友達だと足もと、恋愛対象だと顔と胸元を見る / Credit: Unsplash

なんだか最近あの人と良く目が合うな。

そんなことから相手の好意を感じる事があります。

しかし例え目が合わなくても、相手の視線が自分のどこへ向いているかで好意を判断できるかもしれません。

米カンザス大学のオムリ・ギラート氏(Omri Gillath)らの研究チームは、視線で相手への恋愛感情の有無を判断できるのかを調べています。

彼らは参加者に異性の全身を写した画像を観察、そして友人あるいは異性目線からの魅力度を評価してもらい、その時の視線の動きを記録しました。

実験の結果、男女ともに「この人と付き合いたい」と考えた人は、相手の頭や胸などの身体の上部へ注目するのに対し、「この人の友人になりたい」と思った場合は相手の足もとなど下半身に視線を向ける傾向があったのです。

この結果は、他者にどんな役割を求めているかによって、人は異なる観察方法を取っている可能性を示唆しています

研究の詳細は、学術誌「Archives of Sexual Behavior」にて2017年7月6日に掲載されました。

目次

相手の目線から好意を見抜くことはできるのかアイコンタクトで互いの関心度は高まるのか

相手の目線から好意を見抜くことはできるのか


相手の目線から好意を見抜くことはできるのか / Credit: Unsplash

読者の皆さんは相手が自分に気があるかを判断する方法を知っていますか。

視線によって相手からの好意の有無を判断する人もいるのではないでしょうか。

目がよく合うから好かれているに違いない、一方で全く目が合わないから嫌われているなど、果たしてこの方法は正しいのでしょうか。

「Archives of Sexual Behavior」に投稿された、米カンザス大学のオムリ・ギラート氏(Omri Gillath)らの研究チームは、視線で相手への恋愛感情の有無を判断できるのかを調べています。

実験には大学生105名が参加しました。

参加者は眼球運動をトラッキングする機械を装着したうえで、異性の全身を写した画像を10枚ずつ観察し、友人目線あるいは異性目線からの魅力度を評価してもらっています。

具体的には友人目線であれば「この人と友人になれるか」や「友人としてどれくらい深い中になれるか」と考えながら評価を行うための観察を行っています。

分析では友人・異性として魅力度を評価する際の視線が、身体のどの場所に注意が向きやすいかを調べました。

実験の結果、男女ともに「この人と付き合いたい」と考えた人は、相手の頭や胸などの身体の上部をよく見る傾向が確認されました。


実験の結果をヒートマップで示した。 / Credit: Gillath et al., (2017),

一方で「この人の友人になりたい」と考えていた場合は相手の足もとなど下半身に視線を向ける傾向がありました。

これは下半身に視線を向けるようになったというよりも上半身への関心が薄れ、下半身にも観察の時間が比較的多くの時間が割かれた可能性が考えられます。

また胸やお尻、腰、太腿などの身体の中心部への視線が多い人は、相手に恋愛・友情の両側面において関心を向けていたことも分かっています。

相手の顔を見る傾向は過去の研究でも多く報告されており、また男性が女性を見るときの特徴として相手の胸や腰に目が行く傾向があることは分かっていました。

研究チームは「他者にどんな役割を求めているかによって、人は異なる観察方法を取っている」と述べています。

もしかすると自分に対する相手の視線が上半身に集まっている場合には恋愛対象として、そうでない場合は恋愛対象外として認識していると考えることができるかもしれません。

しかしなぜ友人・恋愛対象としての目線で違いが生じるのでしょうか。

進化の観点から考えると、恋愛対象としての相手の魅力度を評価する際に優秀な子孫の残す可能性が高い、健康的で知能が高い個体を選ぶメカニズムに基づいて観察を行っている可能性が考えられます。

たとえば女性であればウエストのくびれやバストの大きさが安全な妊娠の目安になり、男性であれば肩回りの筋肉の多さが健康のシグナルとして機能し、異性から魅力度が高く評価されることが分かっています。

