サロモンから出発する、新たなスキー「DEPART 1.0」

25季に新しいフリースタイルスキーがサロモンから登場する。
それが「DEPART1.0」である。振り返ってみるとここ10年、いやそれ以上サロモンは新しいフリースタイルカテゴリのスキーを出していなかった。

開発の背景にある「Teneighty」。そして生まれた全く新しいスキー

この「DEPART1.0」はスイスのスキーヤー、サミ・オートリーブ(Sämi Ortliebとニコ・ヴィニエ(Nico Vugnier)の2人が先頭に立って作り出したものである。きっかけはフリースタイルブームを生み出した銘機「Teneighty(テンエイティ)」発売から20周年のタイミングで記念モデルを作ろうとプロジェクトがはじまったことにある。

幾度か試作を繰り返したが、開発途中のままCOVIDの影響下に入り、完全にプロジェクトが頓挫した。その後、ニコのサロモンへのはたらきかけにより、全く新しいフリースタイルスキーを作ろうと誕生したのがDEPART 1.0プロジェクトである。

1998年の登場から2000年代初頭にかけて数多くのフリースキーヤーが履き、いまの時代の礎を築いた銘機Teneighty。通称黃テン
新機種DEPARTのアウトライン。ソールは色鮮やかなデザインに。

サロモンはフリースタイルカテゴリの製品を長らく出していなかったため、制作チームとしても2010年頃のモデルに立ち返って、その系譜をただ受け継いだだけのプロダクトにするわけにはいかない。新しい時代の象徴となるようなスキーをイチから作る必要があったし、そのほうがチームにとってもスムーズだったのだ。

近年、ヨーロッパやアメリカの20代前後の若いスキーヤーのなかで、大会に勝つことや難易度の高いトリックをすることだけにフォーカスを当てるフリースキーの在り方に、反対する動きが目立ってきた。
SNSを中心に映像配信するbuldozや新しい活字メディアsuperfriendlysocietyなどがそうである。このほかにも、SNS上には映像の作り方や編集の仕方を含め、自身のクリエイティビティを発信するスキーヤーのサブカルチャーが次々に発展してきている。

「DEPART1.0」もその流れを汲んで開発され、数年の期間を費やしている。つまりこのDEPART1.0はこれまでのTeneightyを含め、ほかのスキーとは大きく趣向が異なるのだ。
多くのスキーがコンペティションで勝つためや、より上手に滑るために設計・開発されているのが普通だが、「DEPART1.0」は乗り手の表現力や自由なスキーを体現させることを最上位に掲げて制作している。

開発主要メンバーのサミ・オートリーブ
パークやストリートなどハードに使っても問題ない耐久性

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独創的なシェイプと乗り味

ほかのスキーとコンセプトが違うのはわかった。具体的にそれを製品にどう落とし込んでいるのかを見ていこう。
まずはその独創的なアウトラインだ。ウエスト106mm、ノーズは140mmもあり、全体にワイドなシェイプをしながらノーズのアウトラインはロケットのように尖っている。

明らかに異質なこのノーズは、パウダーを滑っている際に雪の抵抗を減らす目的がある。これによって、滑っている時によりスピードが出ることはもちろん、ノーズバターもしやすくなる。
開発者のサミ曰く、NEW SCHOOLERSのインタビューで「パフォーマンスの利点に加えて、尖ったノーズにはコンセプト的なアイデアも含まれています。私自身がスキーに行きたくなるような形状を作りたかったのです。この尖ったノーズはそれを示す一例ですが、少なくとも私にとっては効果がありました(笑)。スキーをしていて、下を見た時に、スキー自体が「行こう!」と誘ってくれるような感覚が好きなんです」

と語っている。

また、2000年代当時のツインチップは主流から外れた先進的なものに映ったが、いまツインチップから連想されるものはコンペティションや、よりインパクトの強いトリックなど固定的な価値観である。
そのために従来のツインチップとは見た目から異なるものを作って新しいスキーのカルチャーを表現したいともサミは語っている。

DEPART
@万@@@ 170cmモデル(D=137-104-125mm、R=14m)/180cmモデル(D=140-106-128、R=15m)

尖ったトップとデザインが前進するイメージを与えてくれる
テールはツインチップ形状になっている

ノーズには深いロッカーラインがあり、テールにもロッカーがしっかりとある。足元のキャンバーはわずか数ミリ程度だ。
板の構造はフルサンドイッチ。サイドウォールがトップからテールまで入っている。芯材は軽量ながら優れた反発力をもつカルバとポプラの混合材を採用し、グラスファイバーが補強材として使用されている。そして足元には補強のためのチタンプレートが入っている。

芯材のテーパーやグラスファイバーの厚さ、入れ方などが肝になっているのだろうと想像するが、使っている素材としては至ってシンプルだ。

乗り味としては比較的硬めのフレックスのため、自由な滑りを表現することがコンセプとだからといって、”柔らかくて遊びやすい”という地形遊び向きの他のスキーとも少し毛色が異なる。端から端まであるサイドウォールがその堅牢さを生み出しており、体重をかければバターはできるし、ストリートなどでのハードな使用にも耐えうる頑丈さを合わせ持つようなスキーだ。ラディウスは180cmの板で15mとなっており、ゲレンデでも自由度の高い滑りが可能となっている。

履いているライダーのSNSの映像を見てみよう。

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地形での柔軟な遊びだけでなく、パークでのでかいジャンプやジブでもへこたれない強靭さがありながら、太めのシェイプによってパウダーも思うまま。という滑りのスタイルだ。
まとめてみると、少し硬めでカービングがしやすく、全体的にワイドなシェイプでトップの形状が独創的……。初心者が最初に選ぶスキーではなさそうだが、あきらかにユニークで他のスキーでは体感できない乗り味をもたらしてくれる。