【対談連載】和泉流狂言師 石井康太(上)

●稽古用の足袋と野村万蔵家の浴衣



 石井さんが大切にしている足袋と浴衣。舞台に足を踏み入れるときは、誰もが必ず足袋に履き替えなければならない。そして、石井さんが初めて仕立てた野村万蔵家の萬の文字を略した紋が入った浴衣は、プロ狂言師になられた証しのように思える。ステッカーとクリアファイルのイラストは、漫画家の東村アキコさんによるもの。かわいい絵柄で狂言の世界にいざなう。

心にく人生の匠たち

 「千人回峰」というタイトルは、比叡山の峰々を千日かけて駆け巡り、悟りを開く天台宗の荒行「千日回峰」から拝借したものです。千人の方々とお会いして、その哲学・行動の深淵に触れたいと願い、この連載を続けています。

 「人ありて我あり」は、私の座右の銘です。人は夢と希望がある限り、前に進むことができると考えています。中学生の頃から私を捕らえて放さないテーマ「人とはなんぞや」を掲げながら「千人回峰」に臨み、千通りの「人とはなんぞや」がみえたとき、「人ありて我あり」の「人」が私のなかでさらに昇華されるのではないか、と考えています。

奥田喜久男(週刊BCN 創刊編集長)

※編注:文中に登場する企業名は敬称を省略しました。