アドビ、コンテンツの保護・認証支援アプリ「Content Authenticity」を発表。デジタルコンテンツに「成分表示ラベル」

アドビは、コンテンツクレデンシャルによってクリエイターが作品を保護し、認証表示を受けられるようにする新しい無料Webアプリケーション「Adobe Content Authenticity」を発表した。

Adobe Content Authenticity webアプリの無料パブリックベータ版は、2024年11月〜2025年2月末の四半期中に提供開始予定。Google Chrome用Content Authenticity拡張機能のベータ版はすでに利用可能できる。

コンテンツクレデンシャルは、デジタルコンテンツの「成分表示ラベル」のようなもので、誰でも自身の作品に付与できる安全なメタデータであり、作成者の情報と、それがどのように作成され編集されたかについての背景情報を提供する。


2019年にContent Authenticity Initiative(コンテンツ認証イニシアチブ)を設立以来、アドビはデジタルコンテンツの透明性を確保するための業界標準として、コンテンツクレデンシャルの普及を推進しており、現在では3,700を超える企業や組織に支持されている。誤情報やAI生成されたディープフェイクへの懸念が高まる中、コンテンツクレデンシャルは制作者にとって重要なツールとなっており、デジタルコンテンツに関する重要な情報を提供できるようにすることで、消費者が信頼性を見極める手助けをしている。

アドビはAdobe Content Authenticityで、コンテンツクレデンシャルの可能性を最大限に引き出し、クリエイターが自身の作品を悪用や虚偽表示から保護し、より信頼性と透明性の高いデジタルエコシステムを構築できるよう支援する。

アドビは、クリエイターが自分自身を表現し、ストーリーを語れるようにするツールを責任をもって開発し、同時にクリエイターの懸念への対処に取り組んでいる。

アドビがクリエイターを対象に実施した、生成AIに関する最新の意識調査では、作品の無断共有や誤った帰属に対する懸念が高まる中、クリエイターの91%が作品に認証情報を付与できる信頼性の高い方法を求めている。

さらに、クリエイターの半数以上(56%)が自身のコンテンツが無断で生成AIモデルのトレーニングに使用されることを懸念していると回答しているという。

アドビのデザインおよび新興製品担当エグゼクティブ バイスプレジデント兼CSO(最高戦略責任者)であるスコット・ベルスキー氏は次のようにコメントしている。

ベルスキー氏:アドビは、クリエイターのニーズやメリットを重視した責任あるイノベーションに取り組んでいます。Adobe Content Authenticityは、クリエイターが自身の作品を保護し、認証を受けることを支援する強力で新しいWebアプリケーションです。

私たちは、クリエイターが作品にコンテンツクレデンシャルを無料かつ手軽に付与できるシンプルな方法を提供することで、作品の真正性を維持できるようにすると同時に、オンラインにおける新たな透明性と信頼の時代を実現することに貢献します。このWebアプリケーションは、クリエイターに利益をもたらすだけでなく、消費者がデジタルエコシステムをより明確に把握する上でも役立ちます。

クリエイターがデジタル作品にコンテンツクレデンシャルを無料かつ手軽に付与する方法

Adobe Content Authenticityは、クリエイターとの密接なコラボレーションのもと、1:1のヒアリングセッション、グループディスカッション、ユーザー体験テストなど、あらゆる段階で彼らのフィードバックを取り入れ、クリエイターによって、クリエイターのために構築されたWebアプリとなるように開発された。

コンテンツクレデンシャルはすでに、Adobe PhotoshopやAdobe Lightroom、Adobe FireflyなどのAdobe Creative Cloudアプリケーションでサポートされている。Adobe Content Authenticityは、これらのAdobe Creative Cloudアプリやそのほかのアプリと統合され、コンテンツクレデンシャルの設定を管理する一元化されたハブとして機能する。

Adobe Content Authenticityの主な利点には、以下の通り。

コンテンツを保護し帰属情報の認証表示を受けるために、手軽にコンテンツクレデンシャルを付与

クリエイターはこのWebアプリでコンテンツクレデンシャルを一括で簡単に付与し、画像、オーディオ、ビデオファイルなどのデジタル作品に署名できる。さらにクリエイターは、コンテンツクレデンシャルに含まれる情報(氏名、Webサイト、SNSアカウントなど)をカスタムでき、アドビはさらに多くのカスタマイズオプションを提供していく予定だという。

これらの情報を付与することで、クリエイターは帰属情報の認証表示によって、無断使用や誤った情報から作品を保護し、信頼を確保することができる。


生成AIによるコンテンツのトレーニングと使用に関する許諾設定

アドビは、クリエイティブな生成AIモデルのファミリーであるAdobe Fireflyを使用許可を得たコンテンツのみでトレーニングしており、ユーザーのコンテンツでトレーニングは不要。

しかし、市場に出回っている生成AIモデルのすべてがこのアプローチに従っているわけではない。Adobe Content Authenticityの「Generative AI Training and Usage Preference(生成AIのトレーニングと使用に関する設定)」機能により、クリエイターはコンテンツクレデンシャルを通じ、自身の作品が他の生成AIモデルに使用され、トレーニングに用いられたくない旨を表明できる。

アドビは、この設定が業界全体に採用されるよう積極的に取り組んでおり、これにより、対応する他の生成AIモデルがクリエイターの作品をトレーニングに使用しないよう目指している。生成AIのオプトアウトアグリゲーターであるSpawningは、この設定を順守することをコミットしている。

また、この設定が適用されたコンテンツは、Adobe Stockへの投稿はされない。Adobe FireflyはAdobe Stockのライセンスを受けたコンテンツでトレーニングされており、この設定によって、アドビはコンテンツの使用に関するクリエイターの選択を尊重している。


付与されたコンテンツクレデンシャルを簡単に表示および確認

現在、一部のSNSプラットフォームやWebサイトでは、投稿されたコンテンツにコンテンツクレデンシャルのような来歴情報がオンラインで表示されず、消費者にとっての透明性が制限されている。

コンテンツクレデンシャルの普及に伴い、このギャップを埋めるため、アドビはGoogle Chrome用のContent Authenticity拡張機能と、Adobe Content Authenticity Webアプリ内の検証ツールをリリースし、コンテンツに関連付けられたコンテンツクレデンシャルの内容のすべてを復元して表示できるようにする。編集履歴がある場合は、その履歴も含まれる。


耐久性のあるコンテンツクレデンシャル

Adobe Content Authenticityで付与されたコンテンツクレデンシャルは、コンテンツのライフサイクル全体を通じてクリエイターの作品に安全に関連付けられた状態を維持し、来歴情報が削除されたり、コンテンツのスクリーンショットが撮影された場合でも復元できるようにしている。

これを実現するために、コンテンツクレデンシャルは、デジタル指紋、見えない電子透かし、暗号署名付きメタデータを組み合わせ、デジタルエコシステム全体でコンテンツクレデンシャルが損なわれず、検証可能な状態を維持できるようにする。