「真実性の錯覚」が起きるメカニズムとは?
研究者によると、「真実性の錯覚」が起こるメカニズムには、情報の「処理流暢性(processing fluency)」が大きく関わっていると話します。
処理流暢性とは、ある情報が脳内で処理される際のスピードや容易さを示します。
脳内での処理が簡単な情報ほど、そうでない情報に比べて理解されやすく、記憶もされやすいので、私たちの脳はその情報を「親しみやすい」「正しい」と感じやすくなるのです。
要するに、何度も繰り返し聞いた情報は処理がスムーズになるので、脳が「この情報はよく知っているから正しそうだ」と誤って判断する要因となります。
Credit: canva
今回の研究は、科学的に正しい情報を人々に広める上で、「真実性の錯覚」が応用できることを示していますが、他方で使い方次第では悪用もできてしまう可能性があります。
例えば、政治的な主張や自然災害時の情報など、誤った言説を何度も繰り返し発信していると、人々がそれを信じ込んで、間違った行動を取ってしまいかねません。
特に自然災害時の場合は、そうした行動が命の危険につながる恐れがあります。
私たちは繰り返される情報を無意識に信じやすくなっているので、一度自分で調べてみることが重要になるでしょう。
参考文献
Repetition boosts belief in false climate claims, even for climate science advocates
https://www.psypost.org/repetition-boosts-belief-in-false-climate-claims-even-for-climate-science-advocates/
元論文
Repetition increases belief in climate-skeptical claims, even for climate science endorsers
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0307294
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。
他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。
趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
ナゾロジー 編集部