戸田奈津子「亡きロビン・ウィリアムズの思い出を語り合いました」ハードなイメージのジェフ・ブリッジスの素顔とは

字幕翻訳の第一人者・戸田奈津子さんは、学生時代から熱心に劇場通いをしてきた生粋の映画好き。彼女が愛してきたスターや監督の見るべき1本を、長場雄さんの作品付きで紹介する。

ハードなイメージはあるけれど…

私が親しくしていたロビン・ウィリアムズの死後、彼を偲ぶ会が行われたサンフランシスコでジェフにお会いしたことがあります。『フィッシャー・キング』(1991)で共演して以来、ロビンとはすごく仲がよかったみたい。

会の後に中華料理店に移動して親しい人だけで食事をした際に、ロビンがどんなにいい人だったか、彼の思い出を語り合ったものです。コワモテでハードなイメージがあるけれど、素顔はソフトで優しい人でした。

お父さんが俳優だったこともあって、子供の頃から俳優として活動しています。長いキャリアを持ち、『カリブの熱い夜』(1984)では、ドッキリするほどセクシーな役を演じていました。

私が大好きな作品は、実の兄ボー・ブリッジスと落ち目のピアニスト兄弟を演じた『恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』(1989)。女性シンガーとトリオを組んで再起を図る物語で、ジャズがたくさんちりばめられて、すごく雰囲気のある映画でした。

ミシェル・ファイファー演じるシンガーが赤いドレスを着てピアノの上で歌うシーンは、とてもオシャレで今も忘れられません。

『恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』(1989) The Fabulous Baker Boys 上映時間:1時間54分/アメリカ

落ち目のピアノデュオを組むフランク(ボー・ブリッジス)とジャック(ジェフ・ブリッジス)の兄弟は、女性ボーカリストを加えてトリオとして再出発することを決意。オーディションにやってきたスージー(ミシェル・ファイファー)を迎え、次第に人気を獲得していくが……。

ブリッジス兄弟が実際に兄弟を演じ、ミシェル・ファイファーが吹き替えなしで見事なボーカルを披露した。監督と脚本を務めたのは、『ハリー・ポッター』シリーズの脚本家として知られるスティーヴ・クローヴス。

ジェフ・ブリッジス

1949年12月4日生まれ、アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルス出身。父親は俳優のロイド・ブリッジス。母親は女優で詩人のドロシー・シンプソン、兄のボー・ブリッジスも俳優。1歳で俳優デビューを果たす。

『ラスト・ショー』(1971)『サンダーボルト』(1974)『ザ・コンテンダー』(2000)、『最後の追跡』(2016)でアカデミー助演男優賞、『スターマン/愛・宇宙はるかに』(1984)『トゥルー・グリッド』(2010)でアカデミー主演男優賞にノミネートされた。カントリーミュージシャンを演じた『クレイジー・ハート』(2009)でアカデミー主演男優賞を受賞している。

語り/戸田奈津子 アートワーク/長場雄 文/松山梢