2022-2023シーズンから2年間、日産のドライバーとしてフォーミュラEに参戦したサッシャ・フェネストラズ。特に2年目はチームメイトのオリバー・ローランドが活躍する一方で苦しいシーズンを送ったが、その要因について本人が考察した。
フェネストラズはスーパーGT、スーパーフォーミュラといった日本のレースシリーズで実績を残した後、日産フォーミュラEチームと契約。世界選手権への参戦を果たした。1年目となった2022-2023シーズンはポールポジション1回、最高位4位(2回)という成績でランキング16位だった。
そして迎えた2年目のシーズンは、チームメイトにフォーミュラEでの経験豊富なローランドを迎えた。3年ぶりの古巣復帰となったローランドはコンスタントに表彰台に登ってタイトル争いを繰り広げ、ポートランド大会の欠場などもありながら最終的にはランキング4位となった。
対照的だったのがフェネストラズ。シーズン前半戦は何度か入賞も記録したが、後半は7戦連続無得点でシーズン終了(最高位は5位)。ランキングは17位と前年よりも下がってしまった。フェネストラズ曰く、シーズン終了直後は来季も残留できると聞いていたというが、チームは急転直下でノーマン・ナトーの起用を決定。フェネストラズは放出される格好となった。
シーズンを振り返り、2年目に苦戦した理由は理解できているかとmotorsport.comに尋ねられたフェネストラズは、色々な要因が絡んでいるだろうとしつつ、目標を高く設定し過ぎたことが一因にあるかもしれないと答えた。
「具体的に何(が原因)だったか分かるなら、その場で何か変えていただろうね。とにかく色々なことが重なった結果だと思う」
「僕はシーズンに向けてかなり高い目標を掲げた。チームのドライバーの中でリーダー的存在になるとか、2年目でチャンピオン争いをするとか、ちょっと現実的ではなかった。目標が高過ぎたことが、状況を複雑にしてしまった」
「開幕のメキシコはチームメイトと大差なかったけど、その後(ディルイーヤ)は僕の方に不運があって、オリバーが表彰台に乗った。そしてサンパウロでは、彼が最終コーナーで2台を抜いて3位になった。それも彼がうまくポジショニングしていたからこそ、運を味方につけたんだけどね」
「僕はそのあたりから無理をするようになっていき、それが物事を複雑にした。証明する必要のないことを証明しようとして、ミスをするようになった」
「東京でのレースも、予選で簡単にデュエルに進めたし、ワンツーにもなれたと思うけど、僕のミスで壁にタッチしてしまい、デュエルにすら進めなかった。(日産にとって)最初のホームレースであれは大きなミスだった」
「モータースポーツは難しいんだ。特には今シーズンの僕のようにうまくいかない時もある。でも唯一ポジティブだったのは多くを学べたこと。1年目より勉強になったんじゃないかな」
少し歯車が噛み合わなくなったことが自信の喪失などにも繋がり、悪循環になっていったと振り返るフェネストラズ。ローランドの好調もその悪循環に拍車をかけたのかと尋ねられると、フェネストラズはローランドがF1ワールドチャンピオンのマックス・フェルスタッペンにも匹敵する実力を持っているとして、それを十分認識できていない時に目標を高く設定していた節があったと語った。
ローランドはF1に参戦した経験こそないが、シングルシーターではジュニアカテゴリー時代から数々の実績を残してきており、フォーミュラ・ルノー2.0ではランキング2位、フォーミュラ・ルノー3.5ではチャンピオン、そしてFIA F2ではランキング3位を獲得している。
「シーズンが始まった時は『チームリーダーになりたい、彼を倒したい』と思っていたからね」とフェネストラズは言う。
「でもそれは現実的ではなかった。ローランドはフォーミュラEで7年目で、僕は2年目。フォーミュラEの上位にいるドライバーは何年も参戦しているドライバーばかりで、経験があって僕より年上の人ばかりだ。表彰台でも、自分の子供を連れてくる人が多いくらいだからね」
「僕は24歳で、彼のようなドライバーと同じくらい経験があるわけではない。それにオリバーは、好調時はフェルスタッペンにも匹敵する。ふたりは仲が良いし、フェルスタッペンは今年『もしオリバーがF1にいたら彼の影に隠れていただろうし、彼がF1にいないのは惜しいことだ』と言っていた。業界の中にいる人はそのポテンシャルを知っているんだ」
「僕はそれを知らずに、目標を高く設定してしまった。でも、彼は経験豊富で速い……それを受け入れて、彼を倒すことに躍起にならなくなったら、4戦連続で入賞したり成績は上向いたんだ」
「でも、そこからまた失速したりした。全体的には複雑なシーズンだったね」