百獣の王こと武井壮が、プロゴルファーを目指していろいろな経験を積むのがこの企画。
今月はワンランク上のレベルアップのために必要としている「アプローチの強化」に着手。その手はじめとして、かねてから約束していたマスダゴルフに行ってみた!
増田さんが作り続ける、ウエッジとバターの魅力とは
まずは武井の使用中のウエッジを増田さんに見てもらった。昨年、練習だけでも15万球を打ったが、その半分くらいを打ったクラブなので、形状や性能がどうのこうのというよりもソールやフェースの消耗が半端ない
武井 増田さんとは6、7年前ですかね。僕のゴルフ番組で対戦させていただいて、僕が勝ったらクラブを削ってもらえるという約束をしていたんですが。
増田 あれね。勝てると思ったので(笑)。というのは冗談で、ずっと気になっていたんですよ。
武井 ティーチングプロの技能試験に受かって、もう一段階レベルを上げるなら、ショートゲームの強化がとくに必須だな、と思っています。実際、プレーしていてアプローチもバンカーも「ここでこういう球が打てたら」と思うことが多いんですが、先ほどいろんなタイプのウエッジを打たせてもらって、それぞれ如実に違いが感じられるのが衝撃的でした。
増田 グースネックのウエッジしか作れない人ではないんですよ(笑)
ネックやソール形状のウエッジを試打。性能の違いや特徴、マスダゴルフならではのチューンナップ法のレクチャーを受けながらバンカーからもテストした
武井 これまでオーソドックスなモデルのウエッジしか使ったことがなかったので、いろんな発見もあり、プレーにも変化が出そうです。
増田 こういうサービスは、なかなか受けれないですからね。会社を作るときに、ジャンボ(尾崎)さんに対応していたようなことをアマチュアの方にもやってあげられたら絶対によろこんでくれるだろう、ということから会社がはじまっています。
武井 増田さんの知識や技術は、やはりジャンボさんとのセッションから生まれたものですか?
増田 もちろんそうで、それがなかったらマスダゴルフはなかったですね。ジャンボさんの知識はすごいですよ。プレーの技術もすごいですが、自分でも組み立てたり調整したりするほど「クラブに詳しい」というのが通算100勝以上をあげた要因のひとつじゃないですかね。
武井 そんなプロが、クラブに関しては増田さんに任せた、ということですね。
増田 小さい工房はあったんですが「お前が使いやすいように全部改造していい」といわれたときは涙が出そうでした。ジャンボさんの気が変わらないうちに、その日にやりました(笑)
武井 ジャンボさんが使ったクラブで「これだ!」と最高の1本ができた瞬間って覚えていますか?
増田 ジャンボさんは、持って構えたときの全体の印象でビッときたときに「よし、これだ」と感じる人で、そう感じないときは打たないときもあります。キレイに磨き上げたとかではなく、なんなら傷が入っていてもかまわない。
武井 何がビッと感じさせるんですかね?
増田 打たなくても弾道までイメージできるか、だと思います。そのイメージが出るかは、私自身、今も一番大事にしていて、球筋を打ち分けるときも邪魔しない。市販のモデルは100%そうなるように作るのは難しいところもありますが、基本はジャンボさんのクラブを作るときと一緒です。
同じものを2つと作ったことがないほど
ジャンボさんのスイングとクラブは進化し続けていきました
武井 そうやって最高の1本ができたとき、ジャンボさんはそれを使い続けるんですか?変えていくんですか?
増田 変えていきます。同じ物を2つと作ったことがなく、どんどん新しいものに変えていく。スイングもそうで同じことはせずに、つねに新しいものを追求していました。ですから、テストしながら試合をしているんですよ。クラブもスイングも。
武井 最新が最良になるようにスイングもアップグレードして、クラブもそれに合うものを使う。
増田 そうです。未完成のまま戦って、それでずっと勝ち続けましたが、つねに進化し続けていくんですから、そりゃ勝ちますよね。
試打後は工場内へ。いろいろなパーツや作業工程を見学。
「うちはモデルチェンジしないメーカーとして有名で、ウエッジは10年、バターは設立から20年、同じモデルを売り続けています。値段も変えていないので材料費が高騰している今ちょっと赤字になりかけています(笑)」(増田)「それだけ完成度が高く、時代が進んでもプレーヤーが求める性能が詰まっているんですね、それに愛情をもって使えるクラブだと思います」(武井)
武井 僕はこれまでクラブには無頓着で、ソールやネックのつき方が違うと、こんなにも弾道や球質が変わるのかと実感しましたが、とくに気になったのはグースのきついモデル。使ったことがなかったので構えたときにちょっと違和感がありましたが、アプローチ、バンカーでのプレッシャーのなさは圧倒的。インパクトゾーンのボールを過ぎた先がすごくよくて、これまでは腕の力やヘッドの重さでズバーンと振り切る感じがあったんですが、体の回転だけで振っていけばボールの先を切るようにヘッドが進んでくれて抵抗を感じない。
増田 「抜けがいい」ってやつですね。
武井 はい。スパーンとヘッドが抜けていったあとに、ボールがズンと後追いで出てくる新しい感覚なんですが、僕が嫌がる振り遅れ感や、それを嫌がって左に飛んでしまう球が出ない。余計なフィーリングを感じない、すごくいい意味でオートマチックな感じです。
武井のスイングや好みに合わせて、各部分を大まかに削っていく。346gほどあったヘッド(写真左上・左のヘッド)がふた回りは小さくなって300gに。もう少し仕上げたらいったん組んで、今後は武井が打ってみての結果やリクエストに応える調整を行なう。完成品やチューンナップの模様は、引き続きこのコーナーで報告予定
増田 それはいいですね。試打しているのを見て、繊細で頭がいいから、相当、考えて練習した。でも、考えすぎて苦手としているところがあるな、と感じました。ちょっといい加減さが必要かな、と。
武井 間違いない(笑)。打つ前もスイング中もいろいろ考えてしまうタイプでして。でも、このウエッジはスイングで気にしすぎる部分をクラブが解決してくれる気配がする。増田さんがおっしゃる「いい加減さ」と、いい意味で「鈍感になれる」感じがします。
増田 頭で考えすぎて、手先でやってしまうことがなくなるはずです。
増田さんのウエッジはヘッドが「スパーン」と抜けてボールがあとから「ズン!」と出てくる
武井 ただ、今使っているアイアンとのつながりが気になるところですが・・・・・・
増田 ジャンボさんも王道のマッスルバックのアイアンを使っているときも、ウエッジはデカめのグースでしたよ。ドライバーとアイアンとウエッジは別モノと考えていいと思います。
武井 たしかにそうですね。遠い距離からは横の曲がりを気にしないですむ安定感があって、グリーンに近づけば近づくほど楽になりそうな気がしているので、コースで打ってみたいです。今、増田さんとは僕の1勝0敗なんで、そのウエッジでリベンジマッチもしましょう!
増田 ということは、あまりいいウエッジを作らないほうがいいですね(笑)
武井 そこはひとつ、スペシャルな1本をよろしくお願いします!(笑)
増田雄二
●ますだ・ゆうじ/1962年生まれ、熊本県出身。前人未踏の113勝をあげたジャンボ尾崎のプレーを用具面で支えたクラブデザイナー。2004年にマスダゴルフを設立。ツアープロから培ったノウハウやアイデアを具現化したクラブが、多くのアマチュアにも指示されているクラブ界の名工。
武井壮
●たけい・そう/スポーツ、芸能の枠を超えて活躍するマルチタレント。1月からテレビ東京系列で、新番組「武井壮のゴルフバッグ担いでください」(日曜朝9:30から)をオンエア中。YouTubeにて「ネイティブキャンプpresents武井壮の世界進出」を展開。
●オフィシャルサイトgogotakei.com/
●X(旧Twitter)アカウント@sosotakei
●インスタグラムアカウントsosotakei
写真=相田克己
協力=マスダゴルフ