ラッセル獲得はレッドブルの選択肢にあらず? マルコ博士、ジュニア昇格が最優先と明言「まずは角田裕毅に何ができるか見てみよう」

 レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーであるヘルムート・マルコは、レッドブル・レーシングで起用するドライバーは、外部からすでに実績のあるドライバーを獲得するのではなく、育成してきたドライバーの中から選ぶのが最優先であると語った。

 レッドブルのセルジオ・ペレスは、パフォーマンスが一向に上がらず、チームメイトのマックス・フェルスタッペンに大きく引き離されている。

 そればかりか、トップ4チームの中で今季唯一勝利を手にできていないドライバーであり、ランキングでもその8人のうちで最下位。そのため、レッドブルはコンストラクターズランキングでマクラーレンに抜かれ、同タイトル3連覇は危機的な状況である。

 そのためレッドブルは、ペレスと少なくとも2026年まで契約を結んでいるもののその契約期間を短縮し、早々にチームを放出するのではないかという噂も絶えない。

 そのペレスの後任として噂されているのが、現メルセデスのジョージ・ラッセルである。ラッセルはメルセデスとの契約が2025年末までしかないとされており、レッドブルとしては絶好の候補であると言える。

 しかしマルコ博士は、ラッセルの才能を賞賛しながらも、レッドブルが獲得に動くことはありえないと語った。

「ジョージ・ラッセルは、予選ではルイス・ハミルトンと同等か、あるいはそれ以上だ」

 マルコ博士はmotorsport.comの姉妹誌であるFormel1.deのインタビューにそう語った。

「しかし、ラッセルはメルセデス・ベンツの所属ドライバーだし、我々としては今は自分たちのジュニアドライバーに集中している」

「例えばウイリアムズのフランコ・コラピントが良い例だ。彼は経験が浅く、ジュニアシリーズではあまり成功したとは言えなかった。最高のチームに所属したことは一度もなかったんだ。でも彼は今、F1で信じられないほどのパフォーマンスを見せている」

「そして我々は今、自分たちのジュニア、あるいは角田裕毅に何ができるかを見てみるべきだ。彼もジュニアと言えるだろう。(アメリカGPからチームメイトとなるリアム)ローソンと比べてどうなのだろうか?」

 レッドブル陣営は、先日行なわれたシンガポールGPを最後にダニエル・リカルドとの契約を終了させ、次戦アメリカGPからローソンにF1を経験させることを選択した。そして今季残りの6戦で、角田と比較することを明言している。

 一方で角田としても、レッドブルの上層部に改めて自信の能力を見せつけるために、ローソンをに圧倒的な差をつける必要があるだろう。

 またこれ以外にも、昨年限りでFIA F2を卒業した岩佐歩夢が今年はスーパーフォーミュラで戦い、アイザック・ハジャーは今季のF2でタイトル争いを繰り広げている。さらにアービッド・リンドブラッドは、今季F3をランキング4位で終えた。

 前出のコラピントは、今季ハジャーとF2を共に戦った相手。F2ではハジャーがタイトル争いを繰り広げる一方、コラピントは1勝を挙げるのが精一杯と、立場が大きく違った。にもかかわらず、ウイリアムズはF1で走るチャンスを育成所属のコラピントに与え、彼もそれによく応えた。また、同じくF2に参戦中でフェラーリ育成のオリバー・ベアマンは、フェラーリとハースから1戦ずつF1に代役参戦し、いずれもポイントを手にした。このことは、若手ドライバーが十分な結果を出すことができる証拠だと、マルコ博士は考えている。

「(コラピントは)間違いなく将来有望なドライバーだ」

 そうマルコ博士は語った。

「バクーとシンガポールで見せたパフォーマンスは素晴らしかった。しかしこれはあくまで一例だ」

「ベアマンのことも挙げることができる。彼は、F2に参戦するジュニアたちが、F1でも印象に残る走りができる可能性を持っていることを示している。つまりこれまでとは逆なんだ。トップチームとしては、すでに3年とか5年の経験を持つドライバーが、必ずしも必要というわけではないのだ」