出場停止となったケビン・マグヌッセンの代役として、ハースからF1アゼルバイジャンGPに出走したオリバー・ベアマン。彼は来季ハースでF1フル参戦デビューを果たす予定となっているが、その成熟度からチームには既に好印象を与えている。
ベアマンは今年のサウジアラビアGPで、虫垂炎となったカルロス・サインツJr.の代役としてフェラーリからF1デビューを果たすと7位に入賞。ハースに乗り換えて2度目の代役参戦となったアゼルバイジャンでも10位入賞を果たしてみせた。激しい中団争いの中でのプレッシャーにも、うまく対処することができていると言える。
そんなベアマンを、小松礼雄代表も高く評価している。ベアマンがF1での経験が乏しい中でこれだけの結果を残していることに驚いたかとmotorsport.comが尋ねると、小松代表はこう答えた。
「驚いてはいません」
「それはオリーを貶しているということではありません。彼がFP1に乗っていた時から良いものが見られていたので、予想通りだったということです」
「彼が最初に乗った(F1公式セッションに参加した)のはメキシコのFP1でしたが、彼の広い視野で物事を見る能力が印象的でした。いつ何をすべきかという自分の役割を理解していましたし、学習も早かったです」
「バクーではまた違った目標を立てていました。週末全体で走るというのは(フリー走行だけ走るのとは)考え方もまるっきり変わりますが、彼が何をやったか、どれだけ早く吸収したかという点では、メキシコで見たものが完全に再現されていました」
「確かに、バクーのFP3(プッシュラップでクラッシュ)は一歩後退する出来事だったと言えます。ただ彼がそれにどのように対処するのかは予測できませんでした」
「彼は気持ちを切り替えて集中し、金曜の調子を取り戻してQ1では良い走りを見せました。これは素晴らしかったですね」
「印象的でしたが、これは私が期待していたことでもありました」
また小松代表は、ベアマンがチームメイトのニコ・ヒュルケンベルグとポジションを入れ替えるように指示された際の成熟ぶりも賞賛した。
決勝レースのファーストスティントにおいて、ベアマンはチームのタイヤマネジメントに関する指示に従う形でゆっくりとしたペースで周回を重ねていたが、一方でヒュルケンベルグは速いペースで走りながらも予想外にタイヤを持たせることができていた。
「最初のスティントで我々がポジションのスワップを指示しないといけませんでしたが、その時彼は納得していない様子でした」と小松代表は言う。
「その理由は痛いほど理解できます。ただ、彼は納得していないながらも、それを実行に移しました」
「ニコを行かせないだとか、(譲るのを)1、2周遅らせるようなことはしませんでした。これも彼の成熟ぶりを表していますよね。素晴らしいです」
ベアマンがバクーで入賞を果たしたのは、レース終盤にサインツJr.とセルジオ・ペレス(レッドブル)がクラッシュした際の間隙をぬってヒュルケンベルグを追い抜いたからだ。
サインツJr.とペレスがクラッシュした時、事故現場を通過したヒュルケンベルグは破片を踏んだことに動揺してか、イエローフラッグ解除に気付いていなかった。ベアマンはその隙をついて、ルイス・ハミルトン(メルセデス)と共にヒュルケンベルグの前に立ったのだ。
小松代表は、これもベアマンの冷静さを示していると語った。
「もうひとつのポイントは、彼が不満や逆境の中にあっても、常に冷静でいるということです」
「レース終盤に大きなアクシデントが起きてイエローフラッグが出て、デブリが散乱しているような状況でも、彼は落ち着いていました。彼のマインドは『あ、ニコは気付いてないから前に出よう』という感じだったのです」