人間での臨床試験も始まっている


人間での臨床試験も始まっている / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

今回の研究により、サイトカインの生産命令を含んだmRNAが、マウスのがんに対して非常に効果的であることが示されました。

サイトカインによる警報は非常に強力であり、新型コロナウイルスの感染では、過剰な警報が肺をボロボロにしてしまうことが報告されています(サイトカインストーム)。

腫瘍内部にサイトカインの生産命令(mRNA)を入れることで、サイトカインの攻撃力を腫瘍に向けることが可能になります。

なお現在、動物実験での有望な結果を受けて、人間を対象としたフェーズ1の臨床試験が開始されているとのこと。

中間報告によれば、mRNAの投与によって命にかかわるような副作用は生じていないとのこと。

(※フェーズ1は安全性の確認が目的)

また腫瘍に対する調査では、マウスに似たインターフェロンガンマとCD8+T細胞浸潤の増加が確認されたようです。

今後、全てのフェーズがクリアされ、mRNAによるがん治療が実現すれば、人類の死因の上位から、がんが消える日が来るかもしれません。

元論文

Local delivery of mRNA-encoding cytokines promotes antitumor immunity and tumor eradication across multiple preclinical tumor models
https://www.science.org/doi/10.1126/scitranslmed.abc7804

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。
大学で研究生活を送ること10年と少し。
小説家としての活動履歴あり。
専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。
日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。
夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。