ADHDの人が「先延ばし」をしてしまう理由とは?3つの改善法も / Credit: canva
年の初めは今までの悪習慣を断ち切り、新たなチャレンジをするのにいい機会です。
しかし、やろうやろうと思っていても、なかなか重い腰が上がらずに「先延ばし」してしまうことが多々あるはず。
先延ばしは誰もが経験していることですが、中でも特に「ADHD(注意欠如・多動症)」を持つ人はその傾向が強いことで知られています。
では、どうしてADHDの人に先延ばしが起こりやすいのでしょうか?
ここではその理由や原因の説明に加え、ADHDの人でも先延ばしをなくすことのできる方法について見ていきます。
目次
なぜADHDの人に「先延ばし」が生じやすいのか?ADHD症状が現れる根本的な原因とは?先延ばしをしないための3つのヒント
なぜADHDの人に「先延ばし」が生じやすいのか?
なぜADHDの人に「先延ばし」が生じやすいのか? / Credit: canva
ADHD(注意欠如・多動症)は発達障害のひとつであり、集中力が持続しない「不注意」、落ち着きがない「多動性」、思いつくとすぐに行動してしまう「衝動性」などを特徴とします。
多くは12歳以前の小児期に発症しますが、成人期でもADHDと診断される人は多いです。
特に成人期では、多動性や衝動性は目立たなくなるものの、不注意の特性が強くなり、私生活での物忘れ、遅刻や仕事中のうっかりミス、作業時間の大幅なオーバーが増えます。
またADHDでは感情調節が難しい特性があり、好きな遊びや仕事には過度なまでに集中する一方で、興味のない作業には意欲が起きず、注意散漫になりやすい傾向があります。
こうしたADHDに典型的に見られる「不安定な集中力」や「感情調節の難しさ」が、目の前の作業に対する心理的な抵抗感を引き起こし、普通の人に比べて「先延ばし」が起こりやすくなっているのです。
先延ばしは「心理的なストレス」になる
先延ばしは「心理的なストレス」になる / Credit: canva
先延ばしには、精神的な負担を一時的に回避する利点がありますが、それが何度も続くとネガティブ気分や悪感情の増加、自尊心の低下を引き起こします。
例えば「今年から貯金するぞ」と目標設定したはいいものの、「まあ、年初めは何かと入り用だから来月からでいいか」と先延ばしにし、それがどんどん先送りにされていくと自己肯定感の低下を起こしやすいです。
また仕事上のタスクを先延ばしにしていると、自分だけではなく、職場仲間にもストレスを与えて、周りとの人間関係に問題を生じさせることがあります。
加えて、先延ばし癖が深刻な場合だと、長期的に精神的負担が蓄積していき、不安や抑うつ症状を発症することさえあります。
これは実際にADHDを持つ成人によく見られるケースです。
では、どうしてADHDの人では、先延ばしにつながる「不安定な集中力」や「感情調節の難しさ」が起こってしまうのでしょうか?
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ADHD症状が現れる根本的な原因とは?
ADHD症状が現れる根本的な原因とは? / Credit: canva
まず、ADHDの症状を起こす最も大きな原因は、脳の「実行機能」に関わる領域に支障が出ていることです。
実行機能とは、あるタスクを完遂するために必要な一連の脳機能であり、例えば「注意の持続」「時間の管理」「感情のコントロール」「ワーキングメモリ(作業記憶)」などを司どっています。
実行機能に障害が出ていると、ADHDに見られる「不安定な集中力」や「感情調節の難しさ」が起こりやすくなるのです。
反対に、実行機能が優れていると先延ばししなくなることが2021年の研究で示されました(Journal of Research in Personality, 2021)。
ここでは実行機能に関わる「背外側前頭前野(DL-PFC)」の灰白質の量が多く、また前頭葉との神経結合が多い被験者ほど、感情の自己コントロールや計画の立案性に優れ、先延ばしをしにくいことが判明しています。
他方で、DL-PFCと前頭葉の神経結合が少ない人ほど、注意散漫や集中力の不安定が見られ、先延ばしする傾向が強いことが分かりました。
ドーパミン分泌の不安定さ
また、ADHDの感情調節の難しさには「ドーパミンの機能障害」が関連しています。
ドーパミンは集中力や意欲を高める脳内神経伝達物質のひとつですが、ADHDではドーパミンの分泌が非常に不安定になっているのです。
すると、周囲から強制されるような宿題や作業に対してはドーパミンが出ないので、集中力を欠き、不注意や多動性の症状が出ます。
逆に自分の好きな作業をするときはドーパミンが出過ぎてしまい、声をかけても聞こえないなど、過度な集中力を発揮します。
ADHDでは、このドーパミン機能障害により、興味のない/嫌いなタスクへの心理的抵抗感が普通の人より強くなって、作業の開始を先延ばしにしてしまうのでしょう。
感情調節の困難はドーパミン分泌の不安定さにも起因 / Credit: canva
ここまで分かっているものの、現時点では、これらの脳機能障害を根本から治癒する方法や薬剤は存在しません。
ADHDの症状はひとつの個性として付き合っていくしかありませんが、それでも「先延ばしをできるだけなくす方法」なら存在します。
それを最後に見てみましょう。