飲食代金を立て替えた「売掛金」の回収のため、ホストやメンズ地下アイドル(メン地下)の当事者、関係者が客の女性を威圧的に脅したうえで消費者金融にお金を借りさせたり、売春を強要して逮捕されるという事件が相次いでいる。なぜそもそもお金に余裕がない少女たちがそれらにハマってしまうのか?
書籍『イマジナリー・ネガティブ』より一部を抜粋・再構成し、被害に遭ってしまうロジックを解説する。
ホストやメン地下にハマる少女たち
最近、ホストクラブのホストや経営者、ライブハウスを中心に活動をおこなう男性アイドル「メンズ地下アイドル(メン地下)」やその運営関係者が逮捕されるという事件が、相次いで報道されています。
たとえば、ホストクラブのホストが、飲食代金を立て替えた「売掛金」の回収のため、客の女性を威圧的に脅したうえで消費者金融に借り入れを申しこませたとして逮捕された事件や、女子高校生に酒を提供したとしてホストクラブ経営者が逮捕された事件、ライブハウスなどで活動しているメン地下の写真撮影会で男性アイドルに女子高校生の胸をさわらせたとして、芸能事務所の社長と役員が逮捕された事件などがあります。
これらの事件で注目されたのは、数10万から数100万という多額の料金と、お客である女性たちが10〜20代と低年齢であることでした。
先の事件で、ホストクラブで飲酒した女子高生は、同店で働いていた20代のホストに「ナンバーワンになるために毎日来てほしい」と言われホストクラブに通うようになったそうです。クラブ側が実施する年齢確認の際は、ホストから渡されたニセの身分証を使っていたとのことで、女子高校生がクラブで使った約170万円は、ホストの指示により路上売春で稼いでいたというのです。
2023年の1月には、警視庁少年育成課が「メン地下」への過剰な推し活について、Twitter(現X)で注意を呼びかけています。警視庁少年育成課によると、メン地下はメジャーなアイドルに比べ、物理的に非常に距離が近いことから、精神的に未熟な年代が夢中になりやすいといいます。
ライブ会場におけるチェキの撮影会では、その購入金額に応じたポイントが付与され、たまったポイント数に応じた特典を受けることができる仕組みがあります。なかには、10万〜100万円以上の現金をつぎこまなければ得られない特典もあるのです。
警視庁には、2020年頃からメン地下に関する相談が寄せられるようになり、2022年中には相談件数が前年の約3倍に急増しました。年齢は10代後半が多いそうです。また、警視庁が検挙した違法な性風俗店で働いていた女子高校生のなかには、メン地下の応援のために働いているという少女が複数いたということです。
なぜ、少女たちはホストやメン地下にハマってしまうのでしょうか。
少女たちがメン地下に夢中になる理由について、警視庁少年育成課は「相手は、優しく話を聞いてくれる、褒めてくれる。児童の寂しさを埋め、自己肯定感を高めてくれることが一因として挙げられます。保護者は平素から子どもとコミュニケーションを図り、何でも相談に乗れる関係性を構築することが大切だと考えます」と分析しています。
これはホストに夢中になる理由としても同じことでしょう。
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ホストと霊感商法は同じロジック
一昔前でしたら、ホストにハマるのはお金に余裕のある年配女性というイメージでした。お客とホストという関係に擬似恋愛をプロジェクションすることも、おたがいに十分承知していることが前提だったことでしょう。
ところが、まだ恋愛経験が少なく人間関係も狭いような若い人であれば、恋愛を装って積極的に働きかけてくるホストやメン地下に対して本当に恋愛感情を抱いてしまうのも無理のないことです。
一般的なアイドルなどとは異なり、直接会うこともできれば話すこともでき、お金をだせば少しの時間でもその人を独占できるとなれば、なんとかしてそうしたいと思うことでしょう。
プロジェクションの視点から見ると、ホストやメン地下へのいれこみは、お客とホスト/ファンとアイドルという関係に擬似恋愛を異投射しているといえます。
これは、霊感商法とも共通した構図であると考えられます。対象に投射される表象が、呪いからの解放か恋愛関係かといった違いはありますが、プロジェクションの働きを利用することによって継続的に大金を搾取されるという点では同じです。
霊感商法と同様に、ホストやメン地下の搾取対象となる女性は、彼女たちがそういうプロジェクションをするように、ホストやメン地下が、そして彼らを雇っている経営者や運営側が、うまく操っているのです。