MotoGP第16戦日本GPのMoto3クラス予選、母国ファンの応援を力に5番手となった山中琉聖(MT Helmets – MSI)は、決勝レースに向けていい手応えを持っているようだ。
土曜日のモビリティリゾートもてぎは終始不安定な空模様。時折雨がパラつくコンディションが1日中続いた。Moto3クラスの予選Q2も、走行開始前に降雨を知らせるレッドクロスフラッグが振られるなど、難しいセッションとなった。
雨絡みの予選では、コンディションが良くなった時にタイムが出せるよう、長くコース上に留まるのがひとつのセオリー。ただ今回は雨が強くなく、各車がスリックタイヤでコースインした。
こうなると難しいのがピットインの判断だ。アタックが一段落したあと、いつも通りピットに入って新品タイヤに交換すれば、ピークパフォーマンス自体は上がるが、一度コースを離れたことで路面コンディションに関してはまた手探り状態となる。また、タイムを出す前に雨が強くなれば台無しだ。
一方でピットに入らずアタックを続ければ、コンディションに関しては情報が集まり、思い切ってアタックできるだろう。ただ、タイヤのグリップは当然落ちていく上、新品タイヤに履き替えたライダーに逆転されるリスクもある。
一通りのアタックが終わった段階で、多くのライダーが通常の予選と同じようにピットに戻ってタイヤを替えたが、同じタイヤで走り続けたライダーも数人おり、判断が分かれる結果となった。山中は同じタイヤでアタックのチャンスを多くすることを選んだ、少数派のひとりだった。
多くのライダーがピットにいる間に3番手タイムを記録した山中。セッション終盤に新品タイヤを投入したライダーがタイムを更新してくる中でも、大きくポジションを落とすことなく、最終的には5番手で予選を終えた。
「このコンディションだったのですごく難しかったです。新品タイヤを入れようか入れないかで迷っていました」
山中は予選後、そう振り返った。
「新品タイヤを入れても、雨が降ってきたら中古タイヤでもう1周走れる分をロスしてしまいます。自分は賭けに出たわけじゃないですけど中古タイヤで最後まで走ろうと決めて、少しずつペースアップできるかなと思って走っていました」
「その中でも5番手でしたし、ひとりのペースもすごく良かったので、それは明日に向けてポジティブだと思っています」
「金曜日はウエットコンディションであまりうまくいってなかったんですけど、今日の朝一(プラクティス2)でウエットもすごく成長できました。ピレリタイヤの雨のフィーリングっていうのも少しずつ掴めてきているので、決勝は雨でも晴れでも行くしかないと思いますし、晴れだったら自信を持って思いっきり行こうと思っています」
決勝に向けては、チームメイトでポールシッターとなったイヴァン・オルトラを警戒しながらも、ペースには自信を持っている様子。まずは表彰台を目指したいと意気込んだ。
「調子としてはすごい良いほうだと思います。まずは表彰台を目指して、チャンスがあれば優勝を狙いたいです。ペース的にはすごく良いので、まずはそのレースの流れをうまく読み取っていければと思います」
「チームメイトのオルトラがすごく良いです。ちょっとまだ分析しきれていないので、データや彼のペース、色んな人の予選ペースを見て、どういう人が危ないのか確認したいと思います」
Moto3クラスは週末最初の走行となったプラクティスがウエットコンディションとなり、山中はその中で14番手タイム。しかし母国ファンの応援を受けて、このままではいけないと発奮したようだ。
「自分のスポンサーの方も多く来ていただいているし、ファンの皆さんもすごい応援してくれています」
「金曜日の朝一の走行が雨で、自分が17~8番手ぐらいで調子悪かった時も自分の応援フラッグを振ってくれている人がいて、自分が手を振っていてもなんかすごく申し訳なく感じてしまって。応援されているのにこんなショボい走りしてていいのか、ださいなと思って頑張ろうと思いました」
ファンの応援を力に、予選で好位置を手にした山中。第7戦イタリアGP以来の表彰台を、母国で獲得できるか注目が集まる。