小林可夢偉を担当するイタリア人エンジニアに聞く、スーパーフォーミュラと元F1戦士の印象「彼と共に初優勝できたら最高だ」

 Kids com team KCMGからスーパーフォーミュラに参戦する小林可夢偉。そのトラックエンジニアは、今季開幕当初は田坂泰啓エンジニアが担当となっていたが、第2戦オートポリスからはイタリア人のコシモ・プルシアーノが加入し、新たに小林担当となっている。

 プルシアーノを推薦したのは、現役ドライバーでありチームのコーディネーターを務める関口雄飛だ。関口とプルシアーノは、2008年にインターナショナル・フォーミュラ・マスターズで共に仕事をした経験があった。

 今季のスーパーフォーミュラでは、唯一の外国人トラックエンジニアであるプルシアーノ。スイスに拠点を置く彼は、スーパーフォーミュラのレースの度に日本を訪れている。

「正直、日本で過ごす一週間はいつも楽しいんだ。チームの雰囲気も良い」

 プルシアーノはmotorsport.comにそう語る。

「日本人はとても閉鎖的だったりすると聞いていたけど、今のところそんなことはない。ドライバーとチームメンバーの間での言葉の壁もそれほど大きくない」

「エンジニアとのやり取りでは、可夢偉が重要なことを聞き漏らさないよう間に入って通訳してくれるし、メカニックとの間ではチームマネージャーが通訳してくれる。ただ時間が経てば経つほど、基本的な英語でのコミュニケーションは楽になっていく。こちらのナンバーワンメカニックは英語を大体理解しているので、その点でも状況は良くなっている」

 プルシアーノは、最近こそGTワールドチャレンジやDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)などにも関わっているが、これまでは主にシングルシーターのカテゴリー、特にF3やGP2/F2で多くの時間を過ごしてきた。スーパーフォーミュラの技術レベルは、自身がかつてGP2で経験したものと比べてどうなのかと尋ねると、現在はスーパーフォーミュラのダンパーが共通化されたこともあり、ほぼ同じ水準だと評価した。

「技術的なレベルはF2とほぼ同じだと思う。特に今年はダンパーが変わったからね」

「我々がやっていることもF2とかなり似ている」

「エンジンメーカーが複数あることを除けば、最大の違いはタイヤの機能の仕方だろうか。(スーパーフォーミュラで供給される)ヨコハマタイヤは、(F1やF2で供給される)ピレリタイヤにもっと似ていると思っていたが、実際体験してみると(ピレリよりも)垂直荷重に耐えられない」

 これまでクリスチャン・クリエン、ミッチ・エバンス、サム・バードなど、世界の舞台で活躍してきたドライバーと共に仕事をしてきたプルシアーノ。元F1ドライバーである小林については、そのフィードバックの優秀さから非常に高く評価しているという。

「これほど有名なドライバーなのに、可夢偉はとても接しやすくて、コミュニケーションも良好だ」

「彼は走行中にマシンの状態を正確に感じ取ることができ、フィードバックは素晴らしい。ある意味エンジニアにとってはやりやすい存在で、我々が何をすべきか導いてくれる」

「彼は無線でも非常に落ち着いていて、声を荒げることもない。だからマシンに乗っている時もそうでない時もコミュニケーションが取りやすいんだ。うまくいっていない時でも、彼は冷静だ」

 小林の今季ベストリザルトは7月の富士戦での8位。同レースではフロントウイングのダメージ、そしてピット作業などでチャンスを逸したとプルシアーノは感じているが、10月に控えているダブルヘッダーの舞台も富士であり、リベンジの機会は用意されている。

「簡単なことではないが、富士でのパフォーマンスをしっかり確認できればと思っている」とプルシアーノは言う。

「可夢偉はいつも自信に満ち溢れている。どうなるだろうね」

「彼と共に初優勝を成し遂げられたら最高だ。達成できることを祈っているよ」