今季限りでMotoGPフル参戦を終える中上貴晶(LCRホンダ)は、母国レースのMotoGP日本GP決勝を13位フィニッシュ。特別なレースとなったと語った。
中上は金曜日のプラクティスで予選Q2直接進出を惜しくも逃す12番手。予選に向けて期待を感じさせるパフォーマンスだったが、予選ではアタックをまとめられず、スプリント&決勝を21番グリッドからスタートすることになった。
さらにスプリントでは、チームメイトのヨハン・ザルコと接触して転倒。なんとかピットに戻ったもののリタイアとなってしまった。
それだけに、決勝に向けては良いレースがしたいという気持ちが強くあったことだろう。今季限りでMotoGPへのレギュラー参戦を終了させることが決まっている中上にとっては、今回が母国でのとりあえず最後のグランプリということでもあり、そう思うのはなおさらだ。そんな気持ちがタイヤ選択にも表れた。中上は他の全車がフロントにハードタイヤ、リヤにミディアムタイヤを選ぶ中、唯一リヤにソフトタイヤを選択した。
そして決勝のオープニングラップを17番手で終えた中上は、他車の転倒もあり7周目に入賞圏内の15番手に浮上。特に終盤はペースが良く、9位を争う集団に追いついて13位でレースを終えた。
あともう数周あれば、さらに上位で終えられる可能性もあった中上だが、レースを本当に楽しんだと振り返った。
「最後まで全力を尽くしました。あともう2周あればとも思いますが、レースを本当に楽しみました」
「自分自身をプッシュして、ラストラップにバトルができることを願っていました。ジャック(ミラー/KTM)やファビオ(クアルタラロ/ヤマハ)、ザルコとね」
「今日は本当にストレスもなかったし、落ち着いていました。自分のことを誇りに思いますし、良いレースでした」
リヤタイヤにソフトを選んだ理由については、リスク覚悟でのチョイスだったと説明。これが功を奏し、終盤のレースペースに違いを生んでいたという。
「リヤタイヤにソフトを選んだのはリスキーでしたが、最終的にうまくマネジメント出来たと思います。今日のことは忘れないでしょうし、とてもエモーショナルな1日でした」
「今朝はミディアムタイヤでコースに出て、どれくらいグリップがあるかを確かめました。問題なかったですし、クエスチョンマークもなかったですが、21番グリッドと後方からのスタートで失うものはなかったので、リスクを負うことを選びました」
「レース終盤にグリップが落ちてポジションが下がるかもしれなかったですけど、それを踏まえてもやってみたかったんです。リスクのある選択でしたけど、最終的には良い決断でした」
「コンスタントに走ることが出来ましたし、レース終盤にはコンマ数秒速いペースで挽回できました。それが前を走る集団に追いつけた理由です」
レースをフィニッシュした後、クールダウンラップでこみ上げる感情を噛み締めた中上。涙がこぼれたかという質問には答えを濁したものの、ピットで出迎えるチームスタッフを見て感極まったという
「チェッカーを受けた後、クールダウンラップではとても素晴らしいフィーリングでした。どのコーナーでもファンがいるのが見えたし、『これが最後だ』と感じました」
「全力を尽くしましたし、僕にとってとても特別な日曜日でした」
「クールダウンラップでは泣いてなかったですけど、ピットに帰ってきてクルーのみんな、スタッフの皆を見たときはとても感情的になりましたね」
来季からはホンダの開発ライダーとしてMotoGPに関わっていく中上。今季はまだあと4戦残っているし、ワイルドカード参戦でまた彼の勇姿が見られることを期待してしまうが、見事なレースを見せた彼にひとまず”お疲れ様、ありがとう”と言葉を送りたい。