“害獣”アライグマが東京23区内でも急増中! 指を食いちぎる凶暴さ、感染症の恐れも…「繁殖力が強く家の屋根裏に棲みついてしまう」被害総額は4億円超

農作物を荒らす「害獣」とされるアライグマが増え続けている。畑が広がる農業地帯から都市部へも進出し、東京23区内での捕獲数も急拡大している。アライグマは繁殖力が強いため、獲っても獲っても追いつかない状況になってきた。

強い繁殖力ゆえに増え続ける捕獲数

自然界では北米から中米にかけて棲息するアライグマは、胴の長さが最大で約60センチ、体重は最大10キロ程度。

雑食性で、国立環境研究所によれば、冷帯湿潤気候からサバナ気候、熱帯モンスーン気候まで、さまざまな環境で生き抜くことができる。毎年1~3月に交尾し、4~6月に出産を迎え、一度に3~6頭が生まれてくる。

日本における野生化は、1962年に愛知県犬山市の動物園から12頭が集団脱走したのが最初ではないかとみられている。

その後、アニメ「あらいぐまラスカル」の人気もあって1970代後半に飼育ブームが起きると、これが災いして各地で飼えなくなった人が山に捨て、自然環境下での定着が始まったらしい。

アライグマは畑の作物を食い荒らすため、鳥獣保護法上の狩猟獣に指定されているだけでなく、外来生物法により「特定外来生物」にも指定されている。しかし、いくら捕獲しても繁殖数が上回る実態がある。

環境省によると、全国の捕獲数は2000年度に797頭だったのが、2010年度には24810頭に。さらに10年後の2020年度には96049頭と増え続けている。農林水産省の集計では、2022年度の農産物の被害額は4億5600万円にものぼる。

農作物の被害を無視できなくなった自治体が対策を強化する中で捕獲数が増えたという事情はあるが、対策を強めてもその繁殖力の強さには追いつかないようだ。

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「一晩でブドウを40~50房も…」

「うちは一晩でブドウを40~50房、食べられたことがありました。あんまり被害が大きいので、電気が流れる柵を周辺に設置したんですけど、それでも隙間を見つけてうまくハウスの中に入ってくるんです」

そう話すのは、茨城県坂東市に住む巨峰農家の70代の女性だ。野菜や果物の畑が広がる坂東市でも、市民への箱罠の貸し出しを始めた2011年度には21頭だった捕獲数が、昨年度は745頭捕まり、今年も9月1日時点で412頭と、前年を上回るペースになっている。

現在、希望する市民に200弱の箱罠を常時貸しており、捕まったと連絡が来れば、委託を受けた猟友会の会員が平日に回収して回る。

その一人であるAさん(74)の回収作業に同行させてもらった。月曜日、定められた午前9時までに市の農業政策課に回収依頼が来たのは4件。「月曜日は土日に罠に入った分も集めるからふつう7件くらいはありますが、今日は少ないほうですね。多いときは15、6件もあります」とAさんは話す。

「アライグマはなんでも食べます。トマト、キュウリ、スイカ、ブドウ、トウモロコシ、メダカ、金魚…。でもネギやキャベツのような野菜はあまり食べないかな。果物が好きですね。

カエルやザリガニも好物で田んぼにも入ってきます。特に収穫直前の熟した作物がよくやられる。おいしい時期をよく知ってるんでしょうけど、その分、農家は痛いでしょうね」(Aさん)