これらの情報は友人の関係性であれば、恋愛対象を選別する場合と比較して、重要性が低くなり、特別注意を払う必要はありません。

それ故、相手との関係性で魅力度を判断する際の観察パターンに違いが生じたのでしょう。

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アイコンタクトで互いの関心度は高まるのか


目が合うことで互いの関心度は高まるのか / Credit: Unsplash

関係性で変わる視線パターンの結果から考えると、相手を恋愛対象として認識している場合、アイコンタクトが多くなる状況が考えられます。

このような目が合う現象は互いの関心度を高めるような作用があるのでしょうか。

「Comuters in Human Behavior」に投稿された、蘭ティルブルフ大学のエメリン・クローズ氏(Emmelyn Croes)らの研究では、恋愛関係の発展におけるアイコンタクトの役割を調べています。

彼らは男子大学生29名と女子大学生28名を集め、スピードデートを実施しました。

スピードデートとは、決められた時間内(5分)に男女が席を移動し、気に入った相手を見つけるシステムのことで、恋愛に関する心理学研究でもよく用いられます。

普通は対面で行われますが、実験者は対面のほかにビデオ通話条件(アイコンタクトなし)とビデオ通話条件(アイコンタクトあり)の3つの条件を設けています。

ビデオ通話のアイコンタクトなし条件では、画面上の相手の顔を見ると目線がカメラ目線にならない仕様になっており、アイコンタクトあり条件では、The Eye-Catcherというデバイスで参加者の視線をトラッキングし、画面を見ている時は相手と目が合っている感覚を作り出しました。

そしてスピードデート後に恋愛対象として相手をどう感じているのかを評価してもらっています。

分析ではスピードデートでの自己開示の回数、相手の情報を引き出す質問の数、親密さ、相手に対する恋愛対象としての評価が対面、アイコンタクトの有無でどう変わるのかを調べました。

実験の結果、アイコンタクトありのビデオ通話条件は、アイコンタクトなしのビデオ通話条件と比較して、自分の情報を相手に伝える自己開示が増加していました。

これはアイコンタクトがあると、相手の自分に対する興味に確信が持て、自発的に自分のことを話しやすくなっている可能性があります。


実験の結果を改変。 / Credit: Groes et al., (2020).

一方でアイコンタクトなしのビデオ通話条件では、相手の情報を聞く行動が増えていました。つまり目が合わないと相手がどういう人かうまく判断できなくなる可能性があります。

しかしアイコンタクトが多いからといって、相手に対する恋愛感情が高まる現象は確認されませんでした。

研究チームは「会話でのアイコンタクトが多ければ多いほど相手への好意を非言語的に表現できると考えられる。そのためアイコンタクトは初対面の相手が自分をどう思っているかという問題の不確実性を減らすことに貢献している可能性がある」と述べています。

つまり目が合うことは直接的には恋愛感情を伝えているわけではありませんが、相手の自己開示を引き出し、親密な関係を築くことを助けていると言えるでしょう。

相手が自分をどう思っているか? は誰もがコミュニケーションの際に気にしている問題です。視線はそうした不安を解消する助けになる可能性があり、また視線をうまく使うことで非言語的に相手に気持ちを伝えることもできるかもしれません。

参考文献

When sizing up potential friends and mates, the eyes of men and women move differently
https://www.sciencedaily.com/releases/2017/07/170718143525.htm

Men look for good bodies in short-term mates, pretty faces in long-term mates
https://www.sciencedaily.com/releases/2010/09/100925105837.htm

The Romantic Power of Eye Contact
https://www.psychologytoday.com/intl/blog/why-bad-looks-good/202110/the-romantic-power-eye-contact

Are You More Than Friends? Here’s One Way to Tell
https://www.psychologytoday.com/us/blog/meet-catch-and-keep/201802/are-you-more-friends-heres-one-way-tell

元論文

Eye Movements When Looking at Potential Friends and Romantic Partners
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28685177/

More than just a pretty face: men’s priority shifts toward bodily attractiveness in short-term versus long-term mating contexts
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1090513810000425

ライター

AK: 大阪府生まれ。大学院では実験心理学を専攻し、錯視の研究をしていました。海外の心理学・脳科学の論文を読むのが好きで、本サイトでは心理学の記事を投稿していきます。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。