モータースポーツのオリンピック競技化は可能か? スーパーGT坂東代表に私見を聞く「道具の占める役割があまりにも大きい」

 モータースポーツが公式なオリンピック競技になる日は来るのか——。これはオリンピックイヤーになると度々議論されるテーマでもある。これについては国内外の様々なレース関係者が私見を述べているが、スーパーGTのプロモーターであるGTアソシエイション(GTA)の坂東正明代表にも意見を聞いた。

 100年以上の歴史を誇るオリンピックの中で、モータースポーツ競技が行なわれた例はないわけではないが、公式に正確な記録が残っているものはなく、事実上公式競技として採用されたことはないと言っても差し支えないだろう。そんな中で、モータースポーツをオリンピック競技とすることは可能かどうか、もしくは競技化すべきかどうかという議論は、意見が分かれている印象だ。

 オリンピック競技化に肯定的な意見としては、「モータースポーツを“スポーツ”として世界的に認識させられる」という業界全体を大局的に見た意見や、「いちドライバーとして国を代表して戦いたい」などの意見が聞かれる。一方でネックだと言えるのは、モータースポーツが機械を使った競技だという点だ。

 スポーツは程度の差こそあれど、球技をはじめとして何らかの“道具”を使うものが多い。しかしその中でもモータースポーツは、自動車という機械にそれぞれが乗って競技をするため、競技における“道具”の占める割合が大きいと考える者も多い。仮に車両を全車統一のワンメイクにしたとして、そのメンテナンスやセットアップは誰がどう行なうのか? 工業製品に避けられない個体差によるパフォーマンスの有利不利をどう受け入れるのか? など、公平・公正な競技実施に向けて課題となる点は多いだろう。

 坂東代表も、まさにそういった点を懸念していることから、現在ではモータースポーツのオリンピック競技化は難しいと考えているようだ。

 先月行なわれた第6戦SUGOでのGTA定例記者会見の中で、モータースポーツのオリンピック的な立ち位置で国別対抗戦を開催する“FIAモータースポーツ・ゲームズ”のF4部門に森山冬星を派遣することが発表された。それにちなんで、モータースポーツのオリンピック競技化に関する意見を坂東代表に尋ねると、彼は次のように答えた。

「レーシングドライバーを“アスリート”と捉えることはできると思いますが、モータースポーツは道具を使っている中で、あまりにも道具が占める割合が大きくなってしまいます」

「道具の良し悪しもありますし、そこには(サプライヤーとして)企業がついているという状態です。その中でイコールを見出してオリンピックをやるというのはなかなか……クオリティの高い状態でやるのなら尚更です」

「自分も昔は(モータースポーツによるオリンピック競技が)できるかなと思っていました。ただ、こうやって(GTA代表として)15年ほどやってきた中で考えると、自分たちの作った規則の中で誰が速いかというイベントはできるけども、それが諸外国から選手が集まってのものになるかと言われると、なかなか難しいと思います」

 それに補足する形で坂東代表は、以前から野望として口にしているスーパーGT車両による“世界戦”の構想を語った。オリンピックやワールドカップのような世界戦実施は難しくとも、スーパーGTという枠組みの中でアジア圏の猛者が競い合うようなフォーマットを作ることが理想だという。

「ワールドカップのような競技を我々が作った規則でやるとなると、欧州の競合自動車メーカーとやっていくのがかなり難しいです」

「であれば、東南アジアでイコールの規則を作り、それぞれの国々でスーパーGTシリーズをやっていただき、そこから勝ち上がってきた者同士で戦う……ということはやれると思っているので、最近はそういったことを考えています」