Blackmagic Design導入事例:「KIRINJI25周年ライブ」の場合。18台のBlackmagic Design製カメラと複数のATEMスイッチャーを組み合わせ

Blackmagic Designによると、メジャーデビュー25周年を記念したKIRINJIのワンマンライブにBlackmagic Designワークフローが使用されたという。Pocket Cinema Camera 4K、Pocket Cinema Camera 6K、Pocket Cinema Camera 6K Pro、Micro Studio Camera 4K G2およびURSA Broadcast G2を含む18台のBlackmagic Designのカメラが複数のATEMライブプロダクションスイッチャー製品と組み合わせて使用された。

1998年にメジャーデビューを果たし、「エイリアンズ」など数々の名曲を生み出したキリンジ。実の兄弟である堀込高樹と泰行によって結成されたキリンジは、現在は堀込高樹のソロプロジェクト「KIRINJI」として活動中で、自身の作品以外にも、ほかのアーティストへの楽曲の提供や、劇場映画やゲームへの楽曲制作など幅広い分野で活躍している。そのKIRINJIのメジャーデビュー25周年を記念するライブの配信および収録に数多くのBlackmagic Design製品が活用されたという。

KIRINJIのミュージックビデオやコンサート映像を数多く手掛ける監督の大野要介氏は、次のようにコメントしている。

大野氏:映画作品みたいな配信をライブでやってみたいと思ったんです。

堀込高樹さんの作る音楽がとても文学的で、ポップだけどキラキラしているだけではない深みのある世界観と、Blackmagicのカメラで撮れる画のフィルムっぽい質感との親和性が高いなと感じていました。


大野氏:ライブ配信でもそういうフィルムルックで、他の配信とはひとあじ違うものにしたかったんです。ただ、今回のライブは会場がLINE CUBE SHIBUYAで、かなり大規模な配信になるので自分の手には負えないと思って、ずっと一緒に仕事をしてみたいと思っていた(配信の)エキスパートの森田さんにお声がけしました。

同ライブの配信および収録を技術面で支えたのが、株式会社ニルヴァーナの森田良紀氏。森田氏はレコーディングおよびライブ配信ができるスタジオを運営しており、サウンドエンジニアとして長年活躍してきた経歴を持つ。

森田氏:弊社スタジオの造りが、地下がブースで1階がコントロールルームになっているので、レコーディング中はプレイヤーをカメラ越しに見ている状態なんです。そこでカメラにこだわり始めて、だんだん配信もやるようになりました。ここ数年は自分でレコーディングをやることは減っており、9割が映像絡みの仕事になりました。

レコーディング自体が昔みたいにみんなで演奏してワンテイクで録音するというより、別々で録音してそれをエディットして繋げていくことが主流の時代になり、自分が好きな、演奏の緊張感が薄れてきたなと感じていました。その点ライブ配信やライブ収録は1回きりなので、その緊張感が堪らずワクワクしますね。

Blackmagicのカメラは初代のBlackmagic Cinema Cameraからずっと使い続けています。撮った映像の質感に見事にハマりました。Blackmagic製品は直感的に扱えるのもあり、音楽業界から映像を始めた人はBlackmagicのカメラを使う人が多い気がします。今回の配信のカメラマンも4名は現役のプロミュージシャンです。


Blackmagic Pocket Cinema Camera 4Kが8台、6Kモデルが5台、そして6K Proモデル2台、さらにMicro Studio Camera 4K G2が2台、URSA Broadcast G2が1台使用された。各カメラの出力はATEM 2 M/E Constellation HDスイッチャーに送られてATEM 1 M/E Advanced Panel 20を使ってスイッチングされた。

森田氏:ステージの上手と下手に設置したカメラはいろいろな画を撮って欲しいポジションで、その中でも監督からすごく寄った画を撮って欲しいという要望があったのでSIGMAの60-600mmレンズを使いました。少し扱いづらいレンズですが寄りのショットはもちろん、ステージ上からお客さんを撮ってもある程度広く狙えます。

会場の後ろからはキヤノンの200-400mm×1.4倍エクステンダー付きレンズを使いました。URSA Broadcast G2はステージ前のレールでFUJINONの16倍B4レンズを装着して使いました。カメラを目立たせたくないキーボード位置は、Micro Studio Camera 4K G2を固定して使いました。

カメラの出力にはLUTをつけずにATEMスイッチャーに送って、スイッチャーのプログラム出力に対してカラーコレクションしています。マルチビュー出力にも同じカラーコレクションが当たるようにしている為リハーサルで各カメラの様子を見ながら納得いくまで調整が出来ました。

収録はすべてBlackmagic RAWで収録しています。Blackmagicのカメラを使っている大きな理由のひとつはBlackmagic RAWが使えることですね。RAWで4Kや6Kなのに軽くて扱いやすいです。

大野氏:(Blackmagic RAWだと)照明がビカーンと当たっているところや真っ暗になったところも、後から救えるのがいいですよね。Blackmagic社製のカメラは暗部を持ち上げた時の粒子感がフィルム的で好きなのですが、カメラ内で余計な処理をせず「ノイズを消すも活かすも後から自由にやってください」というユーザーに委ねてくれている感じに大変好感を持っています。これは空気感に直結するので僕にとってはとても重要です。収録した映像はDaVinci Resolveで編集します。

今回のライブでは、地下に収録スペースを設けることになったため、ケーブルの引き回しが課題だったと言う。

森田氏:最大で150mくらいケーブルを引き回す必要がありました。弊社では普段からBlackmagic Optical ConverterやATEM Camera Converterを多く使用している為、今回もHDMIやSDI信号を光ファイバーに変換してケーブルを延長しました。

URSA Broadcastだったらもっとあると思いますが、Pocket Cinema Cameraをこんなに(コンサート収録で)入れている人はあまりいないと思います。ただ、撮れている画は、他のカメラより抜群に素晴らしいです。ほかの現場でも、アーティストからこの画めちゃめちゃいいねって言われますね。


大野氏:KIRINJIは堀込さん1人のプロジェクトでほかのミュージシャンは全員サポートメンバーなんです。みんないろいろなバンドに引っぱりだこで、配信ライブもかなり経験しているメンバーなのですが、彼らも今回の配信は画がすごくきれいで今までの配信で一番良かったと言ってくれましたし、配信を見てくれた視聴者からも大変好評でした。KIRINJIのマネージャーさんからも、今までのKIRINJIの配信史上一番良かったと言ってもらえました。これってカメラが絶対に関係あるんですよね。