Apple Watch関連の取材活動で知己を得た東京都医師会理事の目々澤肇先生が、東京都医師会の定例記者会見でお話をされるというので聞きに行ってきた。取材日は10月8日、場所は東京都医師会館。先生は、Apple Watchのデータを医療機関に見せるのに最適な方法は、プリントアウトすることだという。なぜなのか?

Apple Watchは『気付きのツール』

Apple Watchでは多くのヘルスケア情報が得られる。そして、それは安全なカタチでiPhoneに蓄積されていく。アップルはヘルスケア分野に積極的に乗り出しているが、同時に非常に慎重で、大量のデータを取得しているにもかかわらず、医学的裏付けのない解析の提供は行わないようにしているようだ。たとえば、睡眠のデータも計測可能だが、それをもって『良い睡眠かどうか?』をアプリで判断したりはしない。ただ粛々とデータ蓄積し、提示するのみだ。これは、診断するとしたら『医療』のレベルでやるべきだと考えているからだろう。

目々澤先生も、あくまでApple Watchは『気付きのツール』であるとおっしゃっている。

しかし、だからこそ、医師はそのデータをちゃんと受け止めて、その気付きを『きちんとした医療機器の診断』に繋いでいくべきだという。

講演では、Apple Watchで計測したさまざまな人の心電図の波形を見せて下さったが、症状によって違うし、心房細動の出ている人が、アブレーションの治療を受ける前と、後のApple Watchでの心電図のデータも見せて下さった。ちゃんと、Apple Watchが身体の変異をチェックすることのできるツールであるという。だが、そのデータで診断するのではなく、別途医療機器で診断するための『気付き』を与えてくれるツールだということだ。

(広告の後にも続きます)

セキュリティが要求される病院ではデジタルデータは受け取りにくい

その、Apple Watchのデータの医師への見せ方なのだが、目々澤先生はプリントアウトして持って行くことをお勧めすると言う。

もちろん、メールアドレスを公開してる先生や、目々澤先生のようにAirDropでの受け取りをOKとしている方もいらっしゃる。そのように、独自にセキュリティを担保し、病院のシステムとは別にデータを受け入れる体制を取っていらっしゃる医師は少ないとのこと。

多くの病院では、非常に大切な患者の個人情報を大量に預かっているので、セキュリティ管理が非常に厳しく、USBメモリなどでデータを受け取ることができないのだそうだ。

たしかに一理あって、USBメモリを受け取れないという話もわかる。もし、そのUSBメモリにウィルスが入っていて、病院のコンピュータが感染したら、とんでもないことになるからだ。

プリントアウトであれば、病院でスキャンして取り込めばいい。

我々テック好きとしては、『紙』ではなく、オンラインで連携してくれれば……と思うのだが、昨今のランサムウェアなどで生じる深刻な被害を考えると、病院が神経質になるのはよくわかる。

現在のところは仕方がない。しかし、将来的に安全に共有できるようになればなぁ……とは思う。