助産師のキャリア継続と産後ケアをマッチング、「ジョサンシーズ」が目指す「産みたいと思える」社会

退院後の「いちばん辛いとき」を支える

——実際にサービスを利用される方はどんな方が多いのでしょうか?

単発で少しずつ利用されるというよりも、長期的に決まった時間に利用される方が多いですね。朝の11時から夜の7時までを毎日といった利用方法です。こうした形で利用いただいているのも、単なるベビーシッターではなく、助産師という資格に価値を感じて信頼いただいているのかなと思います。

もちろんお預かりするだけではなく、ミルクの調整を一緒にしたり、赤ちゃんのお世話についてレクチャーしたりといった、ご家庭ごとのニーズに合わせたケアをしています。言葉としてはベビーシッターというのがわかりやすいため使用していますが、単なるシッティングの枠に留まらない包括的な産後ケアを提供しています。

——赤ちゃんの沐浴についてなど、パパへのレクチャーもしてくれるそうですね。

現状は結局、退院後にママがパパに育児のレクチャーをする必要がありますよね。実は、LINE相談のお悩みを集計すると、パパについてのことがいちばん多かったんです。パパにレクチャーをしてほしいというニーズは多いですね。核家族や共働きが当たり前の今、パパにもしっかりと育児に参加してもらうのは大前提となっています。育児のハードルを下げるために必要なのは、かかわる大人を増やすこと。LINE相談でもできるだけその地域に近い助産師をアサインするようにしていて、何かあったときに駆けつけられるような人たちをなるべく意識しています。

——孤独にさせないというのもありがたいですね。産院って退院してしまうとそれきりで、もう少し頼りたかったというママも多いように思います。

そうなんです。まさに産後2日で帰らされてしまい、育児の仕方が何もわからないから明日から来てくださいという方もいらっしゃいます。産院の先生からすれば、やはり安全に出産を終えることが最大の目標で、帰ってからのことは見えないところ。ですが、これだけ少子化が進んでいる今、実は産院にとっても、2人目出産の際は、また自分たちの病院に戻ってきてもらえるようにすることがメリットになるんですよね。ジョサンシーズと提携している代官山バースクリニックでは、産後半年まで連携することによって、体重や子どもの状態などのデータと専属の助産師によるケアを紐づけて、より充実した産後を過ごせるようなサービス設計をしています。

——すべての産院でそれをやってくれたら子どもを産みたいと思う人も増えそうですね。

少子化が急速に進行する中、現状を解決するためには、すでに出産・育児を経験したうえで第2子以降を希望する家庭への支援が不可欠です。第2子を諦める理由には、もちろん経済的な状況もあります。ですが、大きなハードルとして、1人目の出産・育児経験の大変さに影響されるというデータもあります。私たちにできるのは、「産後うつ」の予防と育児支援を通じて、家庭全体が安心して新しい生活に適応できる環境を整えること。親が安心して子育てに専念できる社会を実現し、誰もが産みたいと思ったときに、産んでも大丈夫と思える世界をつくりたいと思っています。