非公認議員の選定基準は「選挙に勝てるか」
こうした疑惑を抱えている石破首相であるが、自民党総裁としては、これまで発覚した裏金問題に対して厳しい対応を取るとして、収支報告書に不記載のあった裏金議員12人を非公認にすることや、裏金議員全員に比例代表への重複立候補を認めないことを決定した。
石破首相は、党員資格停止や党の役職停止1年間という重い処分を受けた議員のほか、説明責任を果たしているか、地元の理解が得られているかという基準によって非公認となる議員を選んだとしている。
しかし、「その内実は大きく異なる」と自民党関係者は語る。
「実際に非公認議員が選定される中で重視されたのは選挙で勝てるか否かだ。特に、『地元の理解』などという曖昧な基準で9日に追加の非公認が決まった議員6人は、いずれも選挙区での当選が厳しいとみられている。公認候補者の落選を抑えて党の体裁を整えるために裏金問題が利用されたようなものだ」
このような決定に対しては、裏金問題の大きな舞台となった旧安倍派の保守系議員から反発が相次いでいる。その中には、石破首相の顔がデカデカと掲げられた新しいポスターについて「こんなものは貼らない」と吐き捨てるように話す議員も出ている。
衆院選は目と鼻の先に迫っているが、自民党内の分断はますます加速し、党を挙げて選挙に臨んでいく状況からは程遠いと言えるだろう。
自身の元側近たちの裏金疑惑が広がりを見せる一方で、これまでの裏金問題に対しては非公認や比例重複禁止とすることで国民からの理解を得ようとしている石破首相。
しかし、その結果、石破首相が支持を集めてきた中間層から見放され、自民党が岩盤としてきた保守層からの離反も相次いでいる。
幅広く支持を集めるどころか、首相になってからの失望感がますます大きくなる中で迎える解散総選挙は、いったいどのような結果になってしまうのか。自民党に対してかつてないほどの逆風が吹く中、国民の審判は刻一刻と迫っている。
取材・文/宮原健太
集英社オンライン編集部ニュース班