情報開示請求で開示された黒塗り、財団名も“プラチナ”ランクも非公開
X財団は2002年、まちづくりの調査研究や支援を行ない、望ましい地域社会の形成などに寄与する目的の財団として設立された。
兵庫県庁のそばで運営するビルには県警本部の一部部署が入居するなど、業務は県と密接な関係がある。拠出の有無や経緯を尋ねると、書面で次のように回答があった。
「当財団は『まちづくり』という観点から地域社会への貢献を目的とし設立され、現在に至ります。
(中略)優勝記念パレードにつきましては、同パレード実行委員会が『兵庫・関西の賑わいを創出し、都市魅力を発信すること』を目的として設立実施されましたことを受け、その趣旨に当財団が賛同し、専ら地域社会への貢献のための支援として、協賛金を支出させていただいたものとなります。
(中略)当財団は専ら地域社会への貢献のための支援として協賛金を拠出させていただいております。
取材とはいえ、当財団が自ら協賛金の金額や経緯等を申し上げることは、殊更に協賛により支援したことを自ら誇示したものと誤解されかねないこと等から、その詳細を当財団からご説明することは差し控えさせていただきます」
この説明通り、昨年度の「事業報告書」でX財団は、個々の助成額は記していないが、パレードとともに暴力団追放運動や国際交流NPOへ助成した事実を明らかにしている。
問題は、ただでさえ信金の件で注目されているパレードの資金集めについて、X財団が協賛した事実をいまだに県が明らかにしていないことだ。
信金絡みの疑惑の高まりで、県には、パレード協賛企業や拠出額を明らかにするよう求める情報開示請求が多く寄せられた。
これに対して、県は協賛額は非開示としながら、信金11行も含む大部分の企業名と協賛金額のランクを公開した。だが、X財団を含む3法人だけは企業名もランクも非公開にしている。
開示請求を行なった辻本達也明石市議に対し、県は8月下旬、3法人の名を伏せた理由を「企業名や金額を公表しないことを条件に協賛金を受けたから」と説明した。
だが、上述のようにX財団の事業報告にはパレードに助成したことが明記され、主催者であるパレード実行委員会の「事業報告」にも、X財団と、県が社名を伏せた他の2社のうち1社であるY社の名が「ご協力いただいたみなさま」のリストに載っている。
この事実を指摘すると、県民生活部総務課は「協賛金の申し込み時に非公表を希望されたので(開示文書では)黒塗りとしました。パレード事業報告を作成する際は改めて掲載していいか確認し名前を載せました」と説明した。
パレード事業報告の作成時にX財団自身が認めた法人名公表を、なぜ今もしていないのか。
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副知事を辞職した片山氏に取材を試みると…
さらに、X財団の計2100万円の拠出額は、兵庫県内で協賛した70超の法人の中で最高額だったが、X財団は協賛金額に応じて決まる「ランク」も黒塗りにされた。
総務課は「(大半のスポンサーは)すでに閉鎖されたパレード関係のホームページでランクが公表されたことがあったため開示文書でも明らかにしたが、3法人はそのホームページにも掲載がなかったので(今回文書でも)非公表とした」と説明する。
ランクは協賛金50万以上の「ブロンズ」から同1000万円以上の最高の「プラチナ」まで4段階ある。
社名が公表された兵庫県内企業は、上から2番目の「ゴールド」が1社あるだけで、他はすべて500万円未満の「シルバー」か「ブロンズ」。
県内で群を抜く額の協賛金を出し、唯一「プラチナ」ランクに入った最大のスポンサーが存在した事実自体が、県の情報開示では分からない状態だ。
こうした措置に、背景はないのか。
最大のキーパーソンでありながら副知事を辞職した片山氏に取材を試みたが、電話には出ず、ショートメッセージで質問を送っても回答はなかった。自宅に人の気配はあるが外から声をかけても反応はなかった。
財団の存在を隠せという指示はなかったのかとの質問に、総務課は「ないと思います」と答えた。
だが、財団名をなぜ「協賛金支払い時の約束」を理由に今も非開示にしているのか。不足分を副知事の一言で穴埋めしたように見える資金調達で成り立ったパレードとは何だったのか。
調達見込みの失敗から金策まで、パレード資金確保の実態が百条委で新たな焦点に浮上するのは必至だ。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班