「どうしてパスを出してくれなかったんだ」主将からの苦言に久保建英は「出したほうが良かったとも言えるし…」 ソシエダ番記者は“ポジティブ思考”を評価【現地発】

 世の中には、どんな状況でもいつもポジティブさを失わない人間がいる。

 レアル・ソシエダ史上に残る最悪の暗黒期だった2007-2008シーズンから3年間、2部に沈んだ時もそうだった。資金難が原因で満足にチームを補強、編成できず、なかなか白星を積み重ねることができない中でも、「ソシエダが連勝して、昇格圏にいるチームが連敗すれば、まだ望みはある」といった前向きな発言をする者は必ずいた。

 その意味では、ここ数週間のソシエダの試合内容は、プラスの方向にもマイナスの方向にも捉えることができる。ポジティブ思考の持ち主なら、セカンドチームで臨んだアンデルレヒト戦での敗北を除けば、ここ数週間の巻き返しを評価するだろう。

 実際、ここにきて明るい材料が増えてきた。守備面では、アマリ・トラオレとルビン・ル・ノルマンの穴を埋めるホン・アランブルとナイフ・アゲルドの働きが追い風となって、9節終了時点で失点はリーグ最少4位タイの8にとどまっている。
【動画】久保がキレキレのドリブルから強烈なシュート
 攻撃面ではセルヒオ・ゴメスが期待を上回る活躍を見せ、ルカ・スチッチがシルクのような左足を披露し、そして何よりもタケ・クボ(久保建英)が復調を遂げている。1-1の引き分けに終わったラ・リーガ第9節のアトレティコ・マドリー戦も、当のタケが「最後の場面で得点を決めていたら、僕にとって今シーズン最高の試合の1つになっていただろう」と振り返ったように、強豪をあと一歩のところまで追い詰めた。

一方、ネガティブ志向の持ち主はホームにおいて直近17試合で4勝しかしていないチームに希望はないと片付けるだろう。

そんななか、タケは発言もあくまで前向きだ。「ピッチ上だと、僕たちは良いプレーをしている、相手を抑えているという感覚を持っている。でも、結果を見てみると、今日は引き分けに終わり、先日のアンデルレヒト戦は1-2だった。手応えと結果の間にはギャップがあって、それを少しずつ埋めていかなければならない。今日の試合内容から見れば、僕は上に行けると確信している」

アトレティコ戦は最悪の立ち上がりだった。開始早々に最もビハインドを背負うと厄介なチームに先制を許し、ソシエダはリスクを冒してでも攻めに行かざるを得ない展開となった。

 その中で、タケは反撃の糸口をつかもうと奮闘した。しかし相手チームの激しいマークも、審判団のファ―ルまがいのプレーに寛容なジャッジもいつもと同じだった。33分と39分に立て続けにドリブルで切り崩してクロスを送り込むも、いずれも質が不十分で、相手DFがヘディングでクリア。41分には、2度の切り返しから自ら左足でシュートを放ったが、相手GKヤン・オブラクにセーブされた。

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 後半開始直後、深い切り返しからの今度は右足でのシュートは枠を大きく外れた。前述した、タケが「最後の場面で」と言及したチャンスが生まれたのは、スチッチの鮮やかな放物線を描いた左足弾がゴールネットを揺らし、同点に追いついた後のアディショナルタイムだった。

 自陣右サイドでボールを受けると、一気に加速してゴール前までボールを運ぶと、そのまま左足を一閃。しかし渾身のシュートは惜しくもクロスバーの上へと外れた。
 
 タケは試合後、主将のミケル・オジャルサバルから「フリーだったのに、どうしてパスを出してくれなかったんだ」と言われたことを明かした。しかし、セルヒオ・ゴメスと笑いながら該当シーンを映像で確認している間、パスコースが塞がれていたことが分かると、「パスを出したほうが良かったとも言えるし、そうでもないとも言える」と述べた。

タケの活躍がさらに本格化し、もっと頻繁にネットを揺らすようになったら、ソシエダは波に乗り、白星を積み重ね始めるに違いない。サッカーチームにも、ポジティブな思考の持ち主が必要なのだ。

取材・文●ミケル・レカルデ(ノティシアス・デ・ギプスコア)
翻訳●下村正幸

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