その「秘密」、意味ないかも? / credit:フォトAC

人は誰しも自分の悪いところを極力秘密にしておきたいと思うものです。

しかし、実は相手は思うほどあなたの悪いところを気にしないかもしれません。

テキサス大学の研究グループがネガティブな秘密を周囲の人間に暴露する実験を行った結果、暴露を聞いた人は意外な反応を示しました。

この研究はJournal of Personality and Social Psychologyに2023年11月1日付けで掲載されています。

目次

秘密の内容より打ち明けた誠実さが評価秘密を打ち明けるハードルが下がる

秘密の内容より打ち明けた誠実さが評価


悪いところは秘密にしたくなる / credit:Pixabay

アメリカ、テキサス大学のアミット・クマール氏らの研究グループは、ネガティブな秘密が周りの人間にどのように受け入れられるのか調べるため次のような実験を行いました。

まず、ネガティブな秘密を持つ被験者は自分のそれを打ち明ける前に、打ち明けることで相手の評価がどのように変化するか想像してアンケートに回答します。

次に、被験者は秘密を家族、友達、知り合い、見知らぬ人に打ち明け、打ち明けられた人たちに被験者の評価が秘密を知る前とあとでどのように変わったかアンケート調査が行われました。

被験者の秘密の内容は「実は自転車に乗れない」といったものから「浮気をしたことがある」といったものまで様々でしたが、驚いたことにその秘密がどのような内容でも被験者の想像より実際の評価の方が良くなっていたのです。

また秘密を聞いた人々のアンケートでは、打ち明けられた秘密の内容よりも「正直に打ち明けた」という誠実さを評価する傾向にありました。

もちろん被験者との関係性が近く被験者をよく知る人間は秘密があったことそのものや、秘密の内容に伴って被験者の評価を下げる傾向にありましたが、それでも被験者が想像したほどに下がることはありませんでした。

つまり、人は自分のネガティブな秘密が周りの人に及ぼす影響について過大評価しすぎているのです。

もしこの事実を知ることができたなら、秘密を持つ人たちの行動はどのように変わるのでしょうか?

研究グループはその点についても実験を行いました。

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秘密を打ち明けるハードルが下がる


意外と相手は「秘密」を気にしないかも / credit:フォトAC

ネガティブな秘密を持つ人は、その秘密が自分の評価を著しく下げると思い込んでいますが、実は周りの人はそれほど気にしません。

とはいえ、最初に実験を行ったときはこの事実がわかっていなかったため、被験者の中で秘密を打ち明けることができた人はわずか56%でした。

しかし、最初の実験結果を聞かせた上で、再び同じ実験を行ったところ被験者の92%が秘密を打ち明けることを選択したのです。

人は自分の秘密の重要性を過大評価しているために秘密のままにしていますが、秘密を保つにことの心理的負荷は決して小さくありません。

多くの人が、打ち明けることで評価が下がらないとわかっていれば、秘密を打ち明けてしまいたいという心理があるようです。

自分の気持ちをさらけ出しても相手は気にしないかも


自分の気持ちを「秘密」にしなくていい / credit:フォトAC

人に悪く思われそうな自分の秘密を心に留めておくことは決してラクではありません。

また、もし打ち明ける前にバレてしまうと、秘密の内容だけでなく、隠していたというネガティブな行動も加わって、さらに評価を下げてしまうことになります。

それに対し、相手にバレる前に自分から打ち明ければ「秘密にしておきたいはずのことをわざわざ教えてくれた」という誠実さが相手の評価を上げてくれることが多いのです

また、自分にとって「ネガティブな秘密」でも相手にとってはそうでもないことも少なくありません。

例えば会社の上司から食事の誘いを受けたとき、プライベートな先約があっても断りづらいと感じてしまう人は多いと思いますが、案外包み隠さず先約があることを伝えても上司はそれほど気にしない可能性が高いのです。

たとえ評判を下げそうなことでも自分の気持ちは無理に隠さず、正直に打ち明けてみてもいいのかもしれませんね。

参考文献

The (wrong) reason we keep secrets
https://www.sciencedaily.com/releases/2024/01/240104150149.htm

元論文

Let it go: How exaggerating the reputational costs of revealing negative information encourages secrecy in relationships.
https://psycnet.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Fpspi0000441

ライター

いわさきはるか: 生き物大好きな理系ライター。文鳥、ウズラ、熱帯魚などたくさんの生き物に囲まれて幼少期を過ごし、大学時代はウサギを飼育。大学院までごはんの研究をしていた食いしん坊です。3人の子供と猫に囲まれながら、生き物・教育・料理などについて執筆中。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。