20人のトラッド巧者が「手放せない」と語る20のアメトラ名品。それぞれの個人的なエピソードや、いまだからこそ感じる魅力を織り交ぜて紹介する。全20選のうち、今回はラストエピソードとなるNo.17〜20をお届け。

17…Brooks Brothers/ FUN SHIRT

服としての魅力はもちろん、その命名センスに脱帽。

クレイジーパターンの元祖とも称される[ファンシャツ]は70年代に誕生。もともとは縫製の練習用として、異なる生地がランダムに縫い合わされたシャツに着想を得て作られた。以来、ブランドの代表作のひとつとしてラインナップ。

「当時の副社長が命名したという[ファンシャツ]という名称に惹かれます。愛称的なネーミングがあるというのは、売れているアイテムに共通して言えることですからね。最初は、そういう“プロダクツとしての魅力”に投資する意味で購入したので、着る機会は少なかったんですが、ここ数年で“着る服”としての魅力も強く感じるようになりました。

色を拾いやすいので、ジーンズもスラックスもチノパンも、合わせるパンツは選ばないですね。最近の気分だと、バギーショーツやブーツに合わせたときの雰囲気が好きです」

Recommender:Jプレス&サンズ/黒野智也さん|「Jプレス&サンズ」の立ち上げ人。YouTubeチャンネルの運営、@blazer_snapプロジェクトなど、アイビーを啓蒙すべく日々活動中。

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18…L.L.Bean / BOAT AND TOTE

合わせるスタイルを選ばないトートバッグの完成形。

100年以上の歴史を誇る〈エル・エル・ビーン〉のなかでもアイコニックなアイテムとして世界中で愛される[ボートアンドトート]。坂田さんが愛用する1980年代に作られた同モデルは、ハンドルが現行モデルよりも短く、セルビッジ付きなのが特徴だ。

「ハンドルが短いと肩にかけることができず、一見使いにくいのですが、テーラードジャケットを着ることが多い自分にとっては手持ちの方がしっくりくるんです。また、染色が今ほどしっかりしておらず、ネイビーの色の抜け具合も絶妙。このアイテムを知った20代前半は、“道具”として捉えていましたが、改めてみると見た目としての完成度の高さも感じられます。

ジャケットスタイルに合わせてもいいし、Tシャツにデニムでもいい。自分の中ではカジュアルなトートバッグの中でいちばんの名品です」

Recommender:アーカイブ&スタイル/坂田真彦さん|名だたるブランドのデザイナーを経て、デザインスタジオ「アーカイブ&スタイル」を設立。服飾の造形の深さは業界随一だ。