使用感
マミヤZDを「大きく重い」と感じる人もいると思うが、それは小さなフォーマットと比べてのもの。中判デジタルバックのシステムと比べた場合は、随分とコンパクトで軽量なカメラ(本体1.3kg)と言えるだろう。
持ちやすさという点では、本体の太さに対してグリップが浅いため、いつも滑り落ちそうな感覚がある(指かかり自体は良好)。1kgほど重いはずのマミヤ645DF+とデジタルバックの方が、手への負担が少ないように感じていたが、筆者の場合はハンドグリップを着用することで一気に快適に使えるようになった。
AFは遅いながらも実用上問題ないスピードで動いてくれた。しかし、他のマミヤ機と同じように後ピン傾向があるようである。
軽さゆえか、重量バランスの問題なのか、ファインダーをのぞいていてカメラがやたら揺れているのが分かる。実写を見ても、普段使っている645DF+よりも明らかに手ブレしやすい。とはいえ他社の中判機のような強烈なミラーショックに起因するものではなく、あくまで手ブレ。慣れてしまえば1/100辺りは安心して常用できると感じた。
欠点としては、とにかく撮影後のプレビューが遅いこと。あまりの遅さがこのカメラの軽快さを損なっている。時代背景を考えると仕方のない部分ではあるが、最初の1枚を撮って背面液晶に表示されるまで3~4秒。2枚目以降では待たされるようになり、実用上10秒ほどかかるのがザラだ。撮った写真をチェックしようと再生(DISPLAY)ボタンを押しても、1枚送るごとに5秒ほどかかるため、確認を諦めてしまう。
多くの中判ユーザー同様、マニュアルで露出を決定する筆者にとって、1枚撮ったら確認して微調整、といういつもの流れが通用しないのはかなりつらい(もちろん業務用デジタルバックでは問題なく撮影できる)。自然光のもと仕事のテンポで人物撮影を行うのは苦行に近いが、このレスポンスを受け入れた上で、風景やスナップ撮影を楽しむのは、旧車を愛でるような大人の楽しみと言えるのかもしれない。
記録メディアは、CFカードとSDカード。CFカードは16GBで動作を確認。SDHCには非対応なのでSDカードは2GBまでのものを使用する必要がある。双方ともカードとの相性があるようで、筆者もここで苦しめられた。他はしっかりした造りなのだが、カードスロットのフタだけは価格不相応に安っぽいと思う。
(広告の後にも続きます)
画質について
中判デジタルの世界では、古い機種であってもピークの画質が現行機を上回ることが往々にしてある。もちろん世代が新しくなれば平均点は上がっていくし、トラブルも少ないが、理屈を超えてくることもあるのだ。
同じセンサーを搭載したLeaf Aptus22は、筆者が初めて購入したデジタルバックだったのだが、やはりZDもよく似ている。ローパスフィルターを装着しなければ、同等のシャープな写りを体験できる。
画づくりに関してはマミヤ独自のもので、Leafとはまったく違う。撮ったままの状態では全体的に赤茶系に寄った、渋い発色をするようだ。発売当時はこういった発色をするデジカメが多かったような気もする。
また16bit記録のデジタルバックのように、RAW現像で自由自在にコントロールできる感覚はなく、例えばLeafで感じていたドキッとするような深みのある発色は苦手だ。12bit記録の宿命で、トーンカーブで調整するとすぐに色が抜けてしまい、どういじっても渋い印象が抜けない部分がある。
ちなみに、マミヤZDのRAWデータ(MEF)は、Capture Oneで問題なく現像することができる。JPEGを同時記録したものと比べてもほぼ同じ傾向だったので、メーカーの画づくりがプロファイルに反映されているのだろう。
ミラーレス・ネイティブ世代の方は驚くかもしれないが、中判CCDのポテンシャルを発揮できるのは、最低感度の2倍までというのが通例である。マミヤZDの場合はISO50~ISO100。それを超えると解像感やレタッチ耐性が失われていく。基本的には低感度の画質が売りなのだ。
これはフィルムの代替として考えると自然なことではあるし、最高感度のISO400が使えないわけでは決してない。RAW現像時の耐性は落ちるものの、良い光の下で適切な露出であれば鑑賞に耐えうる。カラーネガをスキャンした時に似ていなくもない描写である。