F1のパワーユニットの開発中止を決断するなど、激震が走っているルノー。同社の傘下であるアルピーヌF1チームは2026年から、他社製のパワーユニットを搭載する”カスタマーチーム”として、F1への参戦を続けるものとみられる。
かつてこのアルピーヌをチーム代表として牽引していたオットマー・サフナウアーは、同チームに在籍していた当時、当初約束されていたような権限が与えられることは一度もなかったと激白した。
サフナウアーは2022年のはじめ、マルチン・ブコウスキーの後任としてアルピーヌのチーム代表に就任した。その当初、F1チームの全ての部門に関する管理権限が与えられると約束されていたという。
しかしサフナウアーは加入直後に、その約束が事実ではないことに気付いたようだ。そして各部門が、直接ルノーの取締役会に報告を上げていたという。
「アルピーヌにはいくつかの問題があった。そのひとつは、私がチーム全体をコントロールしていなかったことだ。人事部は私に報告するのではなく、フランス(ルノー本社)に直接報告していた」
元F1キャスターのジェイク・ハンフリーのポッドキャストに出演したサフナウアーはそう語った。
「財務部門も私に報告を上げてこなかった。コミュニケーション部門も報告してこなかった。マーケティングやコマーシャルの部門も同等だ」
「それが問題になることは分かっていた。この仕事に就く前、全員が私に報告することになると言われていた。しかし実際にはそうではなかったんだ。なんとかできるんじゃないかと思っていたが、それがすぐに問題だと分かった」
アルピーヌは2023年に向け、育成ドライバーであり、2021年のF2チャンピオンであるオスカー・ピアストリをレギュラードライバーとして起用することを決めた。しかしアルピーヌはピアストリと有効な契約を結んでいなかったことが発覚。マクラーレンとの訴訟に発展したが、アルピーヌは敗訴してしまった。この頃、サフナウアーがチーム代表として全権を掌握していないことの問題が頂点に達したという。
サフナウアー代表曰く、ピアストリとの契約問題は自身のチーム加入以前に端を発していたにも関わらず、責任を全て負わされたという。
「契約はサインされていなかった。私は3月にチームに加入したが、そのことを知らなかった。彼らは書類を正しく提出せず、彼らとの契約は結ばれていなかった」
「その年(2021年)の11月に、2週間の猶予期間があったのに、それは実行されなかった。提出書類が間違っていたために、アルピーヌが敗訴したんだ」
「チームはプレスリリースを出し、そこには私の写真が掲載されていた。それは私とは何も関係ないモノだった。だって私は、当時はまだチームにいなかったんだからね」
「広報部門は、私の写真をリリースに載せることが、当時その仕事に従事していた人たちの無能さを打ち消すのに良い考えだと考えたのだろう」
「実際に写真を掲載した担当者は、フォースインディアで一緒に働いていた人だった。だから私は彼女のところに行って、『もっと良い方法があるだろう?』と言ったんだ。すると彼女は『すいません。でも私はこうするように言われたんです』と言ったんだ」
「でもそのことにより、アルピーヌの組織内には信頼できない人がいて、私を陥れようとしていることが、その時明らかになったんだ」
「彼らは私と一緒に働いてはいなかった。チームのパフォーマンスよりも自分の権力基盤を気にしてしまうと、そういうことをするんだ」
「かつてフォードでは『フォード・モーター・カンパニーはクルマを作っているわけではなく、キャリアを作っている』と言われていたことがある。今はもう、そうではないと思うけどね。でもつまりは、誰もが自分のキャリアを聞いするということなんだ」
「それはF1の例ではないけどね。でも、たとえばルノー・グループの人員がF1チームの責任者に就任した場合には、そういうことになってしまう可能性もある」
「コース上のパフォーマンスではなく、自分のキャリアを気にするようになるんだ。そうなってしまうと、誤った決断を下すことになる」