小椋藍、母国レースでタイヤ戦略”ギャンブル”成功し2位、チャンピオンに王手。一定の満足も悔いも残す「勝たなきゃいけないレースだった」

 モビリティリゾートもてぎで行なわれたMotoGP第16戦日本GPのMoto2クラス決勝で、小椋藍(MT Helmets – MSI)は2位でフィニッシュ。ランキングでのリードを60ポイントまで拡大し、タイトル獲得に王手をかけた。

 小椋はあと一歩のところで勝利を逃したことを悔しいとしつつも、最後はチャンピオンシップを考え、無理に勝利を目指すことはしなかったと語った。

 自ら「ちょうどいい」と表現した9番グリッドからスタートした小椋は抜群のスタートを決め、一気に2番手に浮上。しかし雨が降り始めていたこともあり、赤旗中断で降り出しに戻されたが、スタートには自信を持っていたという。

「スタートが良いのは分かっていました。前にいたふたりが当たったこともあって、それがなければ2番手にはなれていなかったと思いますが、1〜2コーナーを抜けた後では『きたーっ!』と思いましたよ」

 そう小椋は語った。

「でも1周目に赤旗が出るのは分かっていたので、転倒したら意味ないなと思って、その後は全く攻めませんでした」

 そして赤旗中断からの再開時、小椋はスリックタイヤを履いていた。しかし他の多くのライダーはウエットタイヤを選択……小椋としては、当初はその選択についてはかなり心配になったと明かした。

「僕は結構ビビッてましたよ。チームからスリックと言われたのに、ガルシア(チームメイトのセルジオ・ガルシア)のタイヤウォーマーが外れたらウエット履いていたので、びっくりしました。しかもコースに出ていったら、みんなウエットだったんで、おおっ!となったんです」

「流石に心配にはなりましたよ。でも0か100か、どっちかになったなと思いました。でも、何人かはスリックタイヤを履いているライダーがいたんで、彼らには『ありがとう』と思いましたよ。『君たちを信じる!』とね」

 ただ結果的には、小椋の選択が大成功。スリックタイヤを選んだのは、チーフメカニックのノーマン・ランクの意見だったようだ。

「どっちが正解か、まったく分からなかったんです。なので、チームの中で一番自信を持っていた人を信じました。そしたらこっち(スリック)だと」

「決定はいつも、僕とチーフメカニックのノーマン(ランク)で決めます。で、彼が今回はスリックを推してくれたんです」

「サイティングラップでは祈るしかありませんでした。グランドスタンドから遠い方が雨が降っていたので……そこで全てが決まると思っていました。でも、あんまり降っておらず、大丈夫そうだと思いました。しかも止んでいく方向だったので、ありがとうという感じでした」

「ウォームアップでも、ブーツで路面を擦ってみましたが、滑るような感じはなかったです。なので、雨が降り止めばその瞬間に攻めていけると思っていました。グリッドでも、1周目だけ抑えて走れば、とりあえず大丈夫だなと思いました」

 レースはまさにその通りとなった。再スタート直後に小椋は一時ポジションを落としたものの、その後は次々とライバルをオーバーテイクし首位に浮上。ただ小椋は、途中でまた雨脚が強まったら、ウエットタイヤ勢に逆転される可能性があったため、差を広げるように務めたという。

「最初はリスクを負うことができないんですけど、また雨が降ってきたら後ろが来てしまうので、できるだけ差を広げておかなければいけないなと思っていました。だから、残り4周までは怖かったですよ。雨脚が強かったら、スリック勢はもう終わりなんで」

 ただレース終盤には、マヌエル・ゴンザレス(QJMOTOR Gresini Moto2)が急接近し、オーバーテイクを許してしまう。しかし小椋は、タイトル争いのことを考えて無理に追いかけることはしなかったという。

「それまでは音もしなかったし、近くに(他のマシンは)いないのかなと思いました。3.5秒差くらいだったと思います。でもそれがいきなり1.9秒くらいになりました。そこからは、2位も受け入れるしかないかなと思いました」

「2位でいいと思ってたわけではないですよ。でも、考えるのは抜かれた後でいいと思っていました。それでも、一旦抜かれることに対する嫌という気持ちはなかったです」

 結局小椋はゴンザレスを抜き返すことはできず2位でフィニッシュ。この結果については悔しがった。

「優勝しなきゃいけないレースだったと思いますよ」

「最後は、くそーって気持ちの、ストレス解消のウイリーです。じっとしてられなかったんです」