けん玉を通じて、地元・石巻の復興に貢献していく
──その後、どのように本格的に「けん玉パフォーマー」としての活動をスタートしていったのでしょうか?
自分がパフォーマーとしての道を歩み始めたのは、練習の様子をSNSで発信したことがきっかけですね。
けん玉の練習に打ち込んでいたある日、石巻に復興支援にきていたアーティストと出会ったんです。彼自身もけん玉をやっていて、息子さんはけん玉の世界大会で優勝している有名な方で。その人が「instagramで発信してみなよ」と言ってくれたんです。
そんな彼の助言を聞いてすぐにアカウントを作り、けん玉の動画を発信し始めたところ、すぐにけん玉仲間とつながっていくようになりました。当時はストリートけん玉の黎明期。プレイヤーも多くなかったので目に留まりやすかったこともプラスにはたらきました。徐々にフォロワーが増え、発信力が強くなっていき、地域のお祭りやイベントなどに呼んでもらえるようになったんです。
パフォーマンス、ワークショップなど、イベント出演を精力的に行っている小野寺ゴリさん
──とんとん拍子で軌道に乗っていったのですね。
メディアに出演した影響もあったかもしれません。知人がテレビ番組のプロデューサーの方に「石巻で面白い人がいる」と紹介してくれて、サンドイッチマンさんの番組に出演したことがあるんです。仙台出身の「サンドイッチマン」は宮城県民のスーパースター。番組の中でお二人にけん玉を教えるという企画に参加させていただき、出演後はパフォーマンスの依頼もさらに増えていきました。
──まさに、けん玉が「いろんなところへ連れていってくれた」のですね。
けん玉って本当にすごいコミュニケーションツールなんです。ぼくは、いつもけん玉を首にかけているのですが、出会う人みんなに興味を持ってもらえるし、すぐに技を披露することもできる。飲み屋でけん玉パフォーマンスを披露して初対面の方と仲良くなったり、奢ってもらったりすることもありました(笑)。イベントでいろいろな場所に足を運んで、日本だけではなく世界中にも友達ができました。本当に人生が変わったと思います。
──今後はどのような活動をしていくのでしょうか?
パフォーマーとしての活動はもちろん続けていきますが、並行してけん玉のプレイヤーの育成にも取り組んでいきます。
今、仙台で定期的に子どもたちにけん玉を教えているんです。ぼくはけん玉を教えることが上手いと思います。教諭として学校現場で学んできたことはけん玉の指導にも役立っています。
けん玉教室に通う生徒たちと
──指導者としても可能性を感じられたのですね。
そうですね。正直、ぼくはけん玉のプレイヤーとして世界のトップに立てるとは思っていないです。けん玉ワールドカップという世界大会があるのですが、頑張っても100位前後に食い込めるかどうか。
だけど、きっと世界でトップに立つ選手を輩出することはできる。教え子たちが活躍して、「ゴリさんっていう面白い先生と出会ったから」と思ってくれたらうれしいですね。そうしたら、自分が一番になれなくても、きっと上手い酒が飲めるかなって。
ぼくはとにかく宮城県と石巻市が大好きなんです。東日本大震災の復興もまだまだ途中な部分があると感じています。けん玉を通じて宮城県の復興に貢献していきたい。パフォーマーとして活動を続けるのも、子どもたちに教えるのも、その思いが原動力になっています。
きっと、けん玉を手放すことは一生ないと思います。長い期間をかけて、宮城県や石巻市にけん玉で貢献していきたいですね。
(取材・文 / 荒田詩乃)