「ガンダム」シリーズには、名前に「ガンダム」とついても、見た目がガンダムでも、それでもやはりガンダムタイプとは言えないモビルスーツが登場しています。顔がガンダムならガンダムなのでしょうか、事例を見ていきましょう。
ヘイズルの予備機を改修した2号機。「HGUC 1/144 ガンダムTR-1 ヘイズル2号機」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ
【画像】これでガンダムやないってウソやん! こちらがそのガンダムっぽい「ムーンガンダム」と「なんとかムーン」っぽいガンダムです(4枚)
ガンダムは見た目が9割?
「ガンダム」シリーズの作品群にはこれまで、たくさんの「ガンダム」タイプの「モビルスーツ(MS)」が登場してきました。しかし、なかにはガンダムの見た目をしているのに、設定を考えるとガンダムではないようにも思えるMSも存在します。
見た目に反してガンダムではないMSでよくあるのが、異なる胴体にガンダムの頭部をすげ替えた機体です。メディアミックス企画『ADVANCE OF Z ティターンズの旗のもとに』に登場する「RX-121 ガンダムTR-1[ヘイズル]」もその一例で、それまでの戦いで「ガンダム」が数多くの戦果を挙げたことから、戦場で相手が受ける心理的影響の調査を目的としてガンダムタイプの頭部が採用されました。
その胴体に当時、ティターンズの最新鋭機だった「RGM-79Q ジム・クゥエル」を流用しているため、作品や資料によっては「ガンダム」ではなく「ジム」系列として扱われることもあります。
曽野由大先生のマンガ作品『機動戦士ガンダム カタナ』(KADOKAWA)に登場する「RGM-79FC ストライカー・カスタム」も、ガンダムの頭部が与える心理的な効果を狙った機体で、頭部以外は「RGM-79FP ジム・ストライカー改」とほぼ同仕様です。そのため、見た目はガンダムであるものの型式番号を考えるとジムの系列になります。
機体の構成を問題にするならば、虎哉孝征先生のマンガ『機動戦士ムーンガンダム』(KADOKAWA)に登場する「AMS-123X-X ムーンガンダム」も、ガンダムではないと考えられるMSです。
同機は『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』に登場した「シャア・アズナブル」の乗機「MSN-04 サザビー」のプロトタイプである「AMS-123X バルギル」の機体の一部を、流れ着いた「MRX-013-3 サイコ・ガンダムMk-IV G・ドアーズ」の部品を使って修復したMSです。型式番号もバルギルを継いでいるため、出自や特徴を鑑みればガンダムではないMSだといえます。
ただ作中では見た目からガンダムと呼ばれ、ボディーカラーもガンダムをイメージしたトリコロールに塗り直されています。同機もまた設計を基準にするか、見た目を基準にするかでガンダムとするか否かの判断が分かれるかもしれません。
「RX-78-2 ガンダム」に見えるけど…? 『機動戦士ガンダム サンダーボルト』第16巻 原案:矢立肇、富野由悠季/作画:太田垣康男(小学館)
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見た目はガンダム、中身はザク
機体の本質的な部分でいえば、マンガ『機動戦士ガンダム サンダーボルト』(原案:矢立肇、富野由悠季/作画:太田垣康男/小学館)に登場する「パーフェクト・ガンダム(サンダーボルト版)」も、名前にガンダムを冠しているものの、まったく違う出自を持つ機体です。
同機は『機動戦士ガンダム』の作中で「アムロ・レイ」が乗った「RX-78-2 ガンダム」をアレンジした見た目をしていますが、脚部や腰回りにジオン軍のMS「ザク」を思わせる動力パイプが見えています。なぜなら正体が「サイコ・ザクマークII」の骨格に「フルアーマー・ガンダム(サンダーボルト版)」の外装を施したもので、ガンダムではなくザクの系譜を持つMSだからです。
素体がガンダムでありながら、異なる外見を持つ『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』の「ガーベラ・テトラ」や、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』の『ガンダムグシオン』と似た出自でも、パーフェクト・ガンダムの場合は正反対のような機体だといえます。
同機をガンダムに偽装した目的は、地球連邦軍の宇宙要塞「ルナツー」に潜入するためであり、ガンダムタイプに見える外装が意味を持ちます。また『サンダーボルト』でも地球連邦軍が、ガンダムの影響力を狙ってジムの頭部をガンダムタイプに変更した量産機「RGM-79/GH ガンダム・ヘッド」などを運用しています。ここでも、異なる系譜を持っていても、見た目をガンダムに寄せることの効果がうかがえます。
振り返ってみると、設定上はガンダムではないとされる機体でも、ガンダムといえる要素と否定する要素をあわせ持っていることに驚かされます。その理由には、ガンダムの象徴としての存在感と影響力の大きさがあるのかもしれません。