングで、フロリダ州のマジックキングダムが11年連続1位、カリフォルニア州のディズニーランドが2位、それについで日本のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)が2年連続世界3位に入った。

来園者数は前年から3割増の1600万人を記録したが、この飛躍的な来場者増加は、ライバルである東京ディズニーリゾートの影響もあるという。

「同調査によると、東京ディズニーランドの来場者数はUSJに次いで4位、東京ディズニーシーは7位ということでした。

USJの来場者数世界3位というのは、ディズニーシーの『ファンタジースプリングス』の開催が今年に延期されたことと、ディズニーランドの新たな目玉スポット『美女と野獣』の人気が一段落したことにより、東京ディズニーリゾートからUSJに顧客が流れたためと考えられます。

しかし、最近の一番の要因となっている大きな違いは、USJと東京ディズニーリゾートでの“年間パスポートの有無”です。

東京ディズニーリゾートは2020年から年間パスポートを廃止したままにしていますが、これは来場者数を増やすというよりも来場者の体験価値や客単価を上げることに重きを置いているためです。

一方、USJは現在も年間パスポートを2種類販売していて、安いプランは年間大人2万円(税込)。USJの1日の入園料は大人9400円(税込)〜1万900円(税込)ですから、年に約2回来場すれば、年パス料金の元が取れるほどおトクなのです。

そのため、西日本在住者を中心とした年パス保有者によるリピート率の高さがUSJ来場者数増加の大きな要因の1つとなっています」(中島氏、以下同)

さらに最近の来場者数増加に訪日観光客の存在も大きく影響しているという。

「USJは定期的に『クールジャパン』を体感できるような日本を代表する人気コンテンツとのコラボが楽しめるイベントを開催しています。

過去にコラボした作品は、『ONE PIECE』や『進撃の巨人』、『鬼滅の刃』など国内外で高く評価されている作品ばかり。コロナ収束による“リベンジ消費”“リベンジ観光”も相まって、インバウンド客にも大人気なんです。

昨年コラボした『SPY×FAMILY(スパイファミリー)』は、訪日観光客はもちろん、小学生連れの家族にも好評を博しました。

惜しまれつつも終了したアトラクション『スパイダーマン』イベントの成功も、昨年のUSJ来場者数増加に大きく関係しているでしょう」

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ハリウッド映画から日本の人気アニメへのシフトチェンジ

また、来場動機に繋げるためには子どもからの人気だけではなく、親世代からの支持を得ることも非常に重要だと中島氏は語る。

「USJは2022年に『美少女戦士セーラームーン』とのコラボを実施し、大成功を収めました。アニメ放送時に小中学生だった30代〜40代の女性をターゲットに、親世代となったこの層を取り入れ、家族での来場動機に繋げたんです。

例えば、子どもは『スーパーニンテンドーワールド』、母親は『美少女戦士セーラームーン』、父親は『ハリーポッター』というように、それぞれに“目当て”となるコンテンツを用意し、家族全員が楽しめるような工夫が施されています」

そもそもUSJは開業当初、『ジョーズ』や『ジュラシックパーク』などの映画のテーマパークというコンセプトだったが、なぜフレキシブルに人気の漫画・アニメコンテンツを取り入れることができているのだろうか。

「『ハロウィン・ホラー・ナイト』の仕掛け人でありイベントプロデューサー(当時)の津野庄一郎さんによると、2010年代からUSJの来客数はアメリカの本家ユニバーサル・スタジオ・ハリウッドやフロリダを上回り、現在ではUSJ単体での独自コンテンツを展開しやすくなったという背景があるそうです。

コラボの自由度が高まったのは、2015年当時大人気だった『進撃の巨人』とのコラボが成功したことが大きく影響しています。

このようなコラボは、出版社や漫画家などのコンテンツホルダーにとっても二次利用による利益と話題性が得られるため、双方にとってメリットの大きいプロジェクトなんです